徹底してサステナブル!「ザ・リッツ・カールトン沖縄」が、やんばるの住民に愛される理由
沖縄本島でもとりわけ自然豊かな北部、名護湾を望む高台に位置するゴルフ&スパリゾート「ザ・リッツ・カールトン沖縄」では、体験型プログラム「Good Travel with Marriott Bonvoy」を実施しています。これはマリオット・インターナショナルグループがアジア太平洋地域の約50軒のホテルで展開している、環境保護、地域コミュニティへの参加、海洋保護の3つを軸に据えた100種類ほどの体験プログラム。その土地の課題に向き合い、考え、行動する機会を提供するこの取り組みを、前後編にわたってレポートします。
赤土流出を防ぐために、地域の方々とともに汗を流す
前編で触れたように、沖縄県では赤土の流出がサンゴの生育が妨げることが問題視されている。その対策のひとつが「グリーンベルト活動」。ゲットウやペチパーといった植物の苗を畑周辺や畝(うね)に植栽したり、ヒマワリを植えたりすることで、景観にも配慮しながら流出の防止が図れる。クロタラリアというマメ科の植物を植えると、流出防止効果に加えて、土壌中の根粒菌が増えて土の力をアップできるのだという。
優先すべきなのは、むき出しになってしまった赤土をカバーすること。マルチングというビニールで覆うだけでなく、12月〜3月末頃に生育期を迎えるサトウキビの葉ガラなどを畝に撒くなど、さまざまな方策が講じられている。けれどもその大切さはわかっていても、日々の農作業に手を取られ、対応できていない農家も少なくない。
そこでザ・リッツ・カールトン沖縄では有志スタッフを募り、地元・恩納村や東村の農家とともに赤土対策をおこなっている。「畑で作業をしたあとに、農家さんが沖縄ブランドのパイナップル『ゴールドバレル』を切ってふるまってくれたんです。それが感動的においしくて! 大自然のなかでの作業で、心身ともにリフレッシュできます。カブトムシの幼虫を見つけたこともありました」と、作業に参加したスタッフが笑顔で教えてくれた。今後は、希望するゲストとともに赤土対策の作業をおこなっていく計画だ。
沖縄の赤土問題について学んだあと、赤土をつかったキャンドルづくりが体験できるプログラムを準備中
失われたサンゴを復活させようと、地元漁師たちがおこなっているサンゴの養殖に参加できるプログラムも。珊瑚礁は、生物多様性、漁業資源、観光資源などの役割を担っている 写真提供:沖縄ダイビングサービスLagoon
再生農業をおこなう農場で植えつけや収穫、料理体験なども実施
ザ・リッツ・カールトン沖縄のほど近くに、耕作放棄地だった農地を近隣の農家から借りた132坪の畑がある。ホテルから出た生ごみやコーヒーカスなどをコンポストを利用して堆肥に変え、再生農業に取り組んでいるという。畑をつくるのは、基本的に手作業。炭素が出るものは草切り機、ガソリンをつかうのはトラックのみだそう。耕作にはシャベルとフォークを使用し、ミミズやムカデ、カタツムリ、バクテリアなど自然の力を活かした土壌づくりに挑戦している。
赤土対策にもつかわれるマルチシートは、通常は雑草が生えるのを防ぐためのもの。ここではマルチシートの代わりに、やがて土に還るダンボールを採用している。農薬や防虫剤などもいっさい排除し、害虫が嫌うニームオイルや木酢などナチュラルもので対応しているという。
農場でできたハーブ類は、デコレーションや室内外の装飾などにもつかわれている
植え方もひと工夫している。虫に弱い野菜の近くには、マリーゴールドなど虫が嫌う香りを出す植物を植える「コンパニオンプランツ」の考え方を導入。畑の空いているスペースにも植物を植え、陽の光をさえぎることで雑草が茂るのを防いでいる。こうした日陰樹(シェードツリー)の植栽は、土に水分を保つ効果もあるそうだ。
畑ではローズマリーやオレガノ、タイム、レモンタイム、イタリアンパセリ、シソ、オレンジバーム、レモングラスやシナモンバジルなどのハーブや、ニラなどの野菜を育成。収穫した野菜はホテルで提供されている。希望するゲストには、苗の植えつけや収穫、料理などの体験プログラムを準備中だという。
人は、土に触れることによって免疫力が向上し、幸せホルモンのセロトニンを体内で放出するといわれている。これらの体験は旅の思い出になるだけでなく、地域の方々と触れ合い、リフレッシュできる得がたい経験となるはずだ。
やんばるの恵みを味わえる、サステナブルステイ
マリオット・インターナショナルグループでは、プラスチックの削減にも取り組んでいる。シャンプーやコンディショナーなどのアメニティ容器は大型のポンプ式に切り替え、つかい捨てプラスチックを削減。さらに、ザ・リッツ・カールトン沖縄はオリジナルのビーチバッグを展開している。持ち手部分を除いて、素材はすべて100%リサイクルポリエステル。なんと、バッグひとつにつき11本分の500mlペットボトルがつかわれているのだという。また、客室などに置かれているミネラルウォーターは、すべてリサイクルできるアルミ缶に変更された。
沖縄料理が堪能できるレストラン「グスク」では、最高級の和牛のしゃぶしゃぶとともに味わえる、リッツ流の沖縄そばを提供。澄んだビーフの出汁ととろける牛肉は、沖縄そばの概念を覆す味わい
ヨガプログラムなどがおこなわれるテラスからの景観。ザ・リッツ・カールトン沖縄の地域とともに歩む姿勢に共鳴した地元住民らが、この景観になじむよう、電線の鉄塔を緑色に塗りかえた。同ホテルは、それほどまでに地域に愛されている
レストランでは、沖縄県産の食材を最大限に活用。アグー豚やおきなわ和牛などの畜産物に海ぶどうやアーサー(アオサ)など海の恵み、マンゴーにパイナップル、シークァーサーといったフルーツなどがふんだんに使用されている。ビーチなどでピクニックが楽しめる「リッツニック」では、プラントベースのメニューを詰め込んだピクニックバスケットも提供。心と身体、さらに地球にもやさしい体験ができる。
ラグジュアリーな空間で叶える、ザ・リッツ・カールトン沖縄でのサステナブルステイ。一度は経験する価値がありそうだ。
text:市村幸妙、photo:萩原はるな