エリーローズ「ごみゼロのまち」徳島・上勝町で“45分別”の意義を学ぶ【前編】
「徳島」と聞いて、何を思い浮かべますか? 鳴門の渦潮、特産の柑橘・すだち……。《Do well by doing good. imperfect×FRaU SDGs》の読者なら、「ゼロ・ウェイスト宣言」で有名な上勝町や、サテライトオフィスや移住者の多い神山町の名前をあげるかもしれません。いまも大自然が残る徳島県には、サステナブルに暮らすためのヒントがあふれています。
2003年に、ごみ(ウェイスト)をゼロにすると宣言し、いまや世界中にその名が知られる上勝で、何が起きているのでしょうか。エリーローズさんと現場を訪ねました。
ごみと資源の関係を学べる、まちのシンボル
「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」
徳島阿波おどり空港から車で走ること1時間。クネクネ曲がる山道に突如、パッチワークのような窓枠をもつ、屋根も壁も紅色の建物が現れた。
2003年に日本の自治体として初めてムダやゴミをなくす「ゼロ・ウェイスト宣言」をした上勝町のシンボル、上勝町ゼロ・ウェイストセンターだ。
人口およそ1500人の、限界集落とも呼ばれるこの町には、ごみ収集車はこない。住民は町のゴミステーションにごみを持参し、13品目45種類に分別して捨てるのが当たり前になっている。
それをシンボリックに昇華させたのが、2020年に完成したこの施設。
敷地内のホテル(宿泊体験施設)に宿泊し、町民になった気分でごみ分別体験をしたり、資源について学ぶセミナーに参加できたりする。
「ビンの色ごとに捨てるカゴが違う。同じプラスチックでもペットボトル、お菓子の袋、トレーなど、細分化しているんですね。すごい!」
エリーローズさんは興味津々だ。
「細かく分けることで有価物を明確にし、本当に不要なものだけをごみ処理場に運んでいます。まだつかえるものは、センター内のリユースショップに置いているんですよ」と教えてくれたのは、同センターの環境責任者・大塚桃奈さん。
この取り組みが実を結び、町のゴミリサイクル率は80%を超えた。今後の目標は、「サーキュラーエコノミー」の実践。
「地域のなかで経済を回し、人口が少ない上勝ならではのムリのない暮らしの形を見つけたい」と代表の小林篤司さんは語る。
ごみを出さないまちの憩いの場
「カフェ・ポールスター」
上勝町民の憩いの場といえば、同町で生まれ育った東輝実さんが営むカフェ・ポールスター。町役場でゼロ・ウェイスト政策を牽引してきた母の影響を受け、2013年にオープンした。
「ゼロ・ウェイストの活動を中心に、住みやすい環境や循環型の社会をつくることが理想。『そんなまちには、町内外の人が交流できる場所が必要だね』と母と話していたことを実現しました」
おしぼりはなくし、トイレ利用時も持参したハンカチの使用を推奨。できるだけ食材をムダにしないよう調理するなど、ごみを出さないよう徹底している。メニューに並ぶのは、地元の食材にこだわった、オリジナリティあふれるフードとドリンク。「上勝のショールーム」というコンセプト通り、ここは町の個性が凝縮したような空間だ。
エリーローズさんも、たっぷりの地元野菜と徳島特産の地鶏・阿波尾鶏の団子スープがついたランチメニューを「いただきます」!
▼中編につづく
PROFILE
エリーローズ
10代からファッションモデルとして『ViVi』などさまざまな雑誌で活躍。2008年からはDJも始め、国内外のイベントやフェスなどで幅広く活動する。2021年からスタートしたFRaUウェブでのライフスタイルコラムも人気。
●情報は、FRaU S-TRIP 2021年12月号発売時点のものです。
Photo:Isao Nishiyama Text:Yuuki Yamaguchi Styling:Yukari Ota Hair&Make-Up:CHIHIRO Illustration:Aki Ishibashi
Composition:林愛子
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