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つかい古されたボトルに、新しい命を! REUNIONの「霊芝ジン」プロジェクト
つかい古されたボトルに、新しい命を! REUNIONの「霊芝ジン」プロジェクト
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つかい古されたボトルに、新しい命を! REUNIONの「霊芝ジン」プロジェクト

「環境にもっともやさしい容器」として、いま、繰り返し何度もつかうリターナブルびんが見直されています。しかし日本では、ビールびんなどほんの一部でしか取り入れられていないのが現状です。そんななか立ち上げられたのが、ウェルネスブランド「REUNION(リユニオン)」のリユースボトルプロジェクト。「つかい古されたボトルに新しい命を吹き込む」取り組みをレポートします。

始まりは「びんを買うお金がない!」

「そんなお金はありません」

きっかけは、経理担当者が冷たく言い放ったひと言だった。

大志を抱く日本の若者数人が興した会社WWWE(東京都渋谷区)が展開するウェルネスブランド「REUNION(リユニオン)」。そのファーストコレクションとして、創業者のひとり、服部竜大さんがスピリッツの開発に取り組んでいたときのことだ。キーボタニカル(主になる植物)に国産の霊芝(れいし)を使用、環境再生型農業で植物を育み、製造によって排出したCO2を土壌に還すことでカーボンニュートラルに取り組むなど、地球と人に優しいニュースピリッツが完成しつつあった。

だが、そこに大きな壁が立ちはだかることに……。

「自分たちがモノづくりをしていくなか、お酒を詰めるボトルを買う段階で、経理の者から『そんなお金はありません』と怒られてしまいまして(笑)。霊芝という個性が強い特殊な素材の開発に、想定よりも何倍もコストや時間がかかってしまった。そのときすでに、最初に決めた予算をつかい果たしていたんですね。要するに、予算的に新しいびんを買うことができない状況に陥ってしまった」(服部さん、以下同)

びんが買えない。じゃあ、どうするのか――。

「チームのみんなで考えた結果、世の中には使用済みのびんがたくさん存在するのだから、それを洗ってつかえばいいじゃないかという結論にたどりつきました。びんのリサイクルはよく行われています。でも、目の前にびんがあるなら、わざわざ砕いて再生しなくても、それをそのままつかうほうがいい、と。そのほうが合理的だし、簡単なように思えたんですね」

日本では、ビールびん、日本酒の一升びん、牛乳びんなどがリターナブルびんとして繰り返しつかわれている。これらと同じように、「発売しようとしているジンにもリターナブルびんがつかえないか」と考えたという。

「環境に優しい」として見直されつつあるリユースボトル。リサイクルなしのワンウエイボトルと比較すると、80%もの温室効果ガス削減が可能になるというデータも

ついに協力してくれる洗びん業者が現れた!

チームは、さっそく行動を開始。全国の酒店やレストランなど空きびんが出そうなところや、びんの回収業者、びんを洗ってくれそうなところに問い合わせるものの、コストなどさまざまな面から「現実的ではない」と片っ端から断られてしまう。

「何社からもムリだと言われて、何度もあきらめかけました。それでも、チャレンジを続けていたところ、やっと『そういう取り組みだったらサポートしますよ』と言ってくださる会社が見つかったのです」

協力を申し出てくれたのは、明治時代からの老舗洗びん業者、トベ商事(東京都足立区)。環境トータル企業を標榜する同社の戸部昇会長は、服部さんたちがやろうとしていることに賛同、採算度外視でプロジェクトに参加してくれることになった。

リユースボトルプロジェクトに賛同し、びんの洗浄を受け持つトベ商事の戸部昇会長。「リユースを広めていこうという思いに賛同しています」

「戸部会長に『どうなるかわからないけれど、まずチャレンジしてみましょう』と言っていただき、自分たちも勇気をもらえました。びんの回収事業者さんにも協力していただけることになり、やっとプロジェクトが始まりました」

バーなどの協力で集めてきた空きびん。そのなかで、このプロジェクトにつかうのは500mlのものだけと決め、それらの商標権や意匠権、キャップに合う口径サイズなどを確認。リユースするのに法的な面をクリアしたもののなかから、デザインなどを見て「これをつかいたい」というびんを決定した。

「リユースすることに決めたびんは、これまで私たちが販売してきたボトルや私たちが尊敬する他社ブランドさんのものです。このボトルを、びん回収事業者さんや飲食店、バーなどから収集して、トベ商事さんの工場で洗浄してもらいます。その後、酒蔵で検査・充填、ラベリングを行って、やっとリユースボトルを使った製品の完成です」

回収されたリユースびんは、こうしたプロセスを経て新しい命を吹き込まれ、別の製品に生まれ変わるというわけなのだ。

リユースボトルプロジェクトに使用される空きびんは、オートメーション化された洗びん工場で洗われる。その後、熟練の職員によって汚れが残っていないか、びんの欠けなどがないかなどの検査がおこなわれる

「リユースっていいじゃん!」を世の中に広めたい

この10月は、経済産業省ほかリサイクル関係8省庁が定める「リデュース・リユース・リサイクル推進月間」だ。それに合わせてリユースボトルプロジェクトも本格始動する。その第1弾として、10月1日からリユースボトルを利用した「WELLNESS GIN w/REUSE BOTTLE」がオフィシャルブランドサイトで150本だけ限定販売される。

リユースボトルに詰められたWELLNESS GIN w/REUSED BOTTLE。少し傷があったり、形が異なったりするのもびんの個性。飲む人が好きなことを描き、彩れるよう、ラベルはあえて真っ白にした

「これはほんの手始めで、課題はまだまだたくさんあります。たとえば、現在リユースしているボトルは、なかなかラベルが剥がれないという難点があります。機械洗浄だけでは取れず、シール剥がしをつかってやっとベタつきがなくなる……。ビールびんなどリターナブルの仕組みがあるびんは、最初からラベルが剥がれやすいにようにつくられているのですが、多くのびんは繰り返しつかうことが想定されていないのでラベルが剥がれにくいんです。ですからREUNIONでは、シールやラベル事業者の協力パートナーを募って、びん洗浄に適したラベル糊の開発や供給を呼びかけていきます」

日本茶をベースに日本酒や焼酎の国産酒でつくる和のカクテルを提供するバー「unknown」。味わいはもちろん、そのコンセプトに共感してWELLNESS GINを扱っている。写真はオーナーバーテンダーの大場文武さん

unknownでは、WELLNESS GINをつかったオリジナルカクテルを楽しめる。写真は、煎り番茶とキナと呼ばれる苦い酒を加えたカクテル。スパイスとして使われた山椒がピリリと効いている

リユースボトルプロジェクトを軌道に乗せていくために、同社ではさまざまな業界に賛同を求めて声をかけ続けている。飲食店やバーなど空きびんが出るところ、びんの回収事業者、洗びん事業者のほか、他ブランドや行政にも呼びかけているという。

「まだまだ規模は小さいですが、自分たちの取り組みによって、世の中に『リユースって、いいじゃん!』という空気感が漂うようになれば、どんどんいろいろな人や企業が参入して、さらにリユースが広がっていく。そんな想いで、このプロジェクトにチャレンジしているのです。社会全体にリユースボトルのシステムをつくることも、非現実的ではないと思っています」

text:佐藤美由紀、photo:藤谷清美

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