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創業100年!カーボンニュートラルを目指す「トリイソース」の一歩先行くものづくり【後編】
創業100年!カーボンニュートラルを目指す「トリイソース」の一歩先行くものづくり【後編】
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創業100年!カーボンニュートラルを目指す「トリイソース」の一歩先行くものづくり【後編】

野菜や果物をまるごと自社でカットして、皮や種も捨てずにじっくり煮込み、石臼ですりつぶして、木桶で熟成させる。そんな手間ヒマをかけてつくられているウスターソースが「トリイソース」です。さらに2023年からは「カーボンニュートラル」(温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにすること)をテーマに、あらたな取り組みを始めたといいます。なぜ、ソース屋さんが脱炭素なのでしょう? 製造元の鳥居商店3代目、鳥居大資さんに伺いました【後編】。

ーー前編はこちらーー

名門「ヤマロク醤油」からのアドバイス

「この(2023年)12月からは、ソース工場敷地内にソーラーパネルを設置しました。これらのパネルがしっかり稼働してくれれば、さらにカーボンニュートラルに近づけるはず。弊社のモットーである『環境負荷の低いものづくり』に向けて、絶え間なく努力していきたいですね」

おだやかな笑顔で語るのは、鳥居大資さん(52歳)。2024年で100周年を迎えるトリイソース(浜松市)の社長だ。同社は創業以来、「生の状態からグツグツ煮込んだ野菜や果物の凝縮された旨み」にこだわり、手づくりのソースを家庭の食卓や食のプロなどに届けてきた。

ウスターソースを木桶で熟成させるなど、かねてからサステナブルなものづくりをおこなってきた同社だが、伝統の上にあぐらをかくことなく、常に時代の空気に敏感で、そのときどきのニーズに応えた商品を生み出してきた。そして──2023年11月にはついに、「究極のソース」シリーズ「The Sause 2023 カーボンニュートラルを目指したソース」の販売を開始した。

木桶で仕込み中のソース

きっかけは前編で鳥居さんが語ってくれたとおり、2022年、彼が地元・浜松にある経済団体の政策委員長として、市などにカーボンニュートラルに関する提言をしたこと。トリイソースは毎年、テーマを決めて「自分たちがつくりたいもの」を究極のソースとして限定販売している。2023年に入り、鳥居さんは決意した。「今年のテーマはカーボンニュートラルだ!」と。

今回のチャレンジに際して、鳥居さんは製造工程を見直した。そのヒントはコロナ禍中の2020年、自社工場にこもってじっくり考える時間があったときに得た。かねてより交流があった、『鶴醤(つるびしお)』など“ほんもの”の醤油を全量木桶仕込みでつくっている香川県・小豆島の「ヤマロク醤油」5代目社長、山本康夫さんから、「ソースを熟成させる木桶を小さくしてみてはどうか」と、サイズ変更をアドバイスされたのだ。

山本さんは、「木桶職人復活プロジェクト」などサステナブルな取り組みを推進している。彼の助言ならばと、鳥居さんは木桶の大きさを変えることを決意。さっそく大阪・堺市の「藤井製桶所」に、トリイソースで代々受け継がれてきた15石(約2400L)の巨大な桶の3分の1ほどの4石(約720L)木桶を発注、工場の桶の入れ替えを行った。

「実際につかってみると、この大きさが、私たちにとっては最適だったんです。以前は昔からあるものをそのままつかっていて、木桶の大きさについて考え直したことなどなかった。何も疑っていなかったというのが正直なところです」(鳥居さん、以下同)

以前の木桶は大きく、重く、少し位置を変えるにも大変なり労力がかかったが、4石桶なら自社のフォークリフトでも動かせる。それだけでも、製造にかかるエネルギーを減らす=炭素排出量を減らせるのだ。このほか、これまで材料の野菜の一部を冷凍していたのを、すべて常温のままつかうことにしたり、煮込んでいた野菜を酢漬けに変えてみた。これらにより、冷凍と加熱にかかるエネルギーをゼロに。さらに、木桶での熟成前におこなうソース姿煮の過程でも時間を短縮するなど、さまざまな工夫によりカーボンニュートラルを名乗るにふさわしいスペシャルソースができたのだ。

量り売りは「三方よし」

そして2023年の春からは、京都の量り売り専門店「斗々屋」との取引を機に、直営店での量り売りに取り組んでいる。

「量り売りのいちばんのメリットは容器代です。私たちはソースをガラス瓶で販売していますが、キャップやラベルなども含めると、それに対するコストが1本あたりかなりかかっています。私たちが売りたいのは中身のソースであって、お客さまに毎回、瓶代を請求するのは本意ではありません。容器は洗えば何回でも使えますから、量り売りはお客さまの負担も低くなります。うちの人気商品のひとつ『桶底ソース』は200mlで550円ですが、量り売りなら300円くらいで提供できるんです」

量り売りはユーザー、売り手、環境すべてにメリットがある。まさに「三方よし」だ

量り売りのメリットは価格だけではない。つくり立てのフレッシュなソースを、ユーザーがほしい量だけ販売できる。

「お客さまによっては、200mlでもつかいきるのが難しいといいます。量り売りだったら必要な量だけ、たとえば100mlでもいい。すると価格は150円ほどですから、さらにうちのソースを気軽にお求めいただけるはずです。本当に必要なものを必要なだけ揃えていくこと。これが、これからの豊かな暮らしにつながるのではないでしょうか」

2024年に創業100周年を迎える鳥居食品では、それを記念してウスターソース発祥の地であるイギリス・ウスターへの社員旅行を計画中だという。そこで刺激を受けた鳥居さんら同社社員が、次にどんな手を打ってくるのかが楽しみだ。

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ーー前編はこちらーー

text:市村幸妙

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