コロナ禍以降に急増!「二拠点生活」「移住」のいいとこ、こわいとこ
自分にとって理想の仕事スタイルとは、どんな働きかたでしょうか。これまで働き方を変えるには仕事を変えることが主流でしたが、いまは選択肢が増えました。時間や場所にとらわれないリモートワーク、海や山、自然に囲まれた場所でのワーケーション、複数の仕事を同時に持って知見を広め、やりがいにつなげる「複業」、生活様式の多様化に合わせて暮らしから変える二拠点生活や移住など、働きかたは十人十色。自分らしく働けるスタイルを創造してみてください。
働き方や生活様式が多様化するにつれて、都市と地方での二拠点生活や、都市部を離れる移住も身近に。暮らしを変える、よりよい方法は? 今回は、スカラパートナーズ企画担当の山根好子さんに伺いました。
Q1.注目されたきっかけは?
ワークからライフ重視へ
移住という言葉をよく耳にするようになったのは2015年以降のこと。東京一極集中を是正するため、政府が移住支援に力を入れ始めたことがきっかけでした。テレワークや在宅ワークの制度が整った企業も多くなり、多拠点生活や移住はより身近なものになっています。2019年度には、東京圏在住者向けの移住や起業の支援金制度もでき、やってみたいと思う人はさらに増えました。
都市部に人口が集中する一方で、このままでは20年後に消滅してしまう町があることも論じられている現在。東京でバリバリ働くことがカッコいいという価値観が変化するとともに、働き方改革やワークライフバランスという言葉が浸透し、ワークよりライフを重視したいと考える人にとって、最良の選択肢となっています。
Q2.どんなスタイルがある?
行き先も自由なスタイルで
コロナ以前は働く場所を選ばないフリーランスの方などが都市部から移住するケースが主でしたが、テレワークが進んだいまは、会社員で地方に拠点をつくる方も増えています。都市部に仕事場がある場合は、そこから2時間以内で行けるエリアに拠点を設ける場合がほとんど。
ウィークデーは東京で働き、金曜夜から土曜、日曜日は移住している家族の元に帰ったり、そこから段階的に移住を考えたり。仕事は変わらない人もいますが、移住して農業を営む、カフェを始めるなどする人も増えました。
最近では、地方と地方での二地域居住や、仕事でよく行くエリア、実家が近いエリア、別荘として好きなエリアと、3拠点以上をつかい分けるスタイルもあり、パターンはひとつではありません。
Q3.メリットとデメリットは?
理想を叶えるための準備は入念に
自分の生活を充実させたり、長年やりたかったことを叶えたり、どうありたいかを考えた生活がしやすいのが、地方に拠点を持つメリットです。脱サラしてお店を開く、農業を始めるなど、都市部では難しかった働き方を楽めます。
ただし、自分がどういう生活をして、何のためにこの地域で暮らすのかという軸がはっきりしないまま引っ越してしまうと、理想と現実のギャップに悩むことに。
都会にない地方の濃厚なコミュニケーションに驚く人もいますが、野菜と果物を交換するようなうれしい関係を築けることも。地方での暮らしは、新しい文化との出合いでもあります。
Q4.どうやって場所を探せばいい?
土地を知るとともに人を知る
土地よりも、人とつながることが幸せな二拠点生活や移住生活を築くポイントです。自分が引っ越してからなじめるコミュニティがありそうか、頼れる人をつくれそうか。地元の人との交流が移住地決定の決め手になる場合は多く、つながりがあると困ったときに何かと相談できてスムーズです。
まずは、お試し移住、ワーケーション、移住コンシェルジュによるツアーなどで、実際に現地に行ってみることをオススメします。情報は自治体や移住者コミュニティのホームページにありますが、どの場所が自分に合うのか見当がつかないときは、コンシェルジュサービスも役立ちます。実際に体験するなかで新たな条件を発見することもあるので、とにかく動くことを大切にしてほしいと思います。
Q5.支援制度にはどんなものがある?
制度はさまざま。条件を調べて賢く利用を
国のほか自治体にも、いろいろな支援制度があります。移住者が最初の生活の基盤をつくるための費用をサポートしたり、建て替えやリフォームの一部を負担など、住宅関連の助成金がある場合も。また、Uターン者に特別支援金を出す自治体もあります。制度によっても違いますが、だいたい50万~150万円ほどの金額が支援されるので、新拠点で生活の基盤を整えるには十分といえます。
また、お試し移住の際に、格安で家を貸し出し、その場所を気に入れば長期で住める家を紹介してくれる自治体も。支援を受けるには、制度ごとに条件があります。自分で申請する必要があり、知らないともったいないので、自治体のホームページなどで調べてみましょう。
二拠点生活や移住をしてよかったことは何ですか?(複数回答可)
二拠点生活や移住後の仕事や働き方に、どんな変化がありましたか?
PROFILE
山根好子 やまね・よしこ
スカラパートナーズ企画担当。移住・定住を中心に、本質的かつ持続可能な地域活性のための事業開発に従事。
●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。
Illustration:SANDER STUDIO Text:Asuka Ochi
Composition:林愛子