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創業100年「トリイソース」が脱炭素社会に向け、はじめたこと【前編】
創業100年「トリイソース」が脱炭素社会に向け、はじめたこと【前編】
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創業100年「トリイソース」が脱炭素社会に向け、はじめたこと【前編】

たっぷりの野菜をまるごとつかって木桶で仕込んだ、自然なおいしさが魅力の「トリイソース」。製造元の「鳥居食品」(静岡県浜松市)は時代に即したソースづくりを追求しており、現在は脱炭素など環境負荷を減らすべく、さまざまな取り組みをおこなっています。2024年に創業100年を迎える同社の3代目、代表の鳥居大資さんにお話を伺いました【前編】。

素材の風味を活かした味を追求する、老舗ソース店の挑戦

打出の小槌がトレードマークになっている「トリイソース」の調味料類。感度の高いセレクトショップなどで扱われることが多く、気になっている読者もいるだろう。

同社のモットーは、ソースはあくまで主役である肉や魚などの引き立て役であるということ。そのためソース単体のおいしさを追求するのではなく、料理と一緒になったときに最もおいしくなるような、やさしい味わいが特長だ。

こだわりは、①生の野菜をつかう、②昔ながらの製造法でつくった自家製醸造酢を使用する、③原形の香辛料をたっぷり配合する、④木桶でじっくり熟成させることだという

同社では年に一度、さまざまなテーマに沿った「究極のソース」を数量限定でつくっている。直売店とオンラインショップのみでの販売となり、販売開始から1〜2日ほどで売り切れる年もある人気商品だ。2020〜2021年は「焼きそばソース」、22年は「ハンバーグソース」だったが、12年目となる2023年のテーマは「カーボンニュートラル」。

「ソースづくりに関して、まだまだできていない領域ややってみたいことがたくさんあるんです」とは、代表の鳥居大資さん。ではなぜ、2023年は「カーボンニュートラル」がテーマだったのだろう。

「地元経済団体の政策委員長として、市などにカーボンニュートラルへの政策提言をおこなったことがきっかけでした。そして、カーボンニュートラルに対する考え方などを含めて、『地産地消』がどれだけのインパクトをもたらすかを知りたい、という好奇心も理由のひとつ。地域の農産物などでの地産地消への推進力になればと、挑戦してみました」(以下、鳥居さん)

「究極のソース2023」は定番のウスターソースと中濃ソース2種類をセットにし、限定200個を用意

取り組みの初年度には、炭素排出量66%削減!

まずは原材料の調達場所を、本社工場のある浜松の近くに変更した。さとうきびは、以前は鹿児島のものをつかっていたが、浜松産に替えた。塩はメキシコからの輸入だったが静岡県掛川市産に、黒胡椒はマレーシア産から沖縄県産のヒハツに変更。タイムはモロッコ産から愛知県産に、セージはトルコ産から長野県産に、それぞれ変更した。こうしてプロジェクトを進めていくなかで、いくつかの幸運もあったという。

「元社員の女性から偶然、23年の春先に連絡をもらったんです。『浜松でサトウキビを栽培していて、やっと商品化できるレベルに達したので見てもらえないか』と。例年、究極のソースは11月のリリースに向けて、年明けころからテーマを考えはじめるんです。『カーボンニュートラル』という今回のテーマについて、誰にも話していなかっただけに、タイミングのよさにびっくりしました。元社員は退社後に、食の探求を深めていった結果、サトウキビにたどり着いたそうです。彼女にやりたいことが見つかったことと、それによって、またわれわれとつながれたことが、すごくうれしかったですね」

元社員の女性が栽培するサトウキビでつくった「きび糖シロップ」。「サトウキビを浜松で栽培していることに驚きました」(鳥居さん)

ただし、ソースの要であるスパイス類は、国産のみでは仕入れ量が不安定であることに加え、「国内産にこだわることにさほど大きなメリットはない」と鳥居さん。

「距離だけではなく、それをどう運ぶかということも見極めなければなりません。マレーシアなど暖かいところで栽培されている香辛料を、僕ら中小企業が『距離が近いから』といって独自に調達することが、はたして100%正しいのか。たとえば、大手食品メーカーさんが海外から大量に運んでくるのに便乗させてもらってもいいんじゃないか、というのが私たちの発想です。輸送の際のCO2総排出量は、おわれわれと大手メーカー、それぞれが別々に運ぶより、一緒にして一度に運んだほうが少なくなる。ある意味、理にかなっていると思います」

鳥居さんが続ける。

「この発想は、われわれのライフスタイルにも関わってくるでしょう。脱炭素社会を目指しながらも、生活をよりよくしていくためには、『やったほうがいいこと』『やらなくてもいいこと』を冷静に、客観的に取捨選択していかなければならないと思っています」

各原料の原産地からの輸送と、自社での製造時のエネルギーを計算。「本プロジェクトを通して、野菜など原材料の産地を地産地消化することや、省エネを重視した製造工程に見直すことで、どれだけCO2排出量を減らせるか把握できました」(鳥居さん)

ーー後半に続きますーー

写真提供:鳥居食品、text:市村幸妙

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