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岩石ゴロゴロ! 神話の舞台、高千穂峰で開運登山
岩石ゴロゴロ! 神話の舞台、高千穂峰で開運登山
NATURE

岩石ゴロゴロ! 神話の舞台、高千穂峰で開運登山

宮崎県と鹿児島県の県境に位置する大小20以上の山々からなる霧島山(霧島連峰)。カルデラや火山湖が織りなす壮大な景観をはじめ多様性あふれる豊かな自然を楽しめることから、ジオパークに指定されています。今回は、霧島山のひとつ、名峰「高千穂」登山をレポートします。

多彩な表情と躍動する大自然を体感できる火山帯、霧島山

早朝の飛行機で羽田から鹿児島へ。着陸前の機窓から、霧の奥に立ち並ぶ霧島山の堂々たる姿が見えた。これらの山を登ると思うと、機上にいながらもワクワクする。霧島山は日本を代表する火山帯。1934年に日本初の国立公園に指定された、雄大な自然と歴史文化の魅力にあふれるところだ。北西部には寄生火山である硫黄山、南には新燃岳があり、2000年代に入っても活発な活動が見られ、多彩な表情と躍動する大自然を体感できる。霧島山の登山道規制状況は、霧島市のホームページで確認。最新の火山情報や上空の風向きなどの情報は、登山前に必ず仕入れておきたい。

霧島神宮は、もともとは高千穂峰にあったが、霧島山の噴火により500年ほど前に現在地に移されたそうだ。高千穂峰は宮崎県の高千穂峡と並んで「天孫降臨の地」として知られ、神話が残る美しい山容をもつ霊峰だ。古くから信仰の対象として地域の人々に親しまれている。坂本龍馬が妻・おりょうと新婚旅行でこの山を登ったことは、いまでも語り継がれている。

登山口の高千穂河原(たかちほがわら)には、駐車場や2022年にリニューアルされたばかりのビジターセンターがあり、霧島山周辺のより深い知識を得られる。その先に霧島神宮の古宮跡があり、登山はここからスタート。登山の無事をお参りして、いざ鳥居の向こうに見える山へ!

石畳の参道を15分ほど歩くと高千穂峰が姿を現す。山頂までは一本道だ。行程も長くないため初心者向きの登山ルートという触れ込みだったが、想像していたより斜度が大きく、ザレ場(小石や砂を敷いたような場所)が多いことに動揺する。が、後戻りはできない、気合を入れて前進するのみ! ザレ場をぐんぐん進みながら、高度を上げていく。

歩いて知る火山活動の痕跡

火山らしい、草木のほとんど生えていない荒涼とした赤いザレ場はとても歩きにくく、3歩進んでは2歩戻るように足を取られてしまう。安定して動かない石に足をかけて登っていくが、ときおり足を滑らせてしまう。そのたびに気持ちが萎えかけるが、年配の登山者も多く、その姿を見、声をかけられると少し元気が湧いてくる。見知らぬ人と気軽に会話ができるのも、登山の大きな魅力だ。

ゴロゴロしている岩石の多くは「スコリア」と呼ばれる多孔質の黒い火山噴出物。噴火するときにマグマ中のガスが発泡してできた無数の穴があり、非常に軽い。ちなみに同じ噴出物でも色が白っぽいものは「軽石」と呼ばれる。色の違いは,マグマの化学成分の違いでシリカ(二酸化ケイ素)成分が多いほど白く、少ないほど黒くなる。火山帯特有の景観を楽しめる高千穂峰登りの醍醐味は、少し足を止めて、足元の石を見て楽しむことにもある。

ザレ場を上りきると、唐突に巨大な火口が現れる。直径約600m、深さ約200m。展望が一気に開け、霧島山の連峰や桜島などを見渡せる。そのダイナミックな火口と景色の感動は、先ほどのザレ場での恐怖も忘れるほど。標高1420mにある御鉢からは、山肌が崩れて剥き出しになった地層を間近に見られる。地層好きにはたまらない光景だ。

御鉢から、幅の狭い馬の背(尾根)を進んでいくと、奥にもうひとつ山が見える。そこが高千穂峰山頂。まだ、第一関門クリアといったところだった。「また歩くのか……」とひるみそうになるが気合を入れ直して、山頂まで最後のひと登り!

馬の背を歩いていったん鞍部へと下り、最初に霧島神宮が置かれた元宮の鳥居をくぐってラストスパート。案内板には「山頂まで220m」と記されている。次の案内板には「180m」。その間、けっこう歩いたように思ったが40mしか進んでいなかった! 木製階段が整備されているが、急勾配のうえ火山礫と火山灰が積もっていて滑りやすく、登りにくい。その後も「130m」「100m」と、案内板の数字が減っていくことに励まされながら頂上を目指す。

登山開始から約2時間。標高1574mの高千穂峰に登頂。神話によれば、この峰は、天照大御神(アマテラスオオミカミ)の命を受けた孫の瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が、天皇の位をしめす「三種の神器」を持って天からおりたった地とされている。その瓊瓊杵尊をまつる社として建てられたのが霧島神宮の始まり。高千穂峰の山頂からの眺望は素晴らしく、韓国岳や新燃岳など霧島山の絶景を一望する。

山頂にある刺さっている槍は、坂本龍馬が引っこ抜いたという伝説がある「天逆鉾(あまのさかほこ)」。もちろん登山者は山頂の結界より中に入って、槍に触れることはできない。拝んだり、写真に収めることだけ可能だ。山頂の眺望を満喫しておにぎりを食べ、来た道を下山することに。

登山口あたりまで下りた雑木林で鹿の親子に出合った。2頭がすぐ近くで、こちらを警戒してじっと見つめている。まるでどちらが先に動くか、根くらべをしているみたいだった。

日本アルプスのように3000m級の山々が連続する山脈とは異なり、新旧大小の火山が集まる変化に富んだ雄大な景色。霧島山の各火山の植生は、噴火の影響を最後に受けてから経過した時間がそれぞれ異なるため、さまざまな植生遷移の段階を見せてくれる。次回はぜひ、坂本龍馬や植物学者の牧野富太郎を魅了したヤマツツジ「ミヤマキリシマ」が咲く初夏に訪れたい。

photo&text:鈴木博美

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