Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

和田彩花「人生を自由にするために、女性であることにとことん向き合う」
和田彩花「人生を自由にするために、女性であることにとことん向き合う」
VOICE

和田彩花「人生を自由にするために、女性であることにとことん向き合う」

ここ数年でSDGsの認知度はぐっと高まり、アクションを起こしている著名人もたくさんいます。彼らはどのような社会課題について問題意識をもっているのでしょうか。今回は、アイドルの和田彩花さんに話を聞きました。

アイドルらしいって何? 
主体的な生き方を探して

アイドルグループ・アンジュルムのメンバーとして活躍し、現在はソロで活動する和田彩花さん。彼女のオフィシャルサイトのトップページにはこんな言葉がある。

〈私が女であろうが、なかろうが、私がアイドルであろうが、なかろうが、私の未来は私が決める。こんなことを口にせずとも叶えたいものだが、口にしなければ未来を自分でつかむことは難しそうだ〉

グループから独立したいまも“アイドル”を名乗り、フェミニズムやジェンダーについて積極的に発信を続けている。

「アイドルは当然のように“アイドルらしさ”を求められる仕事です。私は15歳でデビューしましたが、自我が芽生えるとともにモヤモヤするなあと思うことが多くなって。『濃い色のリップはよくないよ、アイドルなんだから』とか、衣装やメイク、髪型、立ち居振る舞いなど、“アイドルなんだから”という理由で制限されることが多かった。“主体性を持ちづらい”ということに違和感を抱いていたんだと思います」

アイドルに主体性は必要ないのか?

「もちろん世界観をつくる運営の方がいたり、ファンの方々がいて成り立つものだということは理解していました。でもなぜそこに私というメンバーの主体性がないんだろう。歌やダンスなどのパフォーマンスに磨きをかけても、ミュージックビデオやCDジャケットなどメディアに載っていく自分は自分らしくいられない。アイドルだからといって主体的に生きるということが省略されてしまうのは違うんじゃないかって」

違和感に気づいても、それをどんな言葉で伝えたらいいのかわからなかった。転機となったのが、大学で学んだ美術史だった。

「男性目線で女性が描かれてきたことや、女性アーティストが社会問題にコミットしてきたフェミニズムアートの歴史などに触れて、徐々に疑問が解けてきたというか。自分が抱いてきた違和感がおかしいものではないということを知ったんです」

知識を得るということは言葉を持つということ。そして言葉は冷静に、客観的に自己を見つめるまなざしをくれる。

「私、ピンク色やスカートといった“女性らしい”といわれるものを避けていた時期があったんです。もともとは好きだったんですけど、アイドルだから着ているというふうに社会的な女性らしさに当てはめて見られることに抵抗があって。このままだと自分の“好き”を保てなくなる。嫌いにならないために全部なくすという選択をしたんです。いまはそれも乗り越えて、今日は白いワンピースです。まさに従来的な女性らしさの象徴ですよね」

そう笑う和田さんの表情はすがすがしい。

「自分がこう見られるのが嫌だから何かを捨てる。それはひとつの抵抗であり怒りの表明だと思いますが、次第に一番理想的なのは自分が好きなままに生きることなんじゃないかと思うようになったんです。人からどう見られるかとか、女性らしさとかも関係なく自分の心を大切にする。それが自分らしく人生を楽しむことにつながる。本を読んだり歴史を学んだり、あるいは自由に生きる女性たちの姿を見たりして、そう考えられるようになったんです」

反発だけでは何も変わらない。本当に求めていたのは自由だったのだと気づいた。

「たとえば結婚や出産という、いつか自分に訪れるかもしれない事柄についてもどこかで否定があったんです。女だからと押しつけられるのは嫌だという気持ちの表れだったのかもしれませんが、ある意味それって現実を見てないなと気がついて。自分の体は妊娠が可能で、毎月生理もくる。そういうことと距離を置いていては本当の自由は手に入らないんじゃないかって。自分の人生を自由にコントロールするためにはそのルールや手段を知っておくことが大切だし、それが自分の人生の可能性を広げることなんだと今は思っています」

近年は生理期間を少しでも快適に、自分らしく過ごすためのプロジェクト、#NoBagforMeにも参加し、活動している。

「もちろんいまも違和感を抱くことはあります。でも反射的に怒ったり、その場で乗り越えようとすると傷ついてしまうこともあるので、ゆっくり向き合っていくのがいいのかな。自分が感じたモヤモヤをなかったことにしないで持ち続けていくこと。その過程で誰かと話したり本やアート、興味がある分野からヒントを得て、自分なりのペースややり方で考えていけたらいい。もし同じ悩みを持っている人がいるなら、ひと言だけ声をかけたいですね。『自分の気持ちを大切にしてね』って」

PROFILE

和田彩花 わだ・あやか
1994年、群馬県生まれ。2009年、アイドルグループ・スマイレージ(のちにアンジュルムにグループ名変更)の初期メンバーに選出されリーダーに就任。2010年にメジャーデビューし、第52回日本レコード大賞で最優秀新人賞を受賞。2019年にグループとハロー! プロジェクトを卒業。現在はソロとしてライブを中心とした音楽活動を続けるほか、大学で学んだアートやジェンダー、フェミニズムに関する執筆活動も行う。

●情報は、FRaU2021年8月号発売時点のものです。
Photo:Norio Kidera Hair & Make-Up:Kyoko Maehara Text & Edit:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子

【こんな記事も読まれています】

衣服を届けるだけじゃない!ユニクロ難民支援16年間の本気度

男女格差を解消! 北インドの「織り」の技術

LGBTQIA+について学べて、つながれるボードゲーム

生物学者・福岡伸一「ガラパゴスこそ、進化の最前線」【前編】

白雪姫も人魚姫も、自分の意思で行動する時代!?

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!