アロマオイルを選びながら、サステナブルな農林業に思いをはせよう【後編】
コロナ禍で長くなったお家(うち)時間を充実させるために、アロマオイルを利用しているという方も多いのではないでしょうか。国産の植物を使った天然のエッセンシャルオイルを販売する、アットアロマ広報の森 満梨絵さんに、国産素材をつかうことの重要性を伺いました。
農家、林業家と直接つながって原料調達
いい香りの空間は、そこにいるだけで気持ちが安らぐ。
「『ラベンダーはリラックスできる』『ウッドの香りは家にいながらにして森林浴気分が味わえ、気持ちが落ち着く』とは、よくいわれています。すこやかに暮らすために、香りがもたらす深いリラックス効果を活用することはかなり有効だと思います」(森さん、以下同)
コロナ禍以降、アットアロマの製品も人気が高まる一方。だが、同時に課題も生じているという。
「近年は海外産の木材が安く手に入るため、国産の木材がつかわれなくなっているという傾向も。日本の林業家の収入が減り、森林保全のための活動もしづらくなるという問題が生じています」
同社はエッセンシャルオイルの原料を、生産者から直接仕入れている。生産農家、林業家とつながりをもつことで、原料の品質を確保し、香りの専門家がひとつ一つ香りを確かめながら、社内のラボでブレンドしているという。今後さらに国産素材を使ったエッセンシャルオイルの裾野を広げ、農業や林業などに貢献していきたいと考えているそうだ。
間伐材や端材もムダなく活用する
同社がこの9月に発売したシングルタイプ(他の香りとブレンドしていないもの)のエッセンシャルオイルは、奈良県と和歌山県の「高野槇(こうやまき)」、高知県の「高知柚子(こうちゆず)」、奈良県の「吉野檜(よしのひのき)」の3種類。いずれもサステナビリティをコンセプトとし、間伐材や端材などもムダにせず使用している。
「高野槇」は弘法大師空海が仏前に捧げたとされている霊木。世界遺産に登録されている和歌山県の高野山周辺に多く生息しており、お供え用や生花につかわれることも多い。霊験あらたかな生息地にふさわしく、青々しさのなかに静けさや気品がただよう香りが特徴。このエッセンシャルオイルは採油量が少なく貴重だという。
「高知柚子」が栽培されているのは、四国山脈の険しい山々に囲まれたエリア。果汁を絞った後、皮の部分を手作業で外し、丁寧に処理してから蒸留している。柚子が持つフレッシュさのなかに、ふんわりと甘さを感じる香りだ。
3つ目はどっしりとした重厚感のなかに、清涼感が感じられる「吉野檜」。原料となる吉野檜は、古くから神社仏閣などに使用され、香り高さと美しさ、頑強さを持ち合わせる良質材として知られている。抽出後の木材も、枕のチップ材として再利用するなど、あますことなくつかわれているという。
「こんなオイルもあるということを知っていただくことで、サステナブルを考えるきっかけになればうれしいですね」
text,photo:市村幸妙、写真提供:アットアロマ