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カナダ・トロント発「贅沢を犠牲にしない」持続可能な都会のホテル【前編】
カナダ・トロント発「贅沢を犠牲にしない」持続可能な都会のホテル【前編】
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カナダ・トロント発「贅沢を犠牲にしない」持続可能な都会のホテル【前編】

カナダは厳格な「カナダ環境保護法」のもとで、生物の多様性と生態系を維持している環境先進国です。自然環境や人にやさしい暮らしを求める動きは、近年さらに加速しています。その最前線を、トラベルライターの鈴木博美さんがレポート。前編では、トロントにオープンしたサステナブルホテルについてお届けします。

家具、アメニティ、食事のすべてがサステナブル

カナダ最大の都市トロント。 カナダ経済の中心であると同時に、人口の半分が移民という多様性にあふれた、にぎやかな街だ。トロントのトレンドを発信する地区のひとつ、キング・ウェスト・ビレッジの一角に「1 Hotel Toronto」がオープンした。1 Hotelは、米国を中心にサスティナブル・ラグジュアリーホテルをチェーン展開する運営会社だ。

1 Hotel Torontoエントランスの分厚い木製扉を開け、明るく風通しのよいロビーに一歩足を踏み入れれば、青々とした植物がそこここに湧き出すように植えられている。ホテル全体に3300本以上の植物が配された、まさに都会のオアシスだ。

同ホテルは、環境に配慮した建物を評価する国際的認証、「LEED認証」の取得を目指しており、設計や建設段階から、維持方法においても人や環境への安全性をキープしながら、つかう資源を削減。全客室にエネルギー効率の高い冷暖房システムを入れるなど、持続可能性を真剣に考えている。テーブルをはじめ、すべての木製家具は倒木から手づくりされたもので、床は解体された納屋などから回収されたニレの廃材でつくるという徹底ぶりだ。

バックヤードでは、キッチンから出る残渣(ざんさ=生ごみ)、ガラス、プラスチック、紙、バッテリーなど、ホテル内で出るごみが細かく分別されている(上写真)。生ごみはコンポストボックスで堆肥にして、ガーデンなどにまく。排油は100%、バイオ燃料に変換される。すべての紙、プラスチック、ガラスごみはリサイクルに回される。当然ながら、つかい捨てプラスチック類はいっさい使用しない。

ホテル併設のガーデン・パビリオン(上写真)では、100%オーガニックのハーブ、フルーツ、葉物、食用花、ピーマン、タマネギ、豆など、さまざまな作物を栽培。ホテル内のレストランに食材として提供している。柵の上には「ビー・ホテル」をつくってミツバチのハチミツを採取、朝食として宿泊客に提供している。ガーデン・パビリオンの食材にショウガ、ニンジン、ベリーなどを加え、注文を受けるたびにつくるフレッシュ・コールドプレス・ジュースは、一日の活力源となりそうなヘルシーでパワフルな味わいだ。

ホテルには5つのダイニングがあり、周辺の農家や生産者との関係を築きながら、Locally Sourced(地元産)の季節の食材をふんだんに活用している。なかでも「1 Kitchen」は、地産地消にとことんこだわったダイニング。「100km Foods(産地直送)」のコンセプトのもと、持続可能な方法で収穫された食材を、あらゆる調理法で提供するトロントフーディー注目のレストランだ。

ヴィンテージふうの明るく開放的な店内は、まるで植物園のよう(上写真)。「1 Kitchenは、レストランであるだけでなく、サステナビリティに対してポジティブな人々が集う場としても機能しています。そんなゲストのために、おいしいだけではなく、地球の未来にとってよりよい料理を考えてメニューに反映しています」と、エグゼクティブ・シェフのデレック・パワー・ジュニアさんは言う。

そのひとつが、いま話題のプラントベース料理。「1 キッチン・ビーガン・スライダー」(上写真・上)は、ウベイモのバンズにキヌアのスパイスパテ、キャラメリゼオニオン、エアルームトマト、ボストンビブレタスを挟んだヴィーガン・バーガー。食べごたえがあり、それぞれの素材が際立った一品に仕上がっている。味の濃い野菜を存分に食べたければ「1キッチン・旬の野菜ディップ」(上写真・下)をセレクトするといい。フムス、ビーガンザジキ、ババガヌーシュのディップをたっぷりつけると、たまらない旨さだ。どれを食べるか迷ったら、担当サーバーに相談しよう。きっと素晴らしい答えを導き出してくれるはずだ。

ベッドルームはシンプルかつシックで、床から天井まで届く大きな窓から光がたっぷり差し込んでいる。オンタリオ州の美しい湖と森からインスピレーションを得たというアースカラーのインテリアは、再生木材、流木、石灰岩など、地元で調達された天然素材が最大限に活かされている。

飲み水はエアフィルターの一種「HEPAフィルター」でろ過された水道水を、リサイクルされたガラスのカラフェとグラスで提供。メモ用には紙ではなく、チョークボードが用意されている。ルームキーは5種類の再生木材を、ハンガー(上写真)はリサイクル素材を使用するなど、すべてのアメニティにストーリーが満載。オーガニックコットンのリネンにひとたび包まれれば、ずっと眠っていたくなるほどの心地よさだ。 朝は部屋に備えつけのヨガマットでリラックスヨガに挑戦したり、屋上のプールで泳いだり。ジムでトレーニングという選択肢もある。

「トロント市では、毎年90万トンもの廃棄物が発生しています。私たち1 Hotel Torontoでは、廃棄物を転用する必要性を認識し、総廃棄物の85%削減を目指しながら、新しいレベルのサービスと贅沢なホスピタリティ体験を提供しています。ホテルを通じて、地域社会や環境に対する取り組みを示すことができることを、私たちスタッフ全員が誇りに思っています」(セールス&マーケティングコーディネーターのゾエ・シャンクさん、上写真)

こうした人と環境に配慮したライフスタイルの提案は、今後、世界中の都市型ホテルのトレンドとなっていくのではないだろうか。

取材協力:オンタリオ州観光局、カナダ観光局

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