100%ソーラーエネルギーで運営されるフェス「中津川THE SOLAR BUDOKAN」は今年も大盛況!
2023年9月23日から2日間、岐阜県中津川公園内特設ステージで開催された「中津川THE SOLAR BUDOKAN」。100%ソーラーエネルギーで会場運営に関わる全電源をまかなう音楽フェスの先駆けです。2012年に日本武道館で大成功を収め、翌年からは日本の野外コンサートの発祥地・中津川などで開かれてきました。同フェスの意義などについて、主宰であり、ファンクロックバンド・シアターブルックのフロントマンでもある佐藤タイジさんに伺いました(後編)。
なぜ、2023年のテーマが「ジャーナリズム」なのか
「THE SOLAR BUDOKAN」では毎年テーマが設定されており、2023年は「JOURNALISM(ジャーナリズム)」。同フェスではトークセッションもおこなっていて、9月23日には社会学者の宮台真司さんらが登場。「ジャーナリズムと日本の政治」というテーマが展開された。ジャーナリズムをテーマに据えた意図をタイジさんに聞いた。
写真はタイジさんの中学時代の同級生で、日経ナショナル ジオグラフィック写真賞2013グランプリを受賞した風景写真家・宮武健仁さんの作品「桜島」
「日本の報道の自由度ランキングは世界68位。先進国のなかではかなり低く、世界から警鐘を鳴らされていることを意味します。その理由のひとつは、日本で報道に携わる人間が、権力におもねっているから。その結果、真実を求める市民一人ひとりのジャーナリズムが減退しているのではないかと思うのです。いまは、利潤を追求する経済活動と、報道が一緒くたになっているように感じます。中津川THE SOLAR BUDOKANには、本来のジャーナリズムをリスペクトする人、応援する人たちが集うようにしたいんです」(タイジさん、以下同)
ファンクロックバンド・シアターブルック。写真真ん中が佐藤タイジさん。「日本の教育のあり方にも疑問を抱く」と話す
「ロックフェスは社会実験の場。ここから将来の夢を描ける」
タイジさんによると、「ロックフェスは社会実験の場」。2011年THE SOLAR BUDOKANの開催発表後、実現に向けてまず相談したのが「FUJI ROCK FESTIVAL」の「Gypsy Avalon」ステージ担当者だった。Gypsy Avalonは、2011年の東京電力福島第一原発の事故を受け、電力すべてを太陽光発電でまかなっていた小さなステージだ。
「当時は、武道館でおこなうような大きなイベントを太陽光で動かす発想は誰にもなかったよう。すべてを太陽光エネルギーでやりたいと言うと、最初は皆から『お前はアホか!』と返されました。結局は、相談した全員が協力してくれたのですが(笑)」
FUJI ROCK FESTIVALは1997年の初開催以来、自然との共生を掲げ、参加者にごみの徹底分別を求めるなど、さまざまな取り組みを実践してきたフェスだ。
タイジさんは、中津川THE SOLAR BUDOKANは「再生可能エネルギーの賛成運動」だと言う。
2023年の会場のようす。晴天に恵まれ、会場はピースフルな雰囲気に包まれていた
「人は、未来について考えると幸せを感じるそうです。10年間このフェスをやってきて、『ソーラーエネルギーで日本全体の電力をまかなえるのではないか?』と思うようになりました。この想いによって将来への展望を描くことができ、未来の目標地点が見えることで幸せを感じられる。何よりソーラーパネルがずらっと並んでいる景色はかっこいい! そんな場所でかっこいいバンドが演奏していて、子どもたちが笑顔でいる。このフェスには夢や希望があるんです」
出演者たちについても思うことがあるようだ。
「日本では、芸能人などが政治について発言すると叩かれてしまうのが不思議なんです。テイラー・スウィフトをはじめ、世界中のミュージシャンは支持する政治家について自由に語っています。日本のミュージシャンにも、社会に対する関わり方にはさまざまな形があることを知ってほしい。せめてこのフェスに集まるミュージシャンには、自分の意見を遠慮なく言ってほしいんですよ。権力におもねるような生き方ではなく、ちゃんとロックでいてほしいと思います」
ロックとは、サウンドではなく概念。そんな気持ちを、このフェスでつないでもらいたいという。
2023年のラインナップ。蓄電池は通常の電気と比べてノイズが生じないため、演奏がクリアに届くというメリットが。このことも、出演アーティストや参加者が再生可能エネルギーに興味をもつきっかけになっている
2022年、同フェスは環境省の主催でおこなわれ、環境と社会をよくする取り組みを表彰する「第10回グッドライフアワード」で「環境大臣賞 NPO・任意団体部門」を受賞した。
「別にアワードが欲しかったわけじゃねぇけど、くれるならもらっておきます、みたいなスタンス。いろいろな意見があるなかで、賞をもらえたことで再生可能エネルギーへの見方を変えてくれる人もいるかなと思いますし、みんながこのフェスに遊びに来たいと思う理由は、いくらでもほしいですから」
いずれはアフリカで太陽光発電による緑化を
タイジさんが近年取り組んでいるのは「太陽のタイジ発電所」と称するソーラーシェアリング。福島県・矢吹町の耕作放棄地のソーラーパネルで電気をつくりつつ、「農業を併せておこなうことで、CO2排出量削減に貢献できたら」と、牧草を育てている。
「西アフリカ・セネガル出身のミュージシャン、オマール君が、今回のフェスに参加してくれました。彼は世襲制でアフリカの伝統音楽を継承する家系『グリオ』の生まれで、現地でさまざまなつながりを持っています。彼がセネガルで『THE SOLAR BUDOKAN』をやりたいと言ってくれていて、実現に向けて動いているところ。『協力したい』と言ってくれている企業もあるので、まずは小規模なものから始めたいです」
じつはアフリカは、ソーラーエネルギー先進国だとか。
「いずれはアフリカで、より大規模にソーラーエネルギーによる緑化を進めていけたらいいですね。どの国の子どもたちも母国を誇りに思い、安心して笑顔で暮らしていけるように」
「こどもソーラーブドウカン」。子どもたちもみな、思いきり楽しんでいた
写真提供:中津川ソーラー実行委員会 text&photo:市村幸妙
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