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商船三井の新船「三井オーシャンフジ」就航で、クルーズ文化は日本に定着するか?
商船三井の新船「三井オーシャンフジ」就航で、クルーズ文化は日本に定着するか?
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商船三井の新船「三井オーシャンフジ」就航で、クルーズ文化は日本に定着するか?

セレブやリタイヤした富裕層など、選ばれた人たちの遊び、というイメージだったクルージング。それが、庶民の身近な存在になる時代がやってきた……のかもしれません。日本の客船会社の超老舗、商船三井が新型のラグジュアリークルーズ船「三井オーシャンフジ」をデビューさせました。これまでは、長いものだと数ヵ月で数百万かかるというツアーも多かったものの、今後は、「仕事をもつ“現役世代”も、有給休暇を5日間とって土日と合わせれば参加できるような、10日以下のクルージングも充実させていきたい」というのです。

全室がオーシャンビュースイート!

左が三井オーシャンフジ、右が「にっぽん丸」。どちらも商船三井クルーズが所有する

昨年末から就航を始めた三井オーシャンフジ(以下、フジ)。その直前に東京国際クルーズターミナルで開かれた同船のお披露目会に行ってみたところ……まず圧倒されたのは接岸された同船の威容。これでも世界の海を渡るクルーズ船としては小型の部類だというが、並んで停泊する同じ商船三井クルーズ保有の「にっぽん丸」よりも、さらにひと回り大きい。全長198.15m、3万2477トンで、デッキ11(11階)まであり、客室数は229で最大458名のゲストを受け入れられるのだ。

フジのデッキ8(8階)にはプールとジャクジーが

それでは船内に入ってみよう(入り口はデッキ5にある)。まずはゴージャスなエレベーターで一気にデッキ8まで上がって、温水プール&ジャクジーのエリアへ。周囲にはデッキチェアが並び、われわれがイメージする“リゾート”“豪華クルーズ”の世界が広がっている(上写真)。こんなところで日がな一日、日光浴しながらシャンパンでもいただけば、まさにセレブ気分でリフレッシュできるに違いない。

スタンダードなベランダつきのキャビン(部屋)でこの広さ!

では実際にクルージングしたとき、もっとも長い時間を過ごす客室はどうか? と、これが、上写真のように高級リゾートホテルのような豪華さ、広さなのだ。この船は229室すべてがオーシャンビューのスイートタイプ。そのうち9割にベランダがついているというからすごい。朝、昼、夜問わず、部屋に居ながらにして海を眺め、グラスを傾ける……なんて夢のような日々も可能なのだ(妄想とはいえ、呑んでばっかり)!

部屋のバスルーム。シャワーブースもバスタブもピカピカ! シャワートイレ完備なのも日本人にはうれしい

海を望むブッフェレストランで世界各国の料理を

そして船内での楽しみといえば食事! 世界に数多(あまた)あるクルーズ船のなかでも最上級カテゴリー「ラグジュアリー」に属するフジには、メインダイニング(和食)の「ザ・レストラン富士」、世界各国の料理を揃えたブッフェ「テラスレストラン八葉」、ホットドッグやピザを出す「プールサイドレストラン&バー湖畔」、電源が豊富でリモートワークなど多目的につかえる広々としたカフェ「MITSUI OCEANスクエア」から、あの名シェフ・三國清三さんが監修し、コースディナーを提供する高級ダイニング「北斎FINE DINING」ほか、2つのバーまである。基本的に食事代はすべて乗船費に含まれているから、船内で食事に財布を持っていく必要はない(北斎のみ、追加料金が必要)。ルームキーさえ忘れなければいいのだ。ダイニングすべて合わせると800席以上あり、基本的に座席が空くのを待つということもないという。なんとも優雅ではないか。

三國シェフ(右)がスーパーバイザーを務める「北斎」

北斎では“三國シェフの味”を堪能できる

この日のお披露目会では、上記のなかから「八葉」でのランチを体験させてもらった。店に入るといきなり、世界各国の温かい料理がズラリ! スタッフの国籍はバラバラのようだが、皆、日本語で応対し、料理を勧めてくれる(下写真)。

温かい料理のコーナー。スタッフはおすすめ上手!

前菜にサラダ、フルーツ、パン、麺類、スイーツと種類が豊富。船尾にあるレストランなのでテラス越しに海も望める

で、いただいたのが下写真の品々。揚げたて天ぷらのコーナーには温かい天つゆもあり、日本のブッフェでは欠かせないカレーライスもしっかりラインナップされていた。中華、アフリカ料理、イタリアン……どれもこれも、味はかなり本格的でおいしい! なるほど、これなら長期クルーズでも飽きることはないだろう。

つい取りすぎてしまうが、味つけが上品でペロリとたいらげてしまう

「ここのジェラートは必食!」とスタッフが勧めてくれたが、あえてタルトとティラミスを選んでテラス席へ

有給休暇取得率の高まりを追い風に

ステージでのエンターテイメントやカジノ、カードルーム、フルサービスのスパ、サウナ、フィットネスジムなど、ずっと船内にいても他の楽しめるよう、施設も豊富なフジ。この4〜5月には横浜発着で韓国の済州島、博多、高知県・宿毛(すくも)を回る8日間で57万7000円〜のクルーズや、岩手の大船渡、北海道・函館、青森や島根県の浜田、韓国・釜山(プサン)などをめぐる12日間92万5000円〜の船旅ほかがラインナップされている。

クルージングの魅力は、なんといっても次の目的地まで部屋で寝ている間に移動できる“動くホテル”であることだ。列車や飛行機をつかい、各地のホテルに泊まるとなると、パッキングしては移動、さらにレストランを探したり予約したりと、かなり忙しい。ハイレベルな食事代や宿泊代、エンターテイメント代金のほとんどが乗船料金に含まれるクルーズは、実はかなりお得で合理的なのだ。

商船三井クルーズの向井恒道社長は意気軒昂だ

日本で唯一、複数のクルーズ船を持つ会社となった、商船三井クルーズの向井恒道・代表取締役社長は言う。

「世界のクルーズ人口は、コロナ前と比べて増えており、2027年には4000万人に達すると見られています。弊社ではクルーズ事業を成長分野ととらえて今回、投資しました。日本の労働者1人あたりの年次有給休暇取得率は8年連続で上昇しており、2024年に初めて6割を超え、62.1%となりました。これは昭和59年以降で過去最高の数字です」

だからこそ、働く“現役世代”にも顧客層を広げていきたいのだという。

「5日間の有給休暇を取れば、土日を合わせて9日間休めます。私たちは今後、10日間以下の短期クルーズもたくさん揃え、中期、そしてときには90日間を超える長期のものなど多彩なクルーズを用意していきます」(向井社長)

クルージングが私たちにとって“特別な遊び”でなくなる日は、意外に近いのかもしれない。

Photo & Text:舩川輝樹(FRaU) Photo:商船三井クルーズ(船外観2点、客室、向井社長)

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