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100人前のパエリアも!「EARTHDAY SHIMOKITA」で、同じ釜の飯を食う
100人前のパエリアも!「EARTHDAY SHIMOKITA」で、同じ釜の飯を食う
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100人前のパエリアも!「EARTHDAY SHIMOKITA」で、同じ釜の飯を食う

4月22日はアースデイ。1970年にアメリカで始まった「なんでもない平日を、環境を考える日に」のムーブメントは世界中に広がり、いまや日本各地でもさまざまな「環境の日」にちなんだイベントがおこなわれています。そのなかで今回は、再開発で駅前の風景がガラリと変わった東京・下北沢のイベント「EARTHDAY SHIMOKITA(アースデイ・シモキタ)」の模様をお届けします。

小田急線の東北沢駅から下北沢駅を挟んで世田谷代田駅まで、線路が地下化されたことで誕生した全長1.7kmの緑地&施設「下北線路街」。昨年放映され、人気を呼んだドラマ『silent(サイレント)』のロケ地にもなったここは同作品の「聖地」とされ、多くのファンが巡礼に訪れている。その盛り上がりは小田急電鉄が公式に「silent ロケ地マップ」を配布するほどだ。 そんなロケ地のひとつ「BONUS TRACK」の広場と駐車場のほか、「シモキタのはら広場」「SHIMOKITA COLLEGE」など、下北沢駅南西口から代田方面に広がる3エリアでイベントがおこなわれた。

“旅する料理人”が伝えた「同じ釜の飯を食う」喜び

駐車場の人だかりを覗くと、巨大なパエリア鍋で料理をする女性がいた。“旅する料理人”こと、三上奈緒さんだ。彼女は全国各地の生産者を訪ねては、そのとちの食材をつかって焚き火料理をしているという。この日は「同じ釜の飯を食う。森・里・ジビエ。100人で作る焚き火の食卓」と題したコミュニティランチ会を開いていた。

「コロナ禍で分断に拍車がかかり、閉塞感や孤独がぬぐえない世の中を何とかしたい」という三上さんの想いから、100人分の目玉焼き、ジビエ料理、パエリアなどを調理し、100人が“同じ釜の飯を食う”体験をする今回の企画が誕生した。

皿などの食器は、事前にネットで予約していた参加者たちが各自で持ち寄る。ごみを出さない、ゼロウェイストな暮らしを目指すアースデイ・シモキタらしい配慮だ。

長野県や山梨県で駆除された鹿の肉が、焚き火台の上で焼かれていく。参加者には、山梨県北杜市の養鶏場「ROOSTER」の平飼い卵がひとつずつ配られ、順番にパエリア鍋に割り入れていった。人数分の目玉焼きづくりだ。子どもたちは、「うまく割れるかな〜」「やべぇ、失敗しちゃった!」など大はしゃぎ。そんななか三上さんが、「あなたの卵は私の卵、私の卵はあなたの卵」と、みんなで料理して、食卓を囲む大切さを説いていた。

「コロナ禍では『(感染の危険があるため)他人が握ったおむすびなんて食べられない』ともいわれていました。でも料理は、人の手が入るだけでおいしさのみならず、何かの想いを巡らせるきっかけになります。この3年間、分断が進み、人の温かみや優しさを感じる場面が減ってしまいました。今回はみんなでパエリアをつくり、人間の営みの原点である『同じ釜の飯を食う』体験をしてほしいと、ランチ会を企画しました。日本の人口は約1億2000万人といわれています。いま、こうしてみんなと顔を合わせているのは素晴らしい奇跡なんです。出会いに感謝し、食の命に感謝して、生きる喜びを分かち合うことが大切です」

見知らぬ同士でテーブルを囲み、目玉焼き、長野県で獲られた鹿のバーベキュー、野菜パエリアを楽しむ。

「三上さんが下北沢でランチ会を開催するとのことで、いの一番に予約しました。お皿はふだん家でつかっているものを持ってきました。パエリアは絶品で、ワインが進んじゃいますね。心待ちにしていた甲斐がありました」(40代の男性)

「知人ファミリーに誘われ、一緒に参加しました。ジビエは臭みがあるのかと思っていましたが、口にしてみると意外に食べやすく、おいしくいただけました。ボリュームたっぷりで大満足です!」(50代の女性)

「家にあるお皿を持ってきて、家族で参加しました。子どもたちにとっても、自分で卵を割って、おいしいジビエやパエリアを食べてと、またとない体験ができたと思います」(30代の子連れ男性)

イベントは午前、午後の2回開かれ、ともに満員御礼の大盛況だった。

生ごみコンポストは発電もできる!

