サステナブルな手仕事「刺繡」で、お気に入りをリメイク!
私たちのふだんの行動軸をベースに、未来を変えるアクションをはじめませんか? 暮らしのなかでできることから新たな世界での体験まで、やりたいことから探してみましょう。今回は、刺繡作家のatsumiさんに伺いました。
古びてしまった一着を
カラフルに繕って蘇らせる
何度も着るうちに襟や袖口やポケットがほころびてしまったり、穴が開いてしまったり。お気に入りの服ほど早く古びてしまうのは寂しいもの。しかし、刺繡でリペアすれば新たな服として長く着られる。
というわけで、初心者でもできる4つの簡単なステッチを、刺繡作家のatsumiさんにレクチャーいただこう。リメイク感覚で繕いを楽しむという考え方は、いま話題のダーニングと同じ。刺繡はサステナブルでクリエイティブな手仕事なのだ。
用意するもの
刺繡糸、刺繡針、刺繡枠、糸切りばさみ。糸は刺繡する生地に合わせて選ぶ。布帛には刺繡糸、ニットや靴下には毛糸を選ぶ。毛糸の太さは、刺繡するアイテムの糸と揃えるのが基本。
靴下やセーターの袖などに施す場合は、ダーニングマッシュルーム(右)があると便利。
ウィービングステッチ(ダーニング)
いわゆるダーニングと同じステッチ。毛糸を使えばニットや靴下に応用もOK。
1. 生地を刺繡枠で固定し、ほころびや穴が広がらないように、その周りをぐるりと一周並縫いしておく。刺繡をする範囲を決めて、四角いガイドラインを描く。
2. 最初に縦糸を張る。左のガイドラインの少し内側からスタート。下のラインの手前から並縫いを3針ほど、ガイドラインを跨いでさらに上にも並縫いする。
3. 続いて2列目は上から下に向かって、3列目は下から上に同様に。これを繰り返して縦糸を張っていく。右端もガイドラインが見えるように少し開けておく。
4. 横糸を張る。並縫いからはじめて、ガイドラインの中は縦糸を交互にくぐらせる。1段目と2段目はくぐる上下を反対に、織り上げるように繰り返してできあがり。
サテンステッチ
袖口やポケット口をぐるぐる巻くイメージで。
ほころびたところを細かいピッチでぐるぐると巻き込むように刺していくだけ。糸を強く引きすぎないようにするのがキレイに揃えるコツ。途中で色を変えても楽しい。
ブランケットステッチ
毛布の端をかがるのに用いられるステッチ。太い糸を使えば素朴な表情に。
1. 好みのピッチを決めて、目盛りのようにガイドラインを描いておく。右端の裏から糸を表に出してスタート。ひと目盛りめの上を刺して、目盛りの下から針を出す。
2. 表に出ている糸を針の先に掛けて、そのまま針を引けばひと目盛りが完成。その部分を新たな始点にして、目盛りの上を刺す→下から出して糸を掛けるを繰り返す。
3. 布端をステッチする場合の仕上がりは、先出のスウェットの襟元を参考に。目盛りの上から針を刺して、針先に糸を掛けてから引く、この手順を繰り返す。
スパイダーウェブステッチ
ほころびのほか、取れなくなった小さなシミや汚れをかわいく隠すのにも便利。
1. 最初に刺繡のベースになる土台を刺す。隠したいほころびやシミを中心として、3本のステッチを交差させ、六角形のアスタリスクのような模様の土台を作る。
2. わかりやすいように糸の色を変えて説明。土台の交差した部分から糸を出す。この場所を起点として、右側と左側の2本の土台の下をくぐらせてから糸を引く。
3. 糸を出した場所を新しい起点として、同様に左右2本の土台の下をくぐらせて引く、を繰り返す。1周で終えてもいいし、2~3周してボリュームアップもかわいい。
繰り返してできあがり!
PROFILE
atsumi あつみ
刺繡作家。多摩美術大学卒業後、アパレルメーカー等を経て活動をはじめる。個展やワークショップ、書籍の挿画のほか、刺繡糸ブランドototoitoも手がける。著書に『刺繡のエンブレム』(文化出版局)、『刺繡のはじめかた』(小学館)など。www.itosigoto.com
●情報は、FRaU2022年8月号発売時点のものです。
Photo:Yoshio Kato Text & Edit:Naoko Sasaki
Composition:林愛子