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“日本酒発祥の地”島根県・出雲で、酒&醤油の発酵文化と“菌のパワー”にふれる
“日本酒発祥の地”島根県・出雲で、酒&醤油の発酵文化と“菌のパワー”にふれる
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“日本酒発祥の地”島根県・出雲で、酒&醤油の発酵文化と“菌のパワー”にふれる

2024年12月24日、ユネスコ無形文化遺産に「日本の伝統的酒造り」が登録されました。無形文化遺産は世界遺産とは異なり、技術や知識、行事といった形のないものが対象。そこで、日本酒発祥の地とされる島根県の出雲に、発酵研究家であり酵素シロップ作家の杉本雅代さんとトラベルライターの仁田ときこさんが訪問。温泉旅館「界 玉造」が主催する「手業のひととき 蔵元が伝える酒づくりの世界と日本酒の美味しい飲み方」プログラムに参加しました。

蔵人のカンだけに頼らない酒づくりで海外にも進出

“日本最古の美肌の湯”ともいわれる玉造温泉。そのなかにあってひときわ豪華な温泉宿「界 玉造」は全室露天風呂つき。客室に酒樽を置いて利き酒を楽しみながら、露天風呂に浸かれる

733年(!)に編纂(へんさん)された『出雲国風土記』には、「神々が集まって酒づくりをおこない、180日にわたって酒宴を開いた」という記述がある。古くからこの地では「出雲杜氏(いずもとうじ)」と呼ばれる杜氏集団が活躍し、独自の酒づくりが受け継がれてきたのだ。

昨年末、ユネスコ無形文化遺産に「日本の伝統的酒造り」が登録されたことから、日本酒人気は海外でもまずます拡大中で、輸出額はここ3年間に2倍近くまで増えたという。界 玉造では、日本酒の魅力にもっと触れてほしいと、蔵元の案内による酒蔵見学プログラムを実施中。日本の儀式や祭礼、生活に深く根ざした日本酒を五感で味わってもらおうと企画に取り組んでいる。

館内の日本酒BARでは地酒を飲み比べ。県内30蔵の42種の日本酒を取り揃え、産地別のセットや原酒のセットなど、スタッフおすすめの飲み比べも用意

島根近海では「蟹籠漁」とよばれる漁法で松葉ガニを獲る。蟹料理と出雲地酒のペアリングも楽しい

館内で出雲に伝わる伝統芸能「石見神楽(いわみかぐら)」を鑑賞。素戔嗚尊(すさのおのみこと)が大蛇を酒に酔わせて退治する演目「大蛇」を見ながら、神話の時代から出雲で日本酒文化が根づいていたことを学んだ

さっそく五感で日本酒に触れるため、松江市の「李白酒造」を訪れた。ふだんは見学者を受け入れていないが、このプログラムに参加すれば酒蔵を見学できるのだ。

松江の城下町にある李白酒造5代蔵元の田中裕一郎さん(左)と発酵研究家の杉本雅代さん。「日本酒も酵素も健やかな微生物で成り立つ世界。海や山の自然に囲まれ、空気がきれいな場所でこそ菌は増えていく」と杉本さんは話す

蔵人のカンだけに頼らず、現代的な技術と伝統的酒づくりを融合させている「李白酒造」。倉庫には海外へ輸出する酒がズラリと並んでいた。「われわれは早くから海外進出に取り組み、いまではアメリカやヨーロッパのレストラン、リカーショップで商品を扱ってもらっています。最近は花酵母をつかった酒づくりにも挑戦しているんですよ」(田中さん)。

100本もの木桶の中で、醤油のもろみがブクブクと!

これも出雲の発酵文化。100本の木桶(きおけ)をつかって代々伝わる醤油づくりを実践する「カネモリ醤油」の角の取れたまろやかな醤油は、全国の高級スーパーなどに卸される

この李白酒造の近くには、百本もの木桶で伝統的な醤油づくりをする1835年創業「カネモリ醤油」もある。蔵の天井や梁には「蔵菌」と呼ばれる酵母菌が染みつき、これが醤油の味に深みを持たせるという。

ここも見学させてもらったところ、木桶の中で、もろみがブクブク泡を出しながら発酵しているようすに杉本さんが感動。「出雲が発酵の国と呼ばれる理由がよくわかりました。海と山に囲まれ、水も空気もきれいで発酵がよく進む。湿度もいいから菌が健やかなんですね」(杉本さん)。カネモリ醤油には、この日もスイスからの見学依頼が入たっそうで、出雲の発酵文化がいかに世界から注目されているかがうかがえる。

醸造の神、林業・漁業の神、縁結びの神を祀(まつ)る「佐香神社」

最後に、他県ではなかなかお目にかかれない醸造の神様「久斯神(くすのかみ)」を祀る古社「佐香神社(さかじんじゃ)」に参拝した。ここでは毎年10月13日に濁酒(だくしゅ)をふるまう大祭がある。濁酒は神職が杜氏を務めて醸(かも)し、御神酒(おみき)として奉納するため、全国から酒や醤油、味噌をつくる職人たちが参拝に訪れるという。なかには、酒が縁で結ばれたカップルも来るそうで、さすが“ご縁の国の出雲”だとうならされた。

「界 玉造では、酒風呂に浸って体の芯から温まりました。私も日ごろは酵素シロップをお風呂に入れたりしていますが、肌のキメも細かくなって、やはり発酵の力はすごいんです。菌は体を内からも外からも守ってくれる存在。菌が住みやすい場所は、人も住みやすいんです。菌が多い場所で暮らすことは、それだけ菌に触れられるということ。出雲の人の肌が美しく、元気な理由がわかりました」(杉本さん)

日本酒発祥の地といわれる出雲をめぐりながら、発酵のエネルギーを感じて、身も心も健やかになってはいかがだろう。

界 玉造 https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaitamatsukuri/

photo & text/仁田ときこ

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