知らないではすまされない「地球温暖化」の理由と責任
気候危機の原因は、人間の活動が引き起こした地球温暖化です。だからこそ、まずは地球温暖化の仕組みや状況をきちんと理解することが大切。地球でいま起こっていることと私たち人間の責任について、基本を学びます。今回は、地球温暖化のしくみをご紹介します。
人間活動によって増加した
温室効果ガスの影響に占める割合は?
二酸化炭素 76%
大気中での寿命は自然界に吸収されない限りほぼ永久。発生源は、化石燃料の燃焼をはじめ産業や運輸などさまざまな人間活動。
一酸化二窒素 6%
温室効果はCO2の265倍。大気中での寿命は約120年。発生源は、農業における窒素肥料の使用や工業活動など。
フロン等 2%
温室効果はCO2の12倍~2万2800倍。大気中での寿命は10~100年。発生源は、エアコン、冷蔵庫などの冷媒など。
メタン 16%
温室効果はCO2の28倍。大気中での寿命は約12年。発生源は、牛のゲップや排泄物、稲作、廃棄物の埋め立て等。
人間活動によって排出されたCO2
2021年 約363億トン
CO2排出量の国別ワースト1は中国、次いでアメリカ、インド、ロシアと続き、日本は世界で5番目に多くCO2を排出。この順位は2009年以降変わっていない。
森や海など自然界に吸収されるCO2
年間 約200億トン
海や森林は大気中のCO2を吸収する。とくに海は1年あたり90億トンのCO2を吸収。森林保護に加え、海藻など、海の生態系を守ることも重要となる。
温室効果のしくみ
大気の99%は窒素と酸素。しかし、これらには地球を温める作用はない。地球を包む毛布のような役割を果たすのは、水蒸気や二酸化炭素、メタンなどの温室効果ガス。大気中の割合は微量だが、効果は絶大。温室効果ガスがなく太陽光だけなら、地球はー19℃程度にしかならない。問題なのは温室効果ガスが増えすぎて、地球を温めるパワーが過剰になっていること。ちなみにオゾン層破壊と温暖化は混同されがちだが、オゾン層破壊で増えるのは紫外線。紫外線は温暖化に直接影響しない。
どうして発生する?
人間活動によって排出されるCO2のほとんどが、火力発電など化石燃料を燃やすことで発生している。メタンは牛のゲップや排泄物、稲作、廃棄物の埋め立て等から発生。牛肉消費量の増加が問題視されているのはそれが理由で、世界の農林水産業から出るメタンは、世界のメタン排出量の40%近くを占める。ちなみに、過去20年間で世界のメタン排出量は30%近くも増加している。フロン類の使用は身近なものではエアコンや冷蔵庫の冷媒など。使用時に漏れ出るほか、廃棄の仕方でも漏洩する。
排出されたCO2の寿命は?
温室効果ガスは、大気中に排出された後の寿命もそれぞれに異なる。たとえば、CO2の寿命はほぼ永久。海や森など自然界に吸収されない限り、100年も1000年も大気中にとどまり、その間ずっと温暖化に影響を及ぼすことになる。一酸化二窒素の寿命は約120年、メタンは約10年、フロン類は種類により10~100年とされている。私たちが排出している温室効果ガスは、長ければ100年後、1000年後の未来にも影響を与え続ける。一刻も早い温室効果ガス削減が叫ばれる理由はそこにある。
先進国の責任とは?
18世紀の産業革命以降、多くのCO2を排出してきたのは先進国だ。CO2の排出量は1950年以降急速に増えるが、その時期の排出量はOECD(経済協力開発機構)に加盟する北米や欧州、日本などが多い。にもかかわらず、温暖化による被害が深刻なのは主に途上国だ。近年は中国やインドなど、成長目覚ましいアジアの大国のCO2排出量が問題視されているが、18世紀の産業革命以降のCO2排出量を考えると早くから工業化が進んでいたヨーロッパやアメリカ、日本といった先進国の責任は大きい。
●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです(2022年10月)。
出典:IPCC第5次評価報告書、IPCC第6次評価報告書、環境省『令和3年版環境白書』、資源エネルギー庁『エネルギー白書2020』環境省『地球温暖化対策計画』令和3年10月22日閣議決定、JCCCA、温室効果ガスインベントリオフィス、気候変動監視レポート2020
Illustration:Sara Kakizaki Photo:Koichi Fujisawa Text:Asuka Ochi Text & Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子