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MSC「海のエコラベル」は、おいしさとサステナビリティの“しるし”
MSC「海のエコラベル」は、おいしさとサステナビリティの“しるし”
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MSC「海のエコラベル」は、おいしさとサステナビリティの“しるし”

近年よく耳にする、「魚が獲れなくなった」という話。このまま魚を持続可能なレベルを超えて過剰に漁獲していくと、近い将来、身近な魚が食べられなくなってしまう可能性があるのです。国際的な非営利団体MSC(海洋管理協議会)が管理、推進するMSC「海のエコラベル」は、水産資源と環境に配慮して適切に管理された「サステナブルな漁業」で獲られた水産物の証。2006年からラベルがついた水産物を扱っているイオンリテールの河岡進さんに、その狙いや現状について伺いました。

業界に先駆けMSC認証商品を販売

MSCは持続可能な漁業を普及する活動をおこなっている、国際的な非営利団体。本部はイギリスにあり、1997年に設立された。イオングループは業界に先駆けて、持続可能な漁業で獲られたことを示すMSC「海のエコラベル」つきの商品を販売してきた。イオンリテールの河岡さんによると、2006年に取り扱いをスタートしたころに比べ、世の中の意識はずいぶん変わってきたという。

「ここ数年、『サンマが獲れない』『記録的不漁』など耳にする機会が増えました。『このままいくと、いずれ魚が食べられなくなるかも』という危機感を、より多くの方々が強く感じているのでしょう。日本に昔から伝わる『魚食文化』を、次世代に継承していくことが私たち小売業の使命。イオングループでは、日本で最も多く水産物を販売しています。その立場から、『買い物でできるエコ』を広げていくという想いは、2006年当初から変わっていません」(河岡さん、以下同)

MSC「海のエコラベル」がついた商品は、水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業で獲られた水産物。MSCラベルつきの商品を消費者が選ぶことで、持続可能な漁業を応援し、海洋環境を守ることにつながる。SDGsの認知度の上昇とともに、MSCラベルについての問い合わせも増えているそうだ。

「節分にあわせて『サスティナブルな魚の海鮮巻(海の恵)』を販売したところ、とても好意的な声が寄せられました。年配の方々を中心に、『このラベルはどういう意味なの?』という問い合わせも多いですね。認証商品について説明すると、すごく共感してもらえます。親子連れのお客さまで、お子さんから『お魚についているマークは何?』と尋ねられている親ごさんの姿もよく見ます」

MSC認証の商品を販売する「イオンスタイル板橋前野町」の「フィッシュバトン」コーナー。「次世代に豊かな食文化をつなげていきたい」との想いから設置された

認証商品は、そうでないものに比べて割高になりがちだが、イオンでは同じ価格帯で販売。物流コストを抑えるなどの企業努力により、買い求めやすい価格で提供している。

「扱いはじめた当初は水産部門の売上10%にも届かなかったのですが、現在は20%を超えています。若い方々を中心に、認知度も意識も高まっているのでしょう。『これからは「海のエコラベル」のついたお魚を買います』など、積極的に選んでいただける方も増えました」

MSC漁業認証を取得している北海道のホタテガイ漁業。MSC「海のエコラベル」がついた水産品は、約60ヵ国で販売され、世界中で2万品目以上にのぼる。日本では700品目以上が販売されており、イオングループを始めとするスーパーマーケットやコンビニ、ファストフードチェーンなどで購入できる

2006年当初は、消費者だけでなく、働くスタッフにもサステナビリティという考えはほとんど知られていなかったそうだ。

「当時、認証商品は特別扱いされていて、ほかの商品とはオペレーションも異なっていたのです。いまは、たとえばカツオのたたきは9割が認証商品。逆に非認証が特殊なものになりつつある。SDGsが浸透するにつれて、現場スタッフも『2006年から扱いがあったんだ!』『こんな昔から取り入れていたんだね』と、誇らしく思うようになったようです」

イオンリテール株式会社 食品本部 水産商品部 マーチャンダイザーとして、寿司・海藻、生食加工品などを扱っている河岡さん。認証商品を1ヵ所に集めて販売する常設売り場「フィッシュバトン」にも携わっている

認証商品の価値を広めたい!

MSC認証には、漁業に対するMSC漁業認証と、水産物の水揚げ以降のサプライチェーンに対するMSC CoC認証の2つがある。これによって、MSC漁業認証を取得した漁業で獲られた水産物が、非認証の水産物と混ざることなく、確実に消費者に届けられているのだ。最近は、消費者から「もっと認証商品を増やしてほしい」と言われることもあるとか。

「『これはなぜ認証商品にならないんですか?』などと聞かれたら、『現状はまだなんです。ただ、今後は認証に向けて進んでいくと思いますよ』と答えています。認証はそう簡単にはとれるものではないことも、しっかり伝えたいことのひとつ。限りある資源を守るために、厳格な規格を満たした漁業で獲られた認証商品の価値をわかっていただきたいです」

河岡さんは、日本各地の漁港などでバイヤーも担当してきた。現在も、事業者に対して、MSC 認証をとるよう声がけをしているという。

「MSC『海のエコラベル』は、漁業者と、流通過程で卸売業者や加工業者、販売事業者みんなが認証を持っていないとつけられません。そんな話をしても、当初は『そうはいってもね』と耳を貸してくれない業者さんが多かったのですが、ここ数年は魚が獲れなくなっていることを、みなさん肌で感じています。『このままではダメだ』という機運が高まっているため、認証の話を前向きに聞いてくれる業者さんが増えました」

現在、河岡さんが担当する寿司コーナーに並ぶ商品のうち、3割近くが認証ラベルつきの商品だ。

「今後は、水産部門全体でまずは30%を目指していきます。魚離れが進んでいるといわれていますが、寿司は30年間、『好きな食べもの』の1位の座をキープ。イオンリテールの水産鮨では、現状の寿司ネタの約3割が認証商品ですが、それをさらに広げていきたいですね。MSC認証はおいしさを保証するものではありませんが、認証の取得事業者はおいしさが保たれるよう、商品を大切に扱っているんです。そのせいか、お子さんたちは、『MSCラベル』を『おいしいマーク』として認識してくれているようです。以前、認証商品を食べたらおいしかったようで、『このシールは、おいしい“しるし”だよ!』と言っている姿を見ました。認証商品はサステナブルなだけでなく、魚を丁寧に扱っていることも伝えていきたいですね」

photo:島根道昌、text:萩原はるな

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