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住みたい場所を決めてから仕事を探す! 35歳で三重県・奥伊勢に移住した、元中学校教師の田舎暮らし【前編】
住みたい場所を決めてから仕事を探す! 35歳で三重県・奥伊勢に移住した、元中学校教師の田舎暮らし【前編】
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住みたい場所を決めてから仕事を探す! 35歳で三重県・奥伊勢に移住した、元中学校教師の田舎暮らし【前編】

移住への関心が高まっている昨今。「いつか仕事をリタイアしたら……」と夢を膨らませることはあっても、現役世代での移住となると、最初からムリとあきらめている人が多いかもしれません。でも、先にどこに住みたいかを決め、そこから仕事を見つけていく、という選択肢があってもいいのではないでしょうか。三重県の奥伊勢地方に移住し、アウトドア体験を提供する旅行会社「Verde大台ツーリズム」をスタートさせた野田綾子さんは、まさにそんな移住を実践した人。現役世代の移住についてとことん聞きました。

最初は移住するつもりはなかった

もともと愛知県の豊田市で中学校の体育教師をしていた野田綾子さん。移住のキッカケは、家を買おうと思い立ったことだったという。

「私も夫もアクティブでアウトドア好きで、自然豊かな場所に遊びに行ったりバイクツーリングをしたりするのが趣味でした。そうすると、やはり車やバイクを置けるガレージがほしいよね、趣味道具を置けるスペースもほしいよねとなって。マンションではなく一軒家がいいと思ったのですが、都市部の豊田市内で広い家となると、価格がかなり高くなってしまいます。そこで郊外なら、と範囲を広げて探し始めたんです」(野田さん、以下同)」

中学教員をしていたころ

最初は豊田市に通いやすい近隣エリアで探していた。が、次第に「隣接する長野や岐阜からも通えないことはない」と範囲を広げ始めたところ……。

「自然豊かな田舎のほうに行くと、景観がキレイで、安くて素敵な中古のおうちがいっぱいある。これはいいなと思ったんですけど、そうなると豊田市に通えるのか微妙になってきます。私は公務員という安定した職に就いていたので、周囲は定年まで勤めるのが当たり前という感覚でした。だから当初は仕事をやめるつもりはまったくなかったんですけど、夫は違っていました。『みんな、何となく仕事をしている場所で住むところを探すけど、住みたい場所から仕事を見つけてもいいんじゃない?』と言われて、はじめて『住む場所って、自分で選んでいいんだ!』と、ハッとしました」

雪化粧をした三重県奥伊勢の田んぼと里山

「どんな場所に住みたいか」を徹底的に考えた

それから、野田さんは仕事に捉われず、純粋に「どういう場所に住みたいか」を考えはじめた。

「すると、そういえば私は海が好きだったなとか、暖かいところが好きだったなとか、本来の自分をいろいろ思い出しました。自然豊かでも雪が多いところは合わないかもしれない、などと気づいて。愛知に住む家族や友だちのところへ車で行ける距離がいいとか、現実的なことも考えて移住地を絞っていきました。そのうえで『素敵な物件に出合えれば、移住すればいいか』とのんびり探していたところ、三重県の奥伊勢で今の家を見つけたんです」

それは築20年を超える木造物件だったが、野田さんが重要視していた趣味を楽しめる広いスペースがあり、何より窓から見える景色が素晴らしかった。

「いわゆる里山の風景ですね。リビングの窓から田んぼが見えて、その向こうには山が広がっていて! 今でも毎日癒やされています。家はリフォームできますが、景観は変えられない。だから『絶対ここに住みたい!』と決断しました」

野田さんが購入した家。都市部に比べると圧倒的に安かったという

意外とよかった段階的な移住

ただし、そこですぐさま引っ越しとはいかないのが現役世代だ。家を購入してから野田さんが実際に住み始めるまで、1年半の月日を要した。

「やはり仕事の調整がありましたので。引継ぎはもちろんですが、私は中学校の教師だったので、教え子たちの卒業を見届けたかった。だから夫だけが先に移り住み、私は購入から1年半後の春に、ようやく退職して奥伊勢に移ったんです」

この時間差移住が、意外に功を奏したと野田さんは振り返る。

「住みたいと思って決めた場所ではありますが、田舎暮らしの経験がなかったし、小さなコミュニティなので住人同士の距離感のイメージがない不安もありました。でも家を買ったとき、ご近所に挨拶に伺ったところ、『組入りしたほうがいいよ』『消防団に入ったほうがいいよ』といろいろ教えてくれました。

私の場合は1年半、たびたび通ってからの移住だったので、地域の人とも事前に知り合い、教えてくれたことに従って少しずつ体制も整えていけました。その地になじむための心の準備がしっかりできてから本格的に移り住めたのでラクだったと思います。これがいきなり移り住んでのスタートだったら、何もわからなくて大変だったかもしれません」

移住の決め手となった、家の窓から見える里山の景色。まさに息を飲む絶景!

草刈りも倉庫の管理もすべて自力!

とはいえ縁もゆかりもない土地への移住。そして、都市部での生活から、いきなりの田舎暮らし。戸惑いはなかったのだろうか?

「田舎のよさでもあるのですが、自宅の敷地面積が広い。そうすると定期的な草刈りなど、家の手入れもより大変になります。私たち夫婦はの趣味の道具を置くために倉庫を建てたり、私の事業で必要な土地を借りたり、シェアハウスを購入したりしたので、土地・建物の管理だけでも大変な労力がかかります。豊田市ではマンションに住んでいて、共益費を払えば管理会社がキレイに保ってくれるという生活をしていたので、そこの差を感じましたね。ただ私は外仕事が好きですし、汗をかく作業も好きなので、楽しみながらやっています。私がもし、『住む場所だけ変えてリモートワークをしよう』というタイプだったら、想定外だと感じたかもしれません」

アウトドア事業の道具を置いている倉庫兼事務所。奥にはシェアハウスと庭があり、草刈り作業や管理がけっこう大変!

“ポジティブな逃避”としての移住

都市での生活に疲れたから、仕事がイヤになったから……そんなネガティブな理由で移住をしていないからこそ、不便も楽しめているのかもしれない。

「現役世代で移住すると、忙しい都会での生活から逃げたかったのかと思われるかもしれません。でも私は移住を人生におけるプラスの選択にしたかった。もちろん、以前の生活で足りないと感じていたものを、移住で埋められるかもという思いもありました。私が移住したのは35歳で、仕事一辺倒ではなく、家族の時間をつくったり、趣味を楽しんだり、余白のある暮らしをしたいと思い始めていた頃でもありましたし。でも、私はあくまで『ちょっと暮らしを変えてみたい』というポジティブな気持ちで移住先を探し、移住ライフについて考えていましたので、すべてを新鮮に楽しめています。余白のない暮らしに疲弊しきってから移住を決めなかったことは正解だったと感じています」

移住した場所は海に近い山間地。大好きな海でカヤックツーリングを楽しみ、コーヒータイム

ーー移住後の仕事編に続きますーー

text:山本奈緒子

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