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「すし作家」が提言!「食材のストーリーをたどれば人生は豊かになる」
「すし作家」が提言!「食材のストーリーをたどれば人生は豊かになる」
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「すし作家」が提言!「食材のストーリーをたどれば人生は豊かになる」

2022年度小学校低学年の部の課題図書に選ばれた「おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで」(岩崎書店)。企画や文を担当しているのは、紹介制の寿司店「酢飯屋」の店主、岡田大介さんです。現在は、自ら釣りに出て魚が釣れたときのみ開店する「幻の寿司職人」岡田さんに、食と海について感じていることや、私たちにできることを伺いました(後編)。

前編はこちら

食材がたどってきた道に思いを馳せてみる

「学校の先生が子どもに見せたい本」小学校の部でランキング1位となり、「第69回産経児童出版文化賞・JR賞」「第27回日本絵本賞」など、賞を総ナメにしている岡田大介さんの「おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで」。この写真絵本は、魚が寿司になるまでの過程をカラフルなビジュアルで楽しく学べるため、多くの子どもたちが夢中になっている。

「子どももお寿司は大好きですから、ワークショップでこの絵本の読み聞かせなどをすると、『次、どうなるんだろう』と興味津々で絵本のページをめくってくれていますね。この本では、魚の内臓もうんちも全部見せています。『生きものの多くはみんな食べものを食べて消化して、うんちを出して生きている。魚だってこうなっているんだよ』と教えると、子どもはみんな目をキラキラさせて聞いています。本は、それをわかってもらったうえで『じゃあ、おすしにして食べようか』となる構成にしました」

「命があるものが食べものになるまで」の過程を意識するシーンが少なくなっている昨今。だからこそ、食に意識を向けるべきだと岡田さん。

「魚だけでなく、野菜や肉も同じ。たとえば、ホタルイカのパスタを食べるときに、それぞれのたどってきた道を考えてみるんです。ホタルイカは海から、ニンニクや鷹の爪は畑からやってくる。パスタは小麦が原料ですが、『そこからどういう過程を経てパスタになったんだろう』などと想像してみるんです」

「魚を釣ったり野菜を育てたりしてみると、食材の背後にいる人々の苦労やすごさがよくわかります」

食材それぞれのストーリーを考え、わからないことは調べる。そうしているうちに、食事はもっともっと楽しく、豊かになる。

「梅干しは知っていても、梅の花とのつながりを知らない子どもは多いでしょう。梅を調べれば、梅の木と葉っぱ、実のこともわかる。もちろん、毎回の食事でやる必要はないんです。すごく気に入ったものとか、おいしいと思った料理だけでいい。そうすると、もっと食材について知りたくなるはずですよ。

たとえば一杯の牛丼を食べるときも同じです。このお米の品種は何で、どんな特徴があるのだろう? 牛肉はどこからきたものか? 牛の種類は何だろう? と、かなり奥深い。かくいう私も、こんなふうに考えるようになったのは、ここ数年のことです。以前から寿司職人として魚や米、醤油などの生産者のもとを訪ね、食材には自分なりに向き合ってきたつもりでしたが、しょせん味や調理法どまり。それ以前の『生きもの』としての見方はできていませんでした」

「生きものから食材になるまでの過程を大切にしたい」と岡田さん。美しくさばかれた魚の腹の中にも、内臓や排泄物があったことを知ってもらいたいという。

食材のストーリーを知り、その裏にある生産者たちの苦労を知ることこそ、豊かな食育につながっていく。

「たとえばマグロ。漁に行ってみるとわかるんですが、マグロを一匹釣るのってものすごく難しくて大変なんですよ。ベテランの漁師が船を出したって、手ぶらで港に帰ってくることもある。どんな食材にも、時間と大変な手間がかかっているんです。

スイカだってそう。僕らがタネを植えてみたところで、コブシ大の実をならせるのが精一杯でしょう。八百屋さんに並んでいるような、あんなに大きくておいしいスイカがつくれる農家さんは、とても偉大なのです。そこを理解できていれば、相応の価格で買おうと思うようになりますよね」

「おすしやさんにいらっしゃい! 生きものが食べものになるまで」は、魚をさばいて寿司にし、「ごちそうさま」と手を合わせる場面で終わる。制作時の撮影では、子どもたちに「まだ食べちゃダメ!」と待ってもらうのが大変だったそう。

寿司と海の導線をつなぐことで、次のアクションへ

「そうやって食材のストーリーを知ると、簡単に生ゴミとして捨てられなくなる」と岡田さん。

「スイカは中の赤い部分はもちろん、白いところもおいしいんです。食べ終わったら硬い緑色の外皮だけを薄く削いで白い部分は残し、塩漬けや醤油漬け、糠漬けにして食べます。スイカは大きいから、『この夏は、もうキュウリを買わなくてもいいんじゃないか』と思うくらい、漬物がたくさんできます。スイカはキュウリと同じ瓜科の植物ですから、漬物にしてもキュウリに匹敵するくらいにおいしいし、夏に必要な栄養も満点。フードロスも防げて、一石二鳥です」

これまで、皮や切れ端を捨てずに使うことは、ともすれば「貧乏くさい」とされてきた。だが、お金のあるなしに関わらず、最後までていねいに食べるという気持ちこそが、その人の「豊かさ」なのだと岡田さんはいう。

「ていねいに食べる姿勢が身につくと、人にも自分自身にも、ていねいに接することができるようになります。僕もジャンクフードを食べることがありますが、一方で『これを食べると、きっと体が喜ぶな』と思う食材がある。食べものに向き合うことは、自分に向き合うことでもあるんですよ」

今後も寿司や魚、食の大切さを伝えることで、海の環境を守るムーブメントにつなげていきたいと岡田さん。

「海を大事にする気持ちをみんながもてば、きっと変わるはず。そのために、これからも寿司から海への導線をつないでいきたいと思っています」

前編はこちら

岡田大介■1979年、千葉県生まれ。大学浪人中に母の急死をきっかけに18歳で食の世界に入る。24歳で寿司職人として独立、2008年に「酢飯屋」を開業する。魚の特徴をお客に伝えようと、魚のさまざまな部位を撮影しブログに掲載。幼稚園や小学校、高校などで講演やワークショップも行う。

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