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味は一流、値段はお得!! “ブランド和牛のフードロスをなくしたい!”から生まれた「モッタイナイビーフ」
味は一流、値段はお得!! “ブランド和牛のフードロスをなくしたい!”から生まれた「モッタイナイビーフ」
FEATURE

味は一流、値段はお得!! “ブランド和牛のフードロスをなくしたい!”から生まれた「モッタイナイビーフ」

日本中から最高の和牛や豚が集まる、東京・品川の東京食肉市場。オーエムアイは、ここで30ブランド以上の高級和牛から一級品の和牛をセレクトして仕入れ、加工、販売している食肉卸売販売会社だ。宮内庁や有名ホテル、大手飲食メーカーなどに和牛を提供し続けてきた同社が、サステナブルな観点から開発した個人向け商品「モッタイナイビーフ」がいま、食品業界で大きな話題となっている。仕掛け人である尾身彗斗(おみ・けいと)さんに、商品に込められた想いや開発ストーリーを伺った。

規格外牛肉に日の目を当てる

「たまにはおいしい和牛でも」と肉屋さんのショーケースを覗いてみたものの、値段を見てあきらめた、なんて経験がある人は多いだろう。ましてや、A5、A4ランクの超高級和牛を買う機会など、庶民にはなかなかあるものではない。松阪牛、近江牛、神戸牛、宮崎牛などのブランド牛にいたっては高嶺の花。これらは高級ステーキ店やすき焼き店、焼肉店などで、多くのインバウンド客を感動させているのが現状だ。

ところがこうした高級和牛にも、フードロスがある。オーエムアイのマーケティング担当・尾身さんによると、ステーキ用などに肉を整形するときに出る端材や、わずかな傷やシミがあるだけで「規格外」となったものなど、味は一級品なのに市場に出回らない牛肉がたくさんあるのだ。

「これまで、そうした肉は業務用冷凍庫でいったん保存し、関係者への手土産にしたり、まかない食の材料にしたりして活用してきました。ただ日々の商いのなかでも端材は出続けますし、冷凍庫の大きさにも限りがあるので、最終的に破棄してしまうことも多かったんです」(尾身さん、以下同)

大手広告代理店のプロデューサーを経て、2023年4月に父が代表取締役を務めるオーエムアイに入社した尾身彗斗さん。モッタイナイビーフはじめ、さまざまな新事業にチャレンジしている

同社が取り扱っているのは、一流のホテルやレストラン、さらには宮内庁に納めるような、厳選された和牛。それらの形を整える際に出た端材や規格外品が捨てられているとは、なんてもったいない話だ!

「私は、実家が肉の卸売会社ですから、小さいころからこうしたフードロス予備軍の肉を、家族でやるバーベキューなどで食べてきました。それらがとてもおいしいことを、よく知っているんです。しかし、私が食肉業界に身を転じる前は、端材や規格外品を商品にして売るなどという考え方は存在していなかった。これはもったいないと、その名もモッタイナイビーフとして、まずは個人のお客さまに向け、ある通信販売モールで売り出してみたんです」

広告業界から転身してきたからこそ、業界の慣習にとらわれず廃棄される端材などを「もったいない」と感じ、そのまま「モッタイナイビーフ」とキャッチーな名前をつけた尾身さん。通販サイトでモッタイナイビーフの販売をスタートさせると、たちまち、東京食肉市場の同業者たちから「端材をweb通信販売するなんて面白いことやってるね。ウチは思いつかなかったよ」などと声をかけられるようになり、サイト利用者からの評判も上々となった。

「その通販モールでは、牛肉の売り上げランキングで1位になるなど、想定していた以上に好評をいただきました。そこで専門の通販サイトを立ち上げ、モッタイナイビーフを事業化することにしました」

モッタイナイビーフの公式サイト。レシピ集も好評だ

現在のところ、モッタイナイビーフのサイトでは、ステーキサイズの霜降り肉、かたまり肉、焼肉用など和牛、国産牛のさまざまな部位をミックスし、500g〜1㎏分をセット販売している。最高級ブランド牛も混ざって1kgで5980円。コスパは最高だ。事実、利用者から「なかなか買えない和牛を思いきり楽しめた」「どうせ切り落とし肉だろうと思っていたら、和牛の大きなステーキ肉が入っていて驚いた」などの賞賛の声が寄せられているという。

