未来を変えるため、あなたも「再生可能エネルギー」を取り入れてみませんか?
私たちのふだんの行動軸をベースにした、未来を変えるアクションをご紹介。毎日の暮らしでできることから新たな世界での体験まで、できそうなこと、やりたいことから探してみましょう。今回は、環境省 水・大気環境局水環境課長の川又孝太郎さんにお話しを伺いました。
日本には電力需要の
2.2倍のポテンシャルがある
最近よく耳にするようになった「再生可能エネルギー」。資源に限りのある化石燃料とは異なり、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなどの自然界に無限に存在するエネルギーのことで、発電時にCO2を排出しないため、環境にやさしいといわれている。日本での発電の割合は化石燃料による火力発電が76.3%(2020年度)と、再生可能エネルギーの普及は道半ばだが、実は電力需要の2.2倍ものポテンシャルがあるとの試算もある。
「ポテンシャルの多くは風力と太陽光で占めており、洋上での風力発電も有望です。太陽光はメガソーラーを設置するために森林を切り開くことが問題になっていますが、住宅などの屋根に太陽光パネルをつけるだけでも相当の電力をまかなうことができます。また、日本では荒廃農地も増えているので、そこを活用することも考えられます」
再生可能エネルギーを使うと、環境、経済、社会すべてにメリットがある。
「環境面では気候変動を抑える効果があります。また、化石燃料を購入するために毎年約20兆円が海外へ流出していますが、再生可能エネルギーを増やせば、国内で経済を循環できます。再生可能エネルギーのポテンシャルは地方のほうが高いので、都会から地方へお金の流れができ、地方創生に貢献します。社会的なメリットとしては、災害時の電力供給が挙げられます。屋根に太陽光パネルがあれば停電していても電気が使えますし、蓄電池があれば夜間も安心です」
最近では0円ソーラーと呼ばれる仕組みもあり、初期費用をかけずに太陽光パネルを設置することも可能だ。事業者が一定期間(おおむね10年間)保有し、住宅の所有者は使用した分の電気料金を支払うが、一定期間経過後は、無償譲渡されるというもの。リース形式もある。また、太陽光パネル導入以外にも、電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えたり、住宅の断熱性を高めたり、高効率の設備を取り入れたりすることで消費エネルギーを減らすことも、併せて検討したい。
CO2を排出しない
ゼロカーボン・ドライブを
電気自動車(EV)やプラグインハイブリッドカー(PHEV)、燃料電池自動車(FCV)といった、電動車も注目されているが、気になるのは航続距離や、充電ステーションの数。
「車種によっては600㎞は走れますし、軽EVでも150㎞程度は走れます。FCVはガソリン車と変わらない距離を走行します。また、ガソリンスタンドは減少傾向ですが、充電ステーションの数はそれに迫っています。ショッピングモールやコンビニ、ホテルなどでも充電できるようになりました」
充電の際に再生可能エネルギー由来の電気をつかうと、走行時のCO2排出量を年間1トン減らせるという。もちろん車を所有せずに、カーシェアに切り替えるのも手だ。
再生可能エネルギー①
太陽光パネルを取りつける
Q.導入コストは?
A.100万円前後
10年前と比べると半分くらいのコストで設置できるようになっており、一般的な一軒家では84万~140万円。
Q.CO2の削減量は?
A.年間1275kg/人
従来のエネルギーに代えて、太陽光パネルで発電された電力をつかえば、最大で年間1275kg/人のCO2を削減できる。
Q.一軒分の電力をまかなう規格は?
A.4.5kWが目安
一般家庭に取りつけられるパネルは3~5kW程度。4.5kWのパネルで発電すれば、一戸建ての年間消費電力5300kWhに相当。
Q.太陽光パネルのリサイクルは可能?
A.技術的には可能
ガラス板の再利用はもちろん、シリコンも再生させる技術が進んでいる。今後はニーズに対応して事業者も増えると予想される。
再エネスタート:ondankataisaku.env.go.jp/re-start/
再生可能エネルギー②
電気自動車に替える
Q.導入コストは?
A.EV車で220万円~
EV車は220万円~、PHEV車は290万円~、FCV車は650万円~が目安。補助金はEV車なら最大85万円出る。
Q.充電1回での航続距離は?
A.軽自動車で150km~
航続距離は延びており、EV車は150~600km。FCV車はガソリン車と変わらない航続距離を走れる。
Q.公衆充電器の設置数は?
A.全国2万ヵ所以上
充電ステーションは急速7985ヵ所、100V/200V 13615ヵ所、テスラ227ヵ所。水素ステーションは161ヵ所。
Q.充電時間は?
A.急速充電で30分~
急速充電器だと30~60分。フルにしなくても15分程度の充電でそれなりに走れる。普通充電器なら4~8時間でフル充電に。
GoGoEV:ev.gogo.gs/
水素ステーション整備状況マップ:www.cev-pc.or.jp/suiso_station/
ゼロカーボンドライブ:www.env.go.jp/air/zero_carbon_drive/
PROFILE
川又 孝太郎 かわまた・こうたろう
環境省 水・大気環境局水環境課長。東京大学工学部卒業。同大学院国際協力学博士課程修了。博士(国際協力学)。1994年より環境省に勤務。国際協力室長、在ドイツ日本国大使館参事官、環境計画課長等を経て2021年より水環境課長。2015~18年のドイツ赴任時に、再生可能エネルギーに注目し、その普及をライフワークとする。2021年より芝浦工業大学非常勤講師。
●情報は、FRaU2022年8月号発売時点のものです。
Illustration:Takashi Nakamura Text & Edit:Chihiro Kurimoto
Composition:林愛子
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