Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

水と緑と中世の建築物にあふれる大都市「チューリヒ」で、“スイステナブル”な旅を!
水と緑と中世の建築物にあふれる大都市「チューリヒ」で、“スイステナブル”な旅を!
TRAVEL

水と緑と中世の建築物にあふれる大都市「チューリヒ」で、“スイステナブル”な旅を!

スイス最大の都市チューリヒ。世界有数の金融都市として知られる一方で、ヨーロッパでも屈指のグリーンシティという側面もあります。経済と文化の中心地でありながら、歴史ある教会や美術館など、中世の面影を残す街並みがいまも残っています。この地ならではの味覚を楽しめるレストランで舌鼓を打ち、環境配慮型のホテルで心地よく滞在する。そんなサステナブルな旅がかなう、スイスの玄関口チューリヒを訪ねました。(上写真:リンデンホフの丘から眺めるリマト川と旧市街)

水とともに生きる市民の憩いの場、チューリヒ湖とリマト川

ヨーロッパのほかの大都市と比べると、チューリヒはほどよくコンパクトで、自然と距離が近いのが魅力。アクセスのよさに加え、有数の観光地ながら人が多すぎない点も、旅人にはうれしいポイントだ。

市内は公共交通機関が非常に発達しており、トラム、バス、鉄道が効率よく結ばれている。ほぼすべての観光スポットにスムーズにアクセスでき、滞在中の移動は快適。観光には、24時間または72時間有効の「チューリヒカード(Zürich Card)」が便利だ。チューリヒから他都市へ足を延ばすなら、スイス国内の鉄道、バス、湖船などが乗り放題になる「スイストラベルパス」がおすすめ。連続タイプ(3、4、6、8、15日)と、1ヵ月の有効期間内に選んだ日だけつかえるフレックスタイプの2種類がある。スイスは交通費が高めなので、移動のたびに切符を購入するより、パスを利用すると経済的。トラベルパスには、美術館などでつかえる割引特典もある。

スイス国鉄(SBB)の公式アプリ「SBB Mobile」をつかえば、バスを含めた全路線の時刻表や乗換検索、チケットの購入がスマートフォンひとつで完結。紙のチケットは不要で、アプリの画面を見せれば乗車OKだ。

旅をより快適にしてくれるのが、「ドア・ツー・ドア手荷物運搬サービス」。宅配便のようにホテルから次の宿泊先までスーツケースが送れ、20以上の観光地でエクスプレスサービスに対応。朝預けた荷物が、夕方には目的地のホテルに到着しているという、鉄道王国スイスならではのホスピタリティが体感できる。

スイスのもうひとつの特徴は、自然との共生が日常に溶け込んでいること。市街地から南東へと延びるチューリヒ湖の湖畔沿いに緑地が広がり、自動車が通れないよう整備されたインフラと住民の取り組みによって、持続可能な景観づくりが進められている。

チューリヒ湖周辺には、自然環境や眺望といった“自然資本”の価値を守りながら、都市と自然が調和するランドスケープが形成されている。たとえば、チューリヒ湖の西側の緑地は、地元の人びとお気に入りのランニング&散歩コース。湖畔にはビーチもあり、犬が駆け回ったり、子どもたちが水遊びをしたりと、微笑ましい光景が見られる。夏になると、この場所は立派な“海水浴場”(淡水だが)に替わる。海のないスイスでは、湖が人々の夏のオアシス。スイス人のスイミングレベルは非常に高く、川を泳いで通勤する人もいるほどだ。水とともに生きるライフスタイルが、チューリヒのまちに息づいているのだ。

湖岸にはベンチが並び、市民や旅行者が思い思いにくつろいでいた。湖をさらに南へ歩くと、豊かな緑に包まれた公園エリアが続き、アートと自然が心地よく融合。イギリスの彫刻家ヘンリー・ムーアの作品や、スイスの現代美術家ジャン・ティンゲリーによる動く彫刻が点在し、まるで屋外美術館のようだ。