一方、シモキタのはら広場では、「キエーロづくりワークショップ」も開催されていた(上写真)。キエーロは、土と微生物の力で生ごみを分解し、「消せる」という木製のコンポストだ。4名限定という狭き門をくぐり抜けた人たちが参加し、古いリンゴ箱を再利用してのキエーロづくり体験していた。

「以前からキエーロ生活に興味がありました。今日つくったものは、自転車の荷台に結わえつけて持ち帰ります」(40代の女性)

「コンポストについてもキエーロのことも何も知らなかったのですが、実際につくってみるととっても面白い! 今後は生ごみ処理も、私にできるところから実践していきたいと思います」(50代の女性)

参加者は目を輝かせながら、それぞれ自作のキエーロを持ち帰っていた。

そして夕方4時からは同じ広場で、コンポストに関するトークイベント「微生物と暮らす ─ 森のコンポストのある日常」が開催された。登壇したのは、studio9%の高砂雅美さん(上写真右)と、NPO法人地球守の理事・小川彩さん(同・左)。

「私は、家で出るプラスチックごみを記録しています。食事管理の方法としてあるレコーディング・ダイエットを、ごみ削減に応用してみようと、『チャレンジ・プラスチックダイアリー』と題した日記を4年間つけ続けているんです。可視化することで、いろんな問題点や改善点が見えてくるので、とても役に立っています」(高砂さん)

ごみ日記を続けるなかで高砂さんが気づいたのは、ごみをゼロにすることの難しさ。そしてプラスチックごみだけでなく、生ごみの削減にも興味をもった。生ごみの80%は水分といわれる。それを手間をかけて燃やすことはムダが多いのではないかと。

「家で生ごみを循環させ、なるべく集積所に出さないようにしたい。そう考え、(小川)彩さんが先にやられていたコンポスト生活を始めようと思ったんです」(高砂さん)

だが、最初からコンポストづくりがうまくいったわけではないという。

「堆肥をつくるのはいいんですが、家庭では堆肥がどんどん増えてしまって処理に困りました。コンポストに生ごみを入れすぎて分解がなかなか進まなくなり、コンポスト自体をダメにしてしまったことも。たくさん失敗を重ねるなかで、一日に入れていい生ごみの量、その塩梅を見出していきました。いまでは(小川)彩さんとともに、堆肥を増やさず、室内でもコンポストができる方法を編み出して実践しています」(高砂さん)

それはいったい、どんなものなのか。小川さんが話を引き取る。

「私たちのコンポストに入っているもののうち半分は炭なんです。炭は多孔質なので空気中の水分を調整する作用があり、生ごみを分解する微生物の住みやすい環境づくりに最適なんです。日々家庭で出る生ごみをどう循環させ、つかい続けるかを意識しているので、私たちはこれを『森のコンポスト』と名づけました」(小川さん)

小川さんは、「日本の都市部では、ごみは収集されてすぐ見えなくなるので、どのように処理されて、どれくらい環境に負荷がかかるのか、問題点に気づきにくい」と語る。

「昔は生ごみを土に栄養として還していた。そう考えると、ごみを焼却してCO2を出すより、コンポストを用い、炭素を土に還して循環させるほうが、地球環境にとってよいと感じています」(小川さん)

昨年春、高砂さんはニソール社の「N-Energy 植物発電体験キット」を取り寄せてある実験をした。

「このキットは、植物の根から出る糖や微生物から発生する電子を電極に集めて発電するというもの。それなら、ひょっとしてコンポストにも反応するんじゃないかと」

そう考えた高砂さんが同キットを自宅のコンポストに入れたところ、電球に灯りがついたそうだ。クリスマスツリーの電飾は、この「コンポスト発電」で点灯させたという。

コンポストが、あらたな自然エネルギーとなる日が来るのか。次回のアースデイ・シモキタでは、その可能性について、新たな発表があるのかもしれない。

取材・文/古田島大介  写真/Kousuke Shimasaki

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