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ドイツのサステナブルな街を巡る③ ラインヘッセン地方の「ビオワイン」生産者がつくる“未来につながるワイン畑”
ドイツのサステナブルな街を巡る③ ラインヘッセン地方の「ビオワイン」生産者がつくる“未来につながるワイン畑”
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ドイツのサステナブルな街を巡る③ ラインヘッセン地方の「ビオワイン」生産者がつくる“未来につながるワイン畑”

環境先進国であり、SDGs達成度ランキング2023で世界4位にランクインしているドイツ。トラベルライターの鈴木博美さんが、ドイツのサステナブルやSDGsを巡ってレポートします。第3回のテーマはビオワイン。マインツから南にライン川に沿って広がるラインヘッセン地方は、オーガニック栽培でつくるビオワインの中心地。未来につながる持続可能なワインづくりのカギだという「PIWI(ピーヴィ)」品種についてレポートします。

病気や気候変動に強いサステナブルなブドウ

ラインヘッセン地方はドイツ最大のワイン生産地で、高品質ワインを生産すると認められた13産地のひとつ。この丘陵地域の東側はライン川が蛇行する部分に接していて、日当たりのいい斜面になっている。つまり、太陽の光が十分に降り注ぎ、ブドウの完熟を促してくれるというわけだ。土壌は肥沃で、さまざまな品種のブドウが栽培されている。ラインヘッセン最大の都市は、北部にあるマインツ。ここには、ドイツワイン協会(German Wine Institute)や高品質ワイン生産者団体(VDP)の本部があり、この地がドイツワイン界においていかに重要かがわかる。

ラインヘッセン地方の農家は持続可能な農業とオーガニック農法の先駆者で、近年、同地方には有機栽培や自然農法で育てられたブドウを原料とする「ビオワイン」をつくるワイナリーも増えている。ビオワインは地域の自然環境保護や持続可能な農業を守る新たな取り組みとして、国内外から注目を集めている。

ライン渓谷に広がるワイン畑に眺めに感動しつつ、いまだ中世の面影が残る街、ノイシュタット・アン・デア・ヴァインシュトラーセを訪れた。ここには3代にわたって受け継がれてきたオーガニック・ワイナリー「モール・ガッティング 」がある。セラーには歴代の主たちの肖像が刻まれた巨大なオーク樽がズラリと並ぶ。これを見ただけで、ここで「家族の歴史と愛が詰まったワイン」がつくられているのだということがよくわかった。

同ワイナリーは2代目の時代に約17 ヘクタールのブドウ畑をオーガニック栽培に転換した。

「私たちのオーガニックワインは、生き生きとしたブドウの木と健康な土壌が、高品質ワインの鍵となります。自然の力を最大限に活用してワインを生産することにより、環境への負荷が軽減され、ワインの味わいにも独特の風味が生まれます」(3代目のマイケル・クラウスさん、以下同)

モール・ガッティングは、ラインヘッセンのワイン農家たちによる「ZUKUNFTSWEINE(ツークンフツヴァイネ=未来のワイン)」ネットワークのメンバーで、 PIWI品種の栽培に取り組んでいる。PIWIは、病気をもたらすカビ菌などに対抗できるように人工交配された「真菌耐性ブドウ品種」。白ブドウ「カベルネ・ブラン」をはじめ100種以上のPIWIがあるが、どの品種も農薬の散布量を格段に減らせて、持続可能な農業に大きく貢献するといわれる。

ZUKUNFTSWEINEプロジェクトには、さまざまな地域のワイン生産者が参加、未来志向で持続可能なブドウ栽培というテーマに取り組んでいる。重要なポイントは、カビに強いPIWI品種からつくられるワインであること

「未来のワイン・ネットワークが栽培するブドウは、もともと丈夫で安定した品種。栽培に必要な薬剤を大幅に減らせて、環境にやさしい品種といえます。気候の変化にも適応できるので、このまま気候変動が進んだとしても、100年、200年先もブドウ栽培を続けて、持続可能なワイン生産ができると期待しています」

カベルネ・ソーヴィニヨンといくつかの真菌耐性品種を交配したPIWIのカベルネ・ブランを試飲した。フローラルな香り、口の中でパプリカやベリー、フレッシュな草のような香りが広がる華やかな味わい。750mlで7ユーロ(約1190円)とカジュアルな価格にしては、申し分ない品質だ。

環境先進国として知られるドイツでは、環境に配慮したブドウ栽培がスタンダードとなっている。1985年、ビオを実践していた生産者らが発足させた組織「ECOVIN(エコヴィン)」は、ラインヘッセン地方に本部を置き、現在は約240もの生産者が所属、世界最大級のオーガニック・ワイナリー機関となった。ECOVINは、農薬や化学肥料をつかわず下草を生やしながら、生物多様性を守る方法で栽培されたブドウを使用したワインを認証している。

未来のワイン・ネットワークとECOVINのような有機ワイン生産者のコミュニティは、持続可能な生産方法を進め、ワイン生産での環境負荷を減らすという共通の目標に向かってともに歩んでいる。ラインヘッセンのワインは今後、ますます注目を集めるに違いない。

text:鈴木博美 協力:ドイツ観光局

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