ハワイ・マウイ島の聖地「ハレアカラ山」で、火口をトレッキングの大冒険
ハワイといえば、青い海と椰子の生い茂るビーチを思い浮かべる人が多いでしょう。けれどもハワイの美しい島々には、それだけでない魅力が詰まっています。マウイ島の世界最大級の休火山「ハレアカラ」は、その雄大な自然が生み出す神秘的な風景で訪れる人々を魅了しています。クレーター内部のトレイルを歩いて、ハワイの自然の驚異と多様性を体感。ビーチリゾートとは一線を画す、ハワイの知られざる魅力をレポートします。
『2001年宇宙の旅』の世界が広がる
マウイ島のカフルイ空港から、ハレアカラ国立公園までレンタカーで約1時間。国立公園内に食料は売っていないので、空港周辺のスーパーマーケットでドリンクとスパムむすびを調達する。標高3000mと高所でのトレッキングに臨むため、こまめな水分補給は必要不可欠。飲み物は多めに持って行く。
ハレアカラ国立公園のゲートに設置された自動券売機で、入場チケットを購入。車1台あたり30ドル、クレジットカードでのみ支払可能だが、ここで問題が発生。持っていたクレジットカードは、2枚とも券売機に差し込んでも反応しない。券売機を前で困り果てていると、通りがかった1台の車から男性が降りてきて、自身のクレジットカードで精算してくれた。思いがけない親切に、ただただ感謝を述べ30ドルを現金で渡し、無事チケットを入手できた。
山頂に続くハレアカラハイウェイは、まさに天界への道のりを思わせる絶景のドライブコース。マウイ島の大自然を楽しみながら、車は徐々に標高を上げていく。しばしば雲の中を通り抜けながらさらに進むと、やがて雲の上に出て、目の前には壮大な雲海が広がっていた。
ハレアカラ山は、古来、自然の精霊や神々が宿る場所と信じられてきた。山やその周辺の生態系は神聖なものと見なされ、精霊の存在や神話などがいまに伝わる。深い歴史と精神的な意味を持つ場所として、現在も尊重されているのだ。
岩の間に生息する高山植物シルバーソード
ハレアカラには「太陽の家」という意味があり、標高3055mの山頂からは、その名にふさわしい美しい日の出と日没が楽しめる。周囲は国立公園として管理され、初心者から上級者まで楽しめるさまざまなハイキングコースがある。さっそく山頂付近のビジターセンターに駐車して、トレッキングスタート。周辺にはシルバーソード(銀剣草)というヒマラヤとマウイ島のハレアカラ、ハワイ島のマウナケア山頂周辺でしか見られない珍しい植物が生い茂っている。
ハレアカラ国立公園のスライディング・サンズ・トレイルは、標高3000mの山頂付近から別世界の景色が広がる火口底へと下っていく魅力的かつ挑戦的なコース。クレーターの底まで約6.3㎞あるこのトレイルを、時間が許す限り下っていく。一面赤砂の大地に、わずかな植物が生息するクレーター内部は、まるで異世界! このクレーターでロケをした映画『2001年宇宙の旅』の世界が広がっている。火星のような赤茶けた風景が広がる独特の地形を歩き進む。
スライディング・サンズ(滑る砂)という名前の通り、火山灰や砂で覆われた道は滑りやすいものの、景色は圧倒的。クレーターの内部へと進んでいくと、火山地帯特有の赤やオレンジ、緑の土壌、珍しい植物、そして広大なクレーターの荒涼とした風景が広がり、地球ではないかのような異世界感だ。
下りは砂のおかげで、前へ前へと足がスムーズに進んだが、帰りの上り坂は足が後ろへ滑ってしまい進みにくい。標高が高いため、息切れなど高山病の症状に注意してゆっくり戻る。
風の音が唯一の伴奏となり、広大なハレアカラのクレーター内を吹き抜けていく。ハレアカラ山では、ビーチリゾートとは異なる、自然の脅威が感じられる冒険が待っている。訪れる際には、突然の雨や強風など、気温の低下に対応できる服装で出かけよう。水、食料、日焼け止め、雨具は必須アイテムだ。
海から見たハレアカラ山
昨年8月にマウイ島西部で発生した山火事を乗り越え、島は復興への歩みを進めている。一部では住宅再建も始まり、観光業も回復の道を歩んでいる。マウイ島は自然の素晴らしさを守りながら、環境に優しい取り組みを取り入れ、訪れる人々に自然との深いつながりを感じさせる、持続可能な体験を提供し続けている。
text&photo:鈴木博美
【こんな記事も読まれています】
世界遺産・熊野古道「千年の道を歩いて感じる永遠の旅」【前編】
神々とイルカが棲むパワースポット「壱岐島」でワーケーションをしてみたら【前編】
鳥取の名峰・大山を望みつつブルーベリー、超ロングソーセージを堪能!「フェアフィールド・バイ・マリオット・岡山蒜山高原」は、こんなに楽しい