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ドイツのサステナブルな街を巡る旅⑥ 300年の歴史を誇る「マイセン」磁器に、感動の絵つけ体験
ドイツのサステナブルな街を巡る旅⑥ 300年の歴史を誇る「マイセン」磁器に、感動の絵つけ体験
FEATURE

ドイツのサステナブルな街を巡る旅⑥ 300年の歴史を誇る「マイセン」磁器に、感動の絵つけ体験

環境先進国であり、SDGs達成度ランキング2023で世界位にランクインしているドイツ。トラベルライターの鈴木博美さんが、ドイツのサステナブルやSDGsをレポートします。精巧で高品質なモノづくりで知られるドイツには、「マイスター制度」があります。これは中世から続く職人教育のシステムで、見習いからはじまり、熟練職人を経て、最終的にマイスターとして認定されるもの。世代を超えて、伝統技術が受け継がれています。文化の継承は地域のアイデンティティの一部であり、観光資源としても重要な役割を果たしています。今回は、ドイツが世界に誇る陶磁器「マイセン」の裏舞台をご紹介します。

高い環境基準をクリア! 材料の99%がリサイクル可能!

前回(第5話)で紹介したケムニッツから東へ車で約1時間、公共交通機関で2時間ほどのところに位置する小都市マイセン。ザクセン州の州都、ドレスデンからは普通電車でも30分しかかからない。中世の時代の雰囲気が残るマイセンは比較的観光客も少なく、ゆっくりと散策できる。カフェやショップが軒を並べ、陶磁器を扱うヴィンテージショップも多い。そう、「マイセン」は街の名称だが、ここでつくられる「マイセン磁器」や、そのブランドとしての「マイセン」のほうが、世界で知られているかもしれない。

「国立マイセン磁器製作所」は、1710年にザクセン選帝侯でポーランド王を兼任していた強王フリードリヒ・アウグスト1世によって設立されたヨーロッパ最古の磁器工場。屈指の東洋磁器蒐集家でもあったアウグスト1世は、日本の伊万里のような東洋の白磁を自国でもつくり出そうと、錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベトガーに研究させた。結果、ベトガーは5年の歳月をかけて白磁の製法を見つけ出し、ヨーロッパ初の硬質磁器が誕生したのだ。王はその製法を門外不出とし、マイセンの小高い丘にあるアルブレヒト城に磁器製作所を設けてベトガーを幽閉し、研究を繰り返すことを命じた。しかし、精神的衰弱や薬品を吸い続けたことなどが原因で、ベドガーはその10年後にわずか37歳でこの世を去った。その後は代々の職人たちが技術を受け継ぎ、マイセンは世界に名を馳せる磁器の街となったのだ。

そんな暗い歴史がありつつも、いまのマイセン磁器製作所では、工房見学や絵つけなどを観光客が楽しめるようになっている。工房見学ツアーでは、磁器の主原料となるカオリンから白い粘土になるまでの工程から、ろくろ引き、成型、接合、下絵つけ、上絵つけなどの制作工程を見学でき、マイスターによる絵つけの職人の技術をじっくり間近で見られる(ドイツ語、英語に対応)。

マイセンの絵つけは、ドイツ国内で無形文化遺産に登録されている。養成学校で学び、好成績を残した生徒だけがマイセン磁器製作所に入ることを許されるという。マイセンのものづくり精神は、伝統と革新、職人技術と品質、そして芸術性と持続可能性を融合させたもの。これらすべてがあいまって、マイセンの磁器を特別なものにしているのだろう。

国立マイセン磁器製作所CEO.のDr.ティルマン・ブラシュケさん

「私たちが重視しているのは、常にスキルやノウハウを継承すること。それこそ、300年以上にわたるマイセンの継続の基礎となっています。同時に、若い世代の新しいアイデアも素晴らしい源です。またマイセン製品は100%ドイツ製で、ここマイセンで製造されています。磁器の主原料であるカオリンも、地元の小さな鉱山で採掘されたもの。生成されるすべての材料の 99% は、生産時に再利用またはリサイクルできます。焼成した磁器も再利用が可能です。ドイツの高い環境基準と社会基準がプロセス全体に適用され、可能な限り最高レベルの持続可能性が保証されています」(CEOのブラシュケさん)

自分だけのマイセン磁器マグカップをつくる!

マイセン磁器製作所では、観光客が自分で絵つけできる、オリジナル・マグカップ体験が人気を集めている。鉛筆で下書きをした後、最初に筆を入れる瞬間はドキドキ! が、いつの間にか集中してしまって、アッという間に時間がたつ。絵つけが終わったマグカップは釉薬をかけて焼成され、1ヵ月ほどで自宅に発送される。カップの裏にはマイセンのロゴ「青い双剣」と、D.I.Y.の印のニコちゃんマークが。マイセンマグカップは99ユーロ、小物入れは89 ユーロ (それぞれアジア地域への送料を含む)だった。マイセンで焼かれた、世界にひとつしかない最高の“思い出の品”だ。

2階にあるミュージアムでは、約 3万4000 点もの歴史的な磁器から厳選された 2000品と 、300年以上におよぶ磁器の歴史絵巻が展示されている。1階のショップには、テーブルウェア、ホームデコ、ジュエリーなど、見ているだけでも気持ちが豊かになるマイセン磁器が並び、併設のカフェ&レストランで食事やスイーツも楽しめる。マイセンの街の散策とあわせて、丸一日かけるのがおすすめだ。素敵なホテルもあるので、宿泊してのんびり過ごすのもいい。人気の都市から少し離れてみると、こうした新たな発見が得られるのだ。

text:鈴木博美、協力:ドイツ観光局

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