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映画監督・深田晃司がオススメする「ジェンダー観を更新できる2冊」
映画監督・深田晃司がオススメする「ジェンダー観を更新できる2冊」
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映画監督・深田晃司がオススメする「ジェンダー観を更新できる2冊」

社会問題に対して、さまざまな方法で姿勢を表明している映画監督の深田晃司さんがジェンダー問題を考える、勉強する、身近に感じる本をご紹介。誰もが関係する大切な性別にまつわる問題について、多角的に読み解ける2冊です。

自分の無自覚な男性性に
気づかせてくれた本

何かに向けてカメラを回すことは、それに対するつくり手の見方が問われること。家族の風景を撮ったら、撮った人の家族観が映る。だからこそ、自分のなかの無意識の価値観に意識的にならないといけません。富岡多恵子さんの小説には、自分のなかのジェンダー観を揺るがされました。男性優位社会は長きにわたって続いてきていて、いまでは個人の考え方や生活の基礎に組み込まれてしまっています。

『波うつ土地』は、徹頭徹尾女性の目線で、男性という存在が相対化されていきます。主人公の視点を通し描かれた男性の姿には、ゾッとする醜悪さがあります。『〈悪女〉論』は、悪女というレッテルが、歴史的にも男性優位社会によって貼られたものだという事実が書かれています。ドラマ『本気のしるし』を撮ったときに、このプロローグをスタッフ全員に読んでもらい、何げなく使っている言葉の危うさについて意識を共有しました。

『波うつ土地』は1983年、『〈悪女〉論』は1992年に書かれた本です。この問題意識は古いものになっておらず、現代の問題として通じてしまう。MeToo運動などを経て、ジェンダーの問題が話題に上がることが増えてきましたが、日本のジェンダー観は、もっと更新していく必要があると感じています。

波うつ土地・芻狗
富岡多恵子

著者は、自身の女性性と向き合う作品を多く残した富岡多恵子。本書収録の「波うつ土地」では、ロマンや恋愛感情ではなく性欲だけで男性と不倫関係を結んだ、性別の概念にとらわれない女性を描く。講談社文芸文庫刊。

〈悪女〉論
田中貴子

国文学者である著者が、歴史的な文献を「悪女」という観点から批評する。3人の女性についての文学を読み解いていくと、どれだけ女性が男性社会からレッテルを貼られていたのかが顕在化されていく。紀伊國屋書店刊。

PROFILE

深田晃司 ふかだ・こうじ
映画監督。大学在学中に映画制作を学ぶ。2016年『淵に立つ』で第69回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞。20年に公開された映画『本気のしるし〈劇場版〉』では、現代のジェンダー観を浮き彫りにしていると話題になる。映画現場のセクハラやパワハラ問題に対して、自身の意志や制作態勢の改善を発表した。

●情報は、FRaU2021年1月号発売時点のものです。
Photo:Toru Oshima Illustration:Adrian Hogan Text & Edit:Saki Miyahara
Composition:林愛子

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