「クマノミを守れ!」 ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄と沖縄科学技術大学院大学のチャレンジ【後編】
「ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄」(以下、同ホテル)は、沖縄本島の恩納村瀬良垣島全体がリゾートとなっているビーチリゾート。コンセプトは「元気になるホテル」で、「ヒトを元気に!地球を元気に!」と、SDGs達成に向けたさまざまな取り組みをおこなっています。現在は地域の方々と協働し、カクレクマノミやサンゴを守る取り組みを実施。沖縄の豊かな海を守るためのチャレンジをご紹介します【後編】。
数世代にわたって育てたクマノミを海に還す
2018年にオープンした同ホテルは、SDGs未来都市に選ばれている恩納村に位置し、2021年3月には「おきなわSDGsパートナー」にも登録された。地産地消やフードロス削減、プラスチックストローやペットボトルを不使用とするなど、さまざまな取り組みを進めている。シュノーケリングやダイビング体験などを通じて、海の豊かさを守る重要性を学ぶプログラムも実施中だ。
同ホテルは沖縄海岸国定公園区域内のアイランドリゾート。周辺の青く美しい海では、豊かな珊瑚礁で暮らすさまざまな海洋生物と出会える
そのひとつが、世界レベルの研究教育機関である沖縄科学技術大学院大学(以下、OIST)の監修でおこなわれている「瀬良垣島・クマノミ養成プロジェクト」だ。同ホテル近くにある「OIST マリン・サイエンス・ステーション」には9つの研究ユニットがあり、海洋気候変動ユニットもそのひとつ。気候変動や熱波、乱獲、都市化などの環境の変化に対し、珊瑚礁の生きものたちがどのように適応しているかを研究している。
珊瑚礁がある海はもともと水温が高く、地球温暖化や海洋酸性化の影響を受けやすい。そこで暮らす生きものたちを調べることは、気候変動が生態系や世界経済に与える影響を予測するうえで、とても重要だという。
2011年に設立されたOIST。世界中からトップクラスの科学者が集まり、幅広いテーマで研究がおこなわれている。海洋気候変動ユニットには現在、10ヵ国から集まった14人のメンバーが所属(写真提供:OIST)
カクレクマノミをはじめとするクマノミは、ディズニー映画『ファインディング・ニモ』の主役になったキュートな熱帯魚。以来、世界中で人気が出たことで乱獲され、個体数が減少しているという。沖縄本島では、岸に近い礁地に生息するクマノミの数が周辺の島々に比べて少ないという研究結果も出ているそうだ。
OISTの海洋気候変動ユニットでは複数の魚種を研究し、地元で採取された野生のペアから生まれた魚たちを、研究室内の水槽で数世代にわたって飼育。こうして育てられたカクレクマノミの幼魚20匹(10ペア)を沖縄の海に放流し、自然界で繁殖し、自立した個体群になれるようサポートしている。
世界には28種類のクマノミが生息し、沖縄の海に暮らしているのはそのうち6種類。白いラインが1本のものが「ハマクマノミ」、2本なら「クマノミ」、写真のように3本ある種は「カクレクマノミ」と呼ばれる。カクレクマノミたちは毒のあるイソギンチャクに住み、敵から身を守る(写真提供:OIST)
海洋気候変動ユニットを率いるのは、イタリア人科学者のティム・ラバシ教授だ。
「クマノミは、美しい珊瑚礁の生態系に非常に大きな役割を果たすだけでなく、沖縄にとって重要な観光資源でもあります。このプロジェクトによって、健全で豊富なクマノミのコミュニティを確保できれば、生態系の保全と沖縄観光の両方を支援できると考えています」(ラバシ教授)
恩納村の珊瑚養殖所で植えつけ用の苗をつくる
同ホテルでは、こうして海に還されたカクレクマノミたちが生息する一帯でのシュノーケリング、ダイビング体験や、SDGs17の目標のひとつ「海の豊かさを守ろう」を学ぶレクチャーを受けられるプログラムを用意。その収益の一部は瀬良垣島・クマノミ養成プロジェクトに充てられる。
さらに同ホテルは、珊瑚の養殖について学び、植えつけ体験ができる冬季限定のプログラムも備えている。恩納村内の珊瑚養殖所でレクチャーを受け、植えつけ用の珊瑚苗をつくるものだ。沖縄の海で、自分がつくった苗が育っていくなんて、なんとも夢のある話ではないか。
赤土の流出や海水温の上昇、オニヒトデによる食害などにより珊瑚は大きなダメージを受けている。恩納村漁業協同組合では、その保全のため、養殖や植えつけ活動を続けている
さらに2月1日〜3月31日は、恩納村のイチゴ農園に電動自転車で訪れる「いちご食べ放題サイクリングツアー」を開催、地元の生産者と交流しながら沖縄の「食」や「農」を体感できる。このほか、プールサイドでのテントサウナ体験など、冬の同ホテルには楽しみと学びがいっぱい。ぜひ、オフシーズンの沖縄にも訪れてみて!
photo&text:萩原はるな