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フェアトレード・ラベル・ジャパンが設立30年! いま、世界や私たちに起きていること
フェアトレード・ラベル・ジャパンが設立30年! いま、世界や私たちに起きていること
FEATURE

フェアトレード・ラベル・ジャパンが設立30年! いま、世界や私たちに起きていること

2023年11月6日に設立30周年を迎えるフェアトレード・ラベル・ジャパン。10月のある日、これを記念した特別セミナーが都内でおこなわれました。会場では、30年の軌跡を振り返るとともに、今後の展望を見据えたトークやパネルディスカッションを展開。この30年、世界は、そして日本は、どのように変化したのでしょう?

大量生産&消費を見直すことにもつながる「フェアトレード」

そもそもフェアトレードとは、「公平・公正な貿易」、つまり「人や環境に配慮したものを適正な価格で取引すること」。国際フェアトレードラベル機構は、世界の貧困問題や生産者の持続可能な生活を目指し、公正な取引ができるよう産業構造そのものを変えることを目的に設立された。その日本機構として30年前に誕生したのが、フェアトレード・ラベル・ジャパンだ。

30周年記念特別セミナー「Fairtrade Journey-30年の軌跡 そして未来へ-」のオープニングトークに登壇したのは、ニュージーランドの森で暮らしながら執筆や環境省アンバサダーなどの活動をおこなっている四角大輔さんと中南米生産者ネットワーク団体CLACのJoao Mattosさん。

四角:フェアトレードを知ったのは30歳のころ。環境問題を中心に活動していたのですが、人権問題も必要だと感じていたころでした。フェアトレードの活動には、日本にいるとなかなか気づきにくい人権問題が含まれているんですよね。フェアトレードの活動をはじめて15年くらいたちますが、まだまだ解決していない課題がたくさんあります。ただし近年は、人権問題について声をあげるためのツールが増え、環境問題に当事者意識をもつ人が増えてきました。

Joao :温暖化にハリケーン、寒波など気候変動による異常気象は、世界中の生産者に大きな苦しみを与えています。都市で生活していると何週間も雨が降らなくても水はなくなりませんが、生産者は水源が枯渇すると飲み水がなくなるだけでなく、作物がダメージを受けて収入源がなくなってしまうのです。環境問題はいまや、人権や飢餓、移民問題にもつながっています。

近著「超ミニマル・ライフ」(ダイヤモンド社)が好評の四角さん(写真左)と、中南米の生産者のフェアトレード団体で活動するコーヒースペシャリストであるJoaoさん(写真右)

四角:いまさまざまな問題が起きているのは、大量生産と大量消費が進められていたため。ですからたとえば、「余計なモノ買わない」とひとりでも多く思ってくれるように、今後も活動を続けていきたいです。本来ボクたち日本人は、サステナブルやミニマリズムを意識して生きてきた歴史があります。本来ボクたちがもっていた価値観は、世界への大きなヒントになると思います。

Joao:初めて来日した8年前にくらべると、いろいろなことが前に進んできたと感じています。生産者側として、日本の消費者の方々とどうつながっていけるかを考えながら、さらに取り組みを進めていきたいですね。

サステナブルな行動はかっこよくかわいく、楽しくなっている

続いてのパネルディスカッションには、エシカル協会代表の末吉里花さん、経済産業省大臣官房臨時専門アドバイザーでオウルズコンサルティンググループ代表の羽生田慶介さんが登場 羽生田慶介さんが登場。「気候変動・人権問題で大きく動く世界の最新動向、消費者とフェアトレードの未来」をテーマに、トークが繰り広げられた。

特別セミナーの第二部では、フェアトレードの普及に尽力する企業に贈られた「Fairtrade Japan Award 2023」の表彰式を開催。第一部に登場した四角さんや末吉さんらが、プレゼンターを務めた

末吉:私は現在、エシカル協会の代表を務めていますが、「フェアトレードの重要性や魅力を伝えたい!」と思ったのがすべての活動のはじまり。2003年ころアフリカのキリマンジャロに登頂したところ、氷河がとても小さくなっていることに衝撃を受けました。いまはさらに、気候変動の影響の大きさを実感しているところ。世界中の生産地が、食料をどう確保していくのかという課題に直面しています。すでに、暑さに強い作物や無農薬での栽培など、さまざまな側面から実践されはじめているんです。

羽生田:実際にこの50年間で、自然災害による被害は5倍になっています。こうして実際におきている以上、対応せざるを得ないですよね。

末吉:スウェーデンにある北欧最大のスーパーでは、認証ラベルを認知してもらう工夫がいっぱい。「消費者に賢い選択ができるよう努めています」と表示されていたり、「捨てない」「ごみを出さない」工夫がされていたりと、意識の高さをひしひしと感じさせられました。エコ・シティーを目指すマルメ市では、リペアやリユースに関するスポットがマップに明記されていましたよ。ヨーロッパではすでに、「買うだけではない消費」にシフトしているようです。

羽生田:「イケア」本社でチーフ・サステナブル・オフィサーを務めた方と話したら、サステナブルな取り組みについて「消費者が望んだことをやっただけだ」と言っていました。そうした取り組みを、欧米では6割の人々が「生活の質を高める」と捉えています。いっぽう、日本人の6割が「生活の質が脅かされる」と考えているんです。

授賞式がおこなわれた懇親会で提供された、フェアトレード製品を使用したサステナブルフード。参加者たちはその美味しさとバリエーションの多さに、あらためて感服していた

羽生田:けれどもここ数年、日本でもサステナブルな行動がかっこよくかわいく、楽しくなってきていると感じます。最新市場動向では、SDGsの認知が9割にまで伸びた影響も受け、フェアトレード市場も前年比約25%増と急増している。フェアトレード商品を、一般の人が買う商品になってきたんです。

末吉:学生たち、若者たちと話す機会があると、「フェアトレードを学校で学んだので、発表したいんです」「卒論のテーマで取り上げたいから、アドバイスをください」などと言われるんですよ。

羽生田:日本には「なかなか変わらないけれど、変わるときは一気に変わる」という良い意味での「同調圧力」があるんです。「みんなやっているから、私もやる」という習性ですよね。企業も「フェアトレードに取り組むにはもう少し検討の時間がほしいけれど、今すぐ競業他社がやったらイヤだ」と考えているところが多い。いまは、すべての価値観がガラッと変わる前夜だと思っています。

末吉:あと一歩なんですね! とても勇気づけられます。フェアトレードはどんな人も取り組みやすい活動。どんな人もどんな組織に所属していても、必ず消費活動はするでしょう。自分で購入するだけでなく、企業やお店に「フェアトレード商品がほしいんです」と権利を生かすことでも、フェアトレードを応援できる。私たち消費者は、積極的にそうした声を届けていくべきですよね。

羽生田:従来の「品質」の意味が変わり、今は機能性などに加えて、フェアトレードであるかどうかという価値なども「品質」の一部になってきています。旧ジャニーズ事務所の性被害問題では、「うすうすは知っていたけど、声をあげてこなかった」という人がほとんどでしょう。日本人の多くは、気候変動や人権問題においても同じようなスタンス。起きていることに気づいている以上、見て見ぬふりをせずに変えていきましょう!

text:萩原はるな

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