「提供しているのは、いわゆる“ワケあり”肉ではなく、あくまで“もったいないお肉”。買っていただいた皆さん、まずは端材や規格外とは思えない、ステーキ肉そのもののような見た目などに驚かれるようですね。焼いたり、煮たりと、さまざまな料理に活用されています。弊社商品はリピーターが多いのが特徴で、知り合いにも『おいしいし安いから食べてみて』と薦めていただいているようです」

モッタイナイビーフをつかった料理イベントもたびたび開催。そのひとつ、東京・日本橋のクラフトビールスタンド「Omnipollos Tokyo(オムニポヨス トウキョウ)」で開かれたイベントを筆者も訪ねてみた。

これがモッタイナイビーフをつかった料理たち。手前がステーキ、奥が肉豆腐。おいしいクラフトビールもいただいた

いただいたのは上写真の料理。ステーキはまさに、味も形もサシの入った高級ビーフステーキで、「これのどこが端材なの?」という感じだ。肉豆腐は、牛肉のダシが豆腐にもよ〜く染みていて、ビールが進む進む! そして、何より驚いたのが、記事冒頭の写真、紙製カップに入った、生ビーフジャーキー。ひたすら堅くしょっぱいだけのアメリカ土産のアレとはまったく別物のジャーキーがそこにはあった。やわらかくジューシーで、食感も味も焼肉の上カルビ! これには驚いた。モッタイナイビーフ、完全にふつう(?)の高級和牛、最高の食材じゃん!

東京食肉市場内にあるオーエムアイの倉庫兼作業場。全国から選りすぐりの最高級和牛が集まり、ホテルやレストランなどに送られていく

東京食肉市場で感じた「命をいただく」ありがたさ

そういえばモッタイナイビーフの名前には、「もっと多くの人に、和牛のおいしさを知ってもらいたい。知らないなんてもったいない」という想いも込められているのだった。たしかに、これを食べないなんてモッタイナイ!

「たとえば東京食肉市場は、多くの方が利用される品川駅のすぐそばにありながら、あまり存在を知られていません。魚介類や野菜の豊洲市場のように、食肉市場ももっと広く皆さまに知っていただきたい。10月には、ここで一般の方々に向けた『東京食肉市場まつり』も開催されます。モッタイナイビーフも披露しますので、ぜひお越しください」

その東京食肉市場では、毎日競りがおこなわれ、競り落とされた和牛はそれぞれの卸業者の作業場に運ばれ、加工されてる。その一部を見学させてもらったが、生産者だけでなく、本当に多くの人の手を経て私たちの肉食が成り立っていることがよくわかった。ここでは、「私たちは日々、命をいただいて生きている」ということを強く実感できたのだ。

一頭買いされた和牛は、年じゅう低温に保たれた作業場で、熟練作業者によって部位ごとに切り分けられ、トリミング(整形)される。見ていて気持ちがいいほど作業が手早い

「和牛の世界では、育った場所やランクが非常に重要視されています。でも、それがすべてなのかと疑問をもったことも、モッタイナイビーフ事業をはじめたキッカケのひとつです。同じA5ランクでも、牛によって肉質や味は異なるのです。大事なのは、競りでの目利き。そういったリアルな話も世の中に発信していきたいですね。モッタイナイビーフは『どこの牛です』とか『何ランクです』とかを強調していません。食べてもらえれば、おいしさはわかってもらえるはずですから」

前職の広告代理店で、さまざまな商品のプロモーションやプランニングに携わってきた尾身さん。庶民には特別な存在の和牛を、より身近し、多くの人に幸せな時間を届けたいと願っている。

「そのためには、これまでの食肉業界にはない視点から消費者に寄り添うプランニングが必要。肉を売るだけでなく、体験も提供していきたいです。モッタイナイビーフをつかったハムなどの加工品も販売していきますし、レストランやカフェなどとコラボして、和牛の新しい楽しみ方をどんどん広げていきたい。ゆくゆくは和牛が日本の食文化をリードする存在になってくれれば、とてもうれしいですね」

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