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新食習慣「プラントベース」が、私たちのカラダと環境にもたらすもの
新食習慣「プラントベース」が、私たちのカラダと環境にもたらすもの
COLUMN

新食習慣「プラントベース」が、私たちのカラダと環境にもたらすもの

最近、さかんに耳にするようになったプラントベースという言葉。plant(植物)+base(土台)、つまり植物由来の食材を基本とした食生活を指します。ミラノ在住のヴェルヌ華子さんは、パリのレストランで植物性のみの料理に出合って大きな衝撃を受けたとか。以来、その素晴らしさを広めることをライフワークにしている彼女に、プラントベースのメリットとデメリットについて伺いました【後編】。

――前編はこちらーー

もともとはプラントベースフレンドリーだった日本。でもいまは……

プラントベースとは、植物性由来の食材を積極的に摂っていく食のスタイルのこと。ヴェルヌさんによると、近年、世界中で需要が高まっているそう。

「実際、プラントベースミルクや大豆ミートなど、プラントベース食品の市場規模はここ2年で1.5倍ほど伸びています。2030年までにはさらに3.7倍ほどに伸び、1620億ドル(約20兆円)に達するという予測もあるほど。とくに目立つのが植物性肉の伸びで、現在は食肉市場の0.3%ですが、30年には5%までマーケットシェアが拡大するともいわれています」(ヴェルヌさん、以下同)

アメリカでは、2013年には5%だった「ヴィーガン」または「ベジタリアン」と自称する人が、2022年には10%と、倍増しているそう。

「NY市では、すべての公立病院でプラントベースの病院食をデフォルトにしています。また、環境問題への意識がとても高いオランダ・アムステルダムでは、世界で初めて、公共の場での食肉広告が禁止されました。ガストロノミー界でも、NYのミシュラン三つ星レストラン『eleven madison park』が、コロナ禍を機に完全プラントベースのメニューにシフトして注目を浴びました」

十数年身を置いていたラグジュアリーファッションの世界を離れ、プラントベースの食習慣を築くサポートをするプログラム「Plantful Journey」を主宰するヴェルヌさん。2023年6月には東京に一時帰国し、代官山蔦屋書店でプラントベースのワークショップをおこなった

精進料理などに見られるように、もともとは菜食の文化をもっている日本。しかし現在は、食文化の西洋化などにより、私たちの食生活はプラントベースから遠のいてしまっている。

「現在、日常的に動物性食品を口にしている人の割合は、世界でもトップクラスです。1950年ころ、日本人の平均食物繊維摂取量は一人あたり一日20gを超えていました。けれども穀類やいも類、豆類の摂取量の減少に伴い、年々減る傾向にあります。最近の報告によれば、平均摂取量は一日あたり13〜14g前後と、アメリカ人の平均摂取量(14〜15g)を下回っているんですよ」

健康にも環境にもメリットがあり、マインドも変化!

食べることが大好きだというヴェルヌさん。プラントベースにシフトする前は、おいしいものは幸せを与えてくれるけれど、カラダによくないことも多く、常にかすかな罪悪感を抱いていたという。

「おいしさを追求することで環境や動物に負荷をかけていることへの後ろめたさも、なんとなく感じていました。プラントベースは、おいしく食べながら、自分にも環境にもポジティブ! さまざまなメリットがありますが、第一には健康面。できるだけ加工・精製していない野菜や穀物、果物などホールフード・プラントベースをより積極的に摂取することで、生活習慣病の予防をはじめ、健康を促進することがさまざまな研究で証明されています」

動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えると、多大な健康促進効果があるだけでなく、生活習慣病による致死率を下げることが、さまざまな研究で明らかになってきた。

「近年、腸内細菌についての研究が進むにつれて、腸内環境を良好に保つことが免疫や認知機能、メタボリズムにも影響を及ぼすことがわかってきました。腸内細菌の唯一のエサとなるのが食物繊維。植物性以外の食品には食物繊維が含まれていないため、腸、ひいてはカラダを健康に保つには、植物性の食品を積極的に摂る必要があるのです」

都内でおこなわれたワークショップでは、ナッツやハーブ、スパイスをつかった3種類のコンディモン(自家製調味料)を紹介。参加者たちは自分たちでつくったコンディモンを試食、「おいしい!」「いろいろな料理につかえそう」などと感想を語っていた

プラントベースの食生活を送ることは、環境にもポジティブなインパクトを与えられる。ヴェルヌさんはプラントベースを採り入れたことで、環境問題にも目を向けるようになった。

「世界をリードする科学者と政策立案者の調査を基にした本、『DRAWDOWNドローダウン― 地球温暖化を逆転させる100の方法』(山と渓谷社)によると、温室効果ガスの削減に効果がある可能性が最も大きい施策は、1位が冷蔵庫やエアコンにつかわれているフロンガスなどの化学物質対策、2位は陸上の風力発電、3位はフードロスの削減、4位がプラントベースのライフスタイル推進だそうです。プラントベースは、水の節約にもつながります。家畜を育てるためには大量な穀物や食料が必要になるだけでなく、多くの水もつかわれているからです。一方、植物性の食品は栽培に必要とされる土地の面積あたりのエネルギー供給率が非常に高いため、増え続ける人口を養うには、プラントベースへのシフトが効率的といわれています」

メリットだらけのプラントベース。では、デメリットはどんなところにあるのだろう。

「植物性だけの料理に慣れていないと、食卓がワンパターンになり満足感が得られないことがあります。とくに日本では、植物性の食材や植物ミルクなどの代替品が動物性よりも高価で、家計を圧迫する可能性があります。プラントベースのレシピの多くは、栄養価は高いものの、満腹になりやすい割にはカロリーが低いため、しっかり必要なカロリーを摂取することを意識しないと、体重が減りやすいというデメリットもあります。ただしこれは、多くの現代人にはメリットになるかもしれませんね」

ヴェルヌさんは現在、フランス人の夫と2人の子どもとともにイタリア・ミラノ在住。自宅では、食事の95%ほどがプラントベースだそう。2023年7月より、ル・コルドンブルー・パリ調理学校のPlant-based Culinary Artsディプロマコースに、日本人として初めて入学した

このように、健康や環境面でさまざまなメリットがあるプラントベース。しかし実際には、それ以上のインパクトを与えてくれるとヴェルヌさん。

「食習慣を変えると、マインドが代わり、ライフスタイルが代わり、人生が変わります。私自身の経験や、Plantful Journeyのプログラム受講生たちの声を聞いていると本当にそう」

プラントベースを採り入れた人々からは、「これまでつかったことがなかった新しい食材との出合いで、世界が広がった」「食生活を意識するうち、どうサステナブルなアクションを起こすべきかを考えて実践できるようになる」「旬をより意識し、楽しむようになった」という変化のほか、「食に対する迷いがなくなって、スッキリした気持ちになった」「食を大切にすることで、自らを大切にしていることを実感でき、自己肯定感につながった」という声が寄せられているという。

近々、本サイトでヴェルヌさんによるプラントベースのレシピ連載がスタート。まずは、週に一日、一食だけでもプラントベースを採り入れてみよう。

――前編はこちらーー

text:萩原はるな

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