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ブラジルのコーヒー農場から世界を変える! フェアトレードの現場から見えてきたもの【後編】
ブラジルのコーヒー農場から世界を変える! フェアトレードの現場から見えてきたもの【後編】
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ブラジルのコーヒー農場から世界を変える! フェアトレードの現場から見えてきたもの【後編】

コーヒー農家の息子として生まれ育ったパウロ・フェレイラ・ジュニアさんがフェアトレードと出合ったのは、大学生のころ。フェアトレードの生産者組合による研修受講を経て、代々受け継がれてきた農法からサステナブルな栽培法に切り替えていきました。現在は、フェアトレード・インターナショナルメンバー組織CLACのマネージャーとしてグローバルに活動中。東京を訪れたパウロさんに、ブラジルのコーヒー農家の現状やフェアトレードについて伺いました(後編)。

――前編はこちらーー

フェアトレードを実践して成果をあげたら、まわりの農家にも変化が! 

16歳で両親が営むコーヒー農園の手伝いをはじめ、大学時代にフェアトレードに出合ったパウロさん。ブラジルのフェアトレード・オーガニック・スペシャリティコーヒー生産者組織「コープファム」に所属し、フェアトレードでのコーヒー栽培をスタートさせた。

「地球環境や働く人々にもやさしい栽培法を学ぶことで、価値観ががらりと変わりました。生産性も収入も格段にアップし、継ぐことを躊躇していたほど経営が悪化していたコーヒー農園が息を吹き返したのです。価値観をリセットするのには苦労が伴いましたが、チャレンジして本当によかった」

フェアトレードが持ち込まれるまで、ブラジルのコーヒー栽培は、昔ながらの方法でおこなわれていたという。大量の化学肥料をつかうのがあたりまえで、「環境にやさしい肥料」の存在さえ知らなかったそうだ。

「フェアトレードで得た知識を活かしたの農法にチェンジして9年目になりますが、周辺の農家の意識も大きく変わりました。フェアトレードをはじめる農家も増えましたし、そうでない農家も『どうやったら、そんなにたくさんコーヒーの実をならせることができるんだ?』と、私たちの農法を参考にするようになったのです。そうやっていいところの学び合いをおこなうことで、みんなの知識が底上げされ、『どうしたらもっとよくなるか』を考えるようにもなりました」

2016年に植樹をおこなったアフリカンマホガニーのシェードツリーと、同年に有機農法により栽培をスタートしたアラビカ種のコーヒー畑

国際フェアトレードラベル機構では、生産者への適正価格の保証と代金の前払い、長期的な取引などをフェアトレード基準で定めるほか、より品質の高いものを継続的につくれるようサポート。環境や人にやさしい農法や、リサイクルなどごみの処理法などについても伝えている。

「フェアトレードの浸透で廃棄を減らす意識が根づいたことから、周辺の農園はとてもキレイになりました。かつてはコーヒー農場のあちこちに、肥料入れにつかっていたプラスチックバッグが置きっ放しにされていたものです。最近、友人のフェアトレードファーマーが歩いていたら、道路にプラスチックバッグが放置されているのが目について、『誰かが放置したのかな』と思って近づくと、すぐそばの畑で作業をしていた人が『ごめんごめん、時間がなくて! あとで片づけて、リサイクルに出そうと思っていたんだ』と急いで駆け寄ってきたそうです。そのくらい、みんなの意識が変わったのです」

現在は中南米生産者ネットワーク団体CLAC(フェアトレード・インターナショナルメンバー組織)でマネージャーを務めるパウロさん。フェアトレードの輪を広げようと、グローバルに活動中だ

フェアトレードは気候変動に立ち向かう武器になる!

このように農法だけでなく、「環境や未来に対する考え方や意識にも変化がおきている」とパウロさん。いま、パウロさんたちが挑んでいるのが、気候変動に負けないコーヒーづくりだ。

「気候変動は毎年ひどくなっていると感じています。温暖化に加えて、降るべき時期に雨が降らないことや、コーヒーの木には大敵の霜も大問題。以前はパラナ州がブラジルコーヒーの主要生産地でしたが、1975年の霜被害で大打撃を受け、主要生産地が北上したという歴史があるほどです。現在はブラジル北部のミナスジェライス州で多く生産されており、私の家族の農園もこの州にあります」

干ばつの影響で生産ができなかった畑。木の枝をいったん切り落とし、生産サイクルを再開させようとしている

2021年にも大規模な霜被害が発生し、ミナスジェライス州も大きな打撃を受けた。世界の主要産出国であるブラジルの収穫が振るわないと、コーヒーの価格が高騰するという。もちろん、被害に見舞われた農家の金銭的なダメージはかなり大きい。

「2022年も年のはじめに雨が降らず、通常の40%しか実が収穫できませんでした。気候問題のやっかいなところは、前もって予測ができないところ。けれども私たちは、この問題を解決しようと果敢に挑戦を続けています。コーヒーの木は直射日光を嫌うため、シェードツリー(日影樹)を植えて栽培する方法が進められていますが、実はこの農法は霜や干ばつにも有効。シェードツリーが霜をガードし、土壌に多くの水分をキープしてくれることがわかってきています」

さらにオーガニック肥料をつかうと、土壌に水分が多く蓄えられるという。こうした新たな農法を推進することで、気候変動にも負けない農園がつくれるというわけだ。

2018年に植樹をはじめた土地で順調にコーヒーの木が生育。はじめてつけた、コーヒーの花を眺めるパウロさんの父

それぞれの農家が最新情報にキチンとアクセスできる環境をつくることで、より効率よく、積極的なコーヒー生産が実現できるとパウロさん。農家同士の交流だけでなく、生産者と消費者の交流も促進していきたいと考えている。

「フェアトレードとは、生産者と消費者、双方にとってフェア(公平)であるべきもの。お互いにコミュニケーションをとることで、よりサステナブルなコーヒー生産が実現できると思っています。消費者の方々も、日々自分が『何に対してお金を払っているのか』を意識することが大切。理想の世界を実現するためには、みなさんの大切なお金が、必要としている誰かのもとに、生きて届くことが重要ではないでしょうか。フェアトレードはそれをかなえる、とてもパワフルな仕組み。『買う』という大きな行動で、新しい世界をつくっていけることを、多くの方に知っていただきたいです」

――前編はこちらーー

text:萩原はるな

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