湖畔の一角には、近代建築の巨匠ル・コルビュジエが、自らの作品を展示するために設計した「ル・コルビュジエ・センター」があった。歩くだけで芸術と出会えるこの散策路は、チューリヒならではの文化的豊かさを感じさせてくれる。

旧市街の迷路のような小径を歩いた先に……

チューリヒのまちはリマト川を境に東と西に分かれ、中世の面影をいたるところで目にできる。西側に立つフラウミュンスター(聖母聖堂)で見られるシャガールとジャコメッティが描いたステンドグラスと、外回廊一面に描かれた壁画は必見だ。路地が多い旧市街は迷路のよう。気になる小径を探検するのも楽しい。

まち歩きの最中に出合ったのは、「ASS BAR(エス・バー)」というユニークなベーカリー。食品ロスの削減に貢献したいと生まれた店で、店名は“食べられる”を意味するスイスドイツ語に由来するという。

店にはひっきりなしにお客が訪れていた

一見ふつうのベーカリーだが、並ぶパンなどは昨日の“残り物”。前日に提携店で売れ残ったサンドイッチやデザートなどを集めて販売している。とはいえ品質にまったく問題はなく、おいしい。チューリヒ市内に2店舗を構え、物価の高いスイスにおいて価格が手頃なのが魅力。もちろん、旅行者にとってもありがたい存在だ。

世界最古のベジタリアン・レストラン

1898年創業の「Haus Hiltl(ハウス・ヒルトル)」は、ギネスブックにも認定された世界最古のベジタリアン・レストラン。120年以上にわたり、ヘルシーでクリエイティブな食の楽しみを提供し続けてきた。いまでこそ“ヘルシーでゴージャス”と高く評価され、多くの人々に親しまれているが、創業当初は「草食レストラン」と揶揄(やゆ)されることもあったという。

肉に見える料理も、すべて植物由来

アラカルトメニューに加え、世界各地の食文化を取り入れた100種類以上の自家製ベジタリアン料理とビーガン料理が並ぶブッフェが名物。料理は好きなだけ皿に取り、最後に計量して精算する簡潔かつユニークなシステムだ(食べ放題ではない)。インドやアジア、地中海、そしてスイスに伝わるレシピを融合させた独創的な料理の数々は、人々を魅了し続けている。

電動自転車を貸してくれるホテルは元製紙工場

チューリヒでは近年、19世紀の工場地帯を現代的なオフィスや住宅、複合施設に再生する“低エネルギー建築”を活用、都市再生プロジェクトが進められている。そのひとつが、シール川沿いに広がる「Sihlcity(シールシティ)」地区だ。

かつて製紙工場だった建物4棟は保存、再活用され、ショッピングモールや映画館、ホテルなどを備えたエンターテインメント複合施設へと生まれ変わった。屋上や壁は緑で覆われ、都市のヒートアイランド対策にも貢献している。

この一画に2024年にオープンしたのが、4つ星のデザインホテル「ザ・ホームホテル・チューリヒ(The Home Hotel Zürich)」。チューリヒ発祥の芸術運動、ダダイズムの精神を受け継ぐ、アートとカルチャーにあふれた刺激的なホテルだが、リラックスできる空間だ。市の中心部には、目の前を走るトラムで10分と好アクセスなのも魅力。

同ホテルでは、リサイクルプログラムの導入をはじめ、食品廃棄を減らすための定期的なスタッフ教育、プラスチックフリーの推進、地元産製品の積極的な使用などを実施しているという。滞在中のゲストとスタッフ双方が自由に電動自転車を使えるなど、環境に配慮した移動手段もサポートする、“スイステナブル”の精神を肌で感じられるホテルだった。

Photo&Text:鈴木博美 取材協力:スイス政府観光局 

【こんな記事も読まれています】

体験してわかった、ドイツ「ライン川クルーズ」が世界の人びとを魅了し続ける理由

ホッキョクグマに大接近! カナダの保護施設「コクラン・ポーラーベア・ハビタット」で人生初の体験を

商船三井の新船「三井オーシャンフジ」就航で、クルーズ文化は日本に定着するか?

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!