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世界遺産・熊野古道「千年の道を知るサステナブルな旅」【後編】
世界遺産・熊野古道「千年の道を知るサステナブルな旅」【後編】
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世界遺産・熊野古道「千年の道を知るサステナブルな旅」【後編】

古来、数え切れないほどの人々が歩いてきた歴史ある和歌山県・熊野古道。今日(こんにち)では世界遺産として、また「癒しの道」としても人気を集めています。熊野古道を象徴する苔むした石畳道や里山の風景を眺め、古(いにしえ)の雰囲気を残す道を歩き、豊かな自然を楽しむことができるとあって、海外からも高い評価を得ています。トラベルライター鈴木博美さんのサステナブルな旅の後編では、熊野本宮大社と周辺に点在する、よみがえりの温泉郷を訪れます。

ーー前編はこちらーー

日本一の大鳥居に圧倒される

前編でお伝えした熊野古道ウォークのゴール、熊野本宮大社は、熊野三山の中心であり、日本全国に約4700社ある熊野神社の総本山。世界遺産に登録されている「紀伊山地の霊場と参詣道」の構成資産のひとつだ。熊野三山は、熊野速玉大社、熊野那智大社、熊野本宮大社と那智山青岸渡寺を含む三社一寺の総称。速玉が前世の罪を浄め、那智が現世の縁を結び、本宮が来世を救済するといわれ、熊野三山を巡れば、過去、現在、未来の安寧を得ると信仰されている。古から、多くの人が熊野古道を歩いて熊野三山を訪れた。

鳥居の前で一礼し、杉木立の参道の両脇に「熊野大権現」と染められた奉納幟(ほうのうのぼり)がズラリと並ぶのに圧倒されながら進む。その先にある158段の石段を一段一段上り、神域へと近づいていくにつれ、なぜか自然に心が静まっていく。

熊野本宮大社の主祭神は「スサノオノミコト」で、阿弥陀如来の化身と考えられている。阿弥陀如来は浄土へ導いてくれる仏さまであり、熊野本宮大社は未来へのご利益があるそうだ。

熊野三山では、導きの神さまである3本足の「八咫烏(やたがらす)」に出会える。日本サッカー協会のエンブレムでもおなじみの八咫烏は、熊野大神(スサノオノミコト)に仕える存在として信仰を集めており、熊野のシンボルとされているのだ。

神門をくぐると、檜皮葺(ひわだぶき)の厳(おごそ)かな社殿が姿をあらわす。上四社を順番に参拝することにした。

熊野本宮大社は、かつて熊野川と音無川、岩田川の合流点にある大斎原(おおゆのはら)と呼ばれる中洲にあったが、明治22年(1889年)の洪水で多くが流出してしまったという。流出を免れた上四社3棟は、明治24年(1891年)に現在地に移築・遷座された。社殿は国の重要文化財に指定されている。

熊野本宮大社の末社である産田社は本宮から200mほど離れており、大斎原への道中に鎮座している。この小さな神社には、八百万(やおよろず)の神々を生み落とした国産みの女神「伊邪那美尊(いざなみのみこと)」の荒御魂が祀られ、参拝すれば、新たなものを生み出すパワーを授けられると伝わる。

産田社から500mほど歩くと、大斎原があらわれる。高さ約34m、幅約42mと日本一の規模を誇る大鳥居は、やはり圧倒的な存在感だ。大洪水前には熊野本宮大社があったここ、大斎原には、流失した社を祀る石づくりの小祠(しょうし=小さなほこら)がある。

世界遺産の公衆浴場と、ゆでたての絶品卵

熊野本宮大社から4㎞ほど離れたところに位置する湯の峰温泉は、開湯1800年の歴史をもち、日本最古の温泉とされる。素朴で風情のある温泉街を歩いていると、タイムスリップしたかのような錯覚に陥る。

共同浴場「つぼ湯」は、世界遺産としては唯一の“入浴できる温泉”だ。大人が2人も入ればいっぱいになるほどの小さな岩風呂で、30分交代制。源泉はかなり高温なので、冷水を足して湯加減を調節するのだが、それでも熱くてなかなか湯につかれない。日によって湯の色が7回変化するといわれ、「七色の湯」とも呼ばれている。

筆者が訪れた日は、美しい青白色だった。ここは身を清める湯垢離場(ゆごりば)であるため、石鹸やシャンプー類は使用不可。つぼ湯の近くには公衆浴場(つぼ湯の入場券もここの受付で買う)があり、そちらにはシャンプーとボディソープが完備されている。

川沿いには「湯筒(ゆづつ)」があり、生卵を湧き出る90℃の熱湯に11分ほど浸すと、ゆで卵ができあがる。ゆであがったばかりの卵は熱いうえに殻がなかなか剥けなくて苦戦するが、この卵がまたおいしい! 生卵は、周辺の土産物店などで購入できる。

熊野本宮大社から南に5㎞ほどのところにある川湯温泉は、熊野本宮温泉郷のひとつ。川原を掘ると温泉が湧き出す、全国でも珍しい温泉だ。川底から絶えず湧き出る70℃以上の源泉に熊野川の支流大塔川の水が混ざり、いい湯加減ができあがる。

冬の風物詩として親しまれる大露天風呂「仙人風呂」は、12月から翌年の2月まで利用できる。発心門王子や熊野本宮大社まで送迎してくれる旅館もあるので、川湯温泉に宿を取るのもおすすめだ。

千年をつなぐ熊野の地を歩く体験を通じて、癒しとパワーを授かりながら周辺のスポットに立ち寄る。熊野古道への旅は、日本の魅力を再発見する学びの旅となるだろう。

「熊野本宮語り部(べ)の会」は、毎週日曜と祝日に「朝いち語り部」を開催している。1000円の参加費で、発心門王子から熊野本宮大社までの区間を、語り部(ガイド)が文化や王子社、伝承などを紹介しながら案内してくれる(※2023年は3月から開催)。個別の事情に対応してくれる語り部ウォークもあり、より深く熊野古道を味わいたい人にピッタリだ。

ーー前編はこちらーー

取材協力:熊野本宮観光協会

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