Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

「サステナブルでないと生き残れない」ファッション業界で、技術革新が加速中!【後編】
「サステナブルでないと生き残れない」ファッション業界で、技術革新が加速中!【後編】
TOPIC

「サステナブルでないと生き残れない」ファッション業界で、技術革新が加速中!【後編】

これから私たちが選ぶ服には、サステナビリティの観点が外せません。それに応えるように、ファッション界では新たな技術革新とクリエイティビティが加速中。『WWDJAPAN』編集統括兼サステナビリティ・ディレクターの向千鶴さんがサステナブルファッションの潮流を解説します。

▼前編はこちら
▼中編はこちら

「多様な価値観を吸収するZ世代は、
環境と人権を両軸で見ている」

デジタルファッションと
フラットで偏見のないZ世代

いま注目しているのは、デジタルファッション。メタバース(インターネット上の仮想空間)の構築が進んでいて、「クリスチャン・ルブタン」は、メタバースの世界で新作を発表しました。デザイナー本人がアバターとして登場して、集まった人たちに直接新製品を発表するというもの。先日取材した「トモ・コイズミ」は、ドレスが素敵なのですが、ボリュームもあるので実際家には置きにくい。そこで協業開発を始めたのがメタバースでした。インスタにUPすると、本当に着ているように見えて面白い。今後インスタグラムの投稿の半分はデジタルファッションになっていくのではないかなと。身体的な制約もなく、好きな服を自由に着て、自己表現ができる。製造や廃棄の問題がないという意味ではとてもサステナブルだと思います。

そして、これからを担うZ世代。考え方がとてもフラットで偏見がないという印象です。あこがれの対象がひとつではないし、テレビのように与えられた情報だけではなく、自分で欲しい情報を探しにいく世代。SNSで大小かかわらず、いろんなコミュニティに所属している。それが互いに認め合う考えにつながっているのかなと。以前こんなことがありました。ファッションショーでネイティブ・アメリカンの羽根の冠をつかっていたんです。以前ならインスパイアされたのかなということで理解されていたのですが、Z世代の後輩は「私はネイティブ・アメリカンをフォローしてるからわかるけど、このファッションショーにはリスペクトがない、表現ではなく単なる文化の盗用でしかない」と。その言葉を聞いたときに、ああ私たちに見えていないものが見えているんだなと思いました。

多様な価値観がSNSを通じて自然に吸収できているZ世代。環境と人権を両軸で見ている子たちが多いのも特徴です。彼らを通じて上の世代も変わらなければいけない。既成概念にとらわれないZ世代が増えることで、ファッション業界にも新しい景色が広がっていくことを期待しています。

向さんが注目する6ブランド

doublet

デザイナー井野将之と村上高士によるブランド。メンズウェアを展開するが、ショーやルックに女性モデルを起用し、ジェンダーレスな雰囲気を持つ。キノコの菌糸を活用した人工レザー、マイリー(Mylea)を開発するインドネシアのスタートアップ企業と協業し、人工マッシュルームレザーのアイテムを発表。Doublet-jp.com

near.nippon

2000年、深山拓也さんと上島朋子さんが設立。以前からサスティナビリティを意識した取り組みをしてきたが、2021年よりさらに可視化して発信。余剰在庫をもたない仕組みづくりや、可能な限りサステナブルな材料でものづくりをおこなっていく。写真の服はリサイクル糸100%ポリエステルを使用、プリントは汚染水の出ない昇華転写という技法によるもの。www.near-nippon.com

TOMO KOIZUMI

東京2020オリンピック開会式で、国歌斉唱の衣装を担当し注目を浴びた。カラフルなラッフルドレスの素材は、世界最大級の素材展示会でも高評価を受けた、大阪の繊維メーカー「サンコロナ小田」による100%リサイクルのオーガンザ。デジタル上でドレスを着用できるバーチャルドレスも発表。Tomo-koizumi.com

KANAKO SAKAI

2022年スタート。現場では圧倒的に少ない女性の染職人と協業したタイダイや、絹織物の産地として1000年以上の歴史を誇る群馬県桐生市の機屋で織ったジャカード。それらを採り入れたコレクションは、日本の伝統的な美を大切にしながら産業の発展や技術継承という視点での循環型社会を目指す。Kanako sakai.com

TELMA

「ドリス ヴァン ノッテン」「イッセイ ミヤケ」で経験を積んだデザイナーの中島輝道が、2022年にスタート。西洋と日本の服装史からヒントを得た和洋折衷のアプローチが特徴。素材にリサイクルポリエステルやオーガニックコットンなどを多用。長く愛用でき、着る人に寄り添うタイムレスな服づくりに定評がある。Telma.jp

WRINN

2020年デザイナーの川島幸美さんがスタート。オーガニックコットンやテンセル、リヨセルの再生繊維、リサイクル素材など環境に配慮した素材を積極的に採り入れ、毎月2~3型のみ新型を発表するサイクルで展開。ごみ削減のために余分な在庫も持たない。写真は古着デニムとオーガニックコットンを使用したリメイクデニムスカート。wrinn.jp

PROFILE

向千鶴 むこう・ちづる
『WWDJAPAN』編集統括兼サステナビリティ・ディレクター。2000年にINFASパブリケーションズ入社。記者として主にデザイナーズブランドの取材を担当。『ファッションニュース』編集長、『WWDジャパン』編集長などを経て21年4月から現職。

●情報は、FRaU2022年8月号発売時点のものです。
Text & Edit:Chizuru Atsuta
Composition:林愛子

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!