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生産者を守るだけじゃない! 環境破壊や気候変動にもアプローチするフェアトレード
生産者を守るだけじゃない! 環境破壊や気候変動にもアプローチするフェアトレード
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生産者を守るだけじゃない! 環境破壊や気候変動にもアプローチするフェアトレード

フェアトレードは、貿易の仕組みを公平・公正にすることで、サステナブルな世界の実現を目指す取り組みです。貧困や飢餓、児童労働、強制労働などの人権侵害から途上国の人々を救う支援になるというのはわかりやすい例。でも、実はそれだけではありません。フェアトレードは、地球温暖化による気候変動や環境破壊の問題にも貢献する取り組みでもあるのです。

――前編はこちらーー

2023年キャンペーンのテーマが「環境」になったワケ

毎年5月は「フェアトレード月間」とされ、世界中でフェアトレードに関するイベントが催されている。前編で紹介したように、日本でも2021年から「ミリオンアクションキャンペーン」が開催され、2023年5月には3度目のキャンペーンが展開中だ。

さて、そのキャンペーン、消費者の1アクションが1円となって途上国の生産者に支援金として送られる。今年のキャンペーンのテーマは「環境」。テーマに沿った形でお金がつかわれるよう、寄付金の送付先も絞り込まれているという。

フェアトレードの認証ラベルがついた商品の数々。コットン製品やコーヒー、チョコレートなど、生活に身近なものばかりだ

「フェアトレード・インターナショナルのメンバー組織である中南米生産者ネットワークを通して、途上国の生産者組合へ寄付金として届けることになっています。そして、その寄付金は、今年のキャンペーンテーマのひとつである環境に関する取り組み、気候変動基金として、各生産者組合が実施する事業に充てられます」(フェアトレード・ラベル・ジャパン事務局長・潮崎真惟子さん)

国際フェアトレードの認証ラベルは、その原料の生産から輸出入、加工、製造にいたるまで、経済、社会、環境の3つの柱からなる国際フェアトレード基準を満たしていることを条件に、製品に貼ることが許される。環境基準には、土壌や水源の保全、環境に配慮した適切な農薬の使用などが挙げられ、オーガニック栽培も奨励されている。

「フェアトレードは環境への効果も大きいといわれています。その一方、温暖化などの気候変動で、生産者が大きな影響を受けているのも現実。たとえば、コーヒーの主要産品『アラビカ種』の栽培に適した土地は、気温の上昇、湿度の変化、降雨量の減少などによって、どんどん減っているのです」(潮崎さん)

キャンペーンのキックオフイベントでは、ブラジルで代々コーヒー農園を営むパウロ・フェレイラ・ジュニアさんも参加。フェアトレードに出合って人生が変わったという彼は、生産者ネットワークのマネージャーとして活躍している

アラビカ種の栽培地は、2050年には50%も減少してしまうとの予測もあり、「コーヒー2050年問題」といわれているほど。

「生産者さんは、こうした問題に対応すべく、従来の条件を備えた土地でなくても栽培できるように栽培方法を工夫したり、自然災害のリスクを減らすために栽培する農作物の種類を増やしたりという対策を取っています。異常気象が発生したとき、ひとつの作物しかつくっていなければ、収入がゼロになってしまうかもしれないですからね。このように生産地では、気候変動の影響を考えながらいろいろな対策を取っていますが、まだまだ追いついていないのが現実。そこで、今回キャンペーンのテーマを環境とし、気候変動対策に寄付金をつかってもらおうと考えたのです」(潮崎さん)

栽培地が減るということは、生産量も減少するということ。値段が跳ね上がるだけならまだしも、おいしいコーヒーが飲めなくなってしまう可能性だってある。コーヒー好きには由々しきことだろう。そう考えると、自分に身近な問題として、ワンアクションが起こせるのではないだろうか。

世界中のあらゆる事象は、ぜ〜んぶつながっている!

「ミリオンアクションキャンペーン2023」のキックオフイベントでは、トークセッションに参加したキャンペーンのアンバサダーを務めるジャーナリストの堀潤さんが、興味深い話を披露してくれた。今年の4月中旬、日本列島の気温が非常に高くなったことは記憶に新しい。その前週、インドやASEAN諸国の最高気温は40℃以上になり、その熱波が数日後に日本に届いたのだという。

「これ、ラオスやタイなどの森林がどんどん伐採されていることが大きな要因なのです。じゃあ、ラオスではどうして森林がなくなっているのか。いま、私たちは普通にタピオカドリンクを飲んでいますが、これと関係があります。タピオカの原料はキャッサバという植物ですが、世界中で急に需要が増えたため、大きな資本が外国からやってきて、地元の人とちゃんとした契約を交わすことなく、森林をどんどんキャッサバ畑に変えているというのです」(堀さん)

昨年に引き続き、アンバサダーを務める堀潤さん

環境破壊と不平等な取引──。いつも飲んでいるタピオカドリンクが、環境破壊の要因になっていて、おまけに生産地の辛苦のうえに成り立っているかもしれないと思うと、「環境や人を傷つけないタピオカドリンクを選びたい」という気になってくるのではないだろうか。

「いろいろなことが、ぜ〜んぶつながっているんですよ。たとえば、環境問題は戦争や紛争とも大きく関わっています。いま、西アフリカは武装勢力結集の地になっていますが、環境破壊や気候変動などで耕せる土地がなくなったことに端を発しているのです。耕せる土地が少なくなると、その土地が奪い合いになって紛争が生まれる。紛争が起こると人々は避難しなくてはならなくなり、耕作放棄地が増えて、ますます農作物の生産が減るのです。土地がなくなると、人々の働く場所もなくなり、仕事にあぶれた人たちは武装勢力にリクルートされて戦いに参加するという悪循環が生まれます」(堀さん)

さまざまな事象が複雑に絡み合っていることがわかるだろう。あまりにも問題が大きすぎて、自分は無力だと思うかもしれないが、個々の力は小さくても、フェアトレード商品を買うなどのアクションを起こす人が増えれば、それはいずれ大きな力になっていく。

キャンペーンのアンバサダーであり、エシカルコーディネーターのエバンズ亜莉沙さんは言う。

「フェアトレードも気候変動も、深刻になろうと思えば、いくらでも深刻になれるトピックです。もちろん、実際に起きている現実を知ることは大事。でも、そんなに深刻にならずに、今回のキャンペーンのように、楽しんでフェアトレードに関わっていくことも大切ではないでしょうか。それが持続可能な取り組みにつながっていくのではないかと思います。生産者さんがムリするのがよくないのと一緒で、消費者側も苦しい思いをするのでは続かないですよね」

背中をポンと押される言葉。これを機会に、あなたも一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

――前編はこちらーー

text:佐藤美由紀

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