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被災から立ち上がった宮城の「にしき食品」が、東京の小学生たち考案“夢のカレー”をレトルト商品化!【前編】
被災から立ち上がった宮城の「にしき食品」が、東京の小学生たち考案“夢のカレー”をレトルト商品化!【前編】
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被災から立ち上がった宮城の「にしき食品」が、東京の小学生たち考案“夢のカレー”をレトルト商品化!【前編】

小学6年生の児童たちが、レトルト食品の「にしき食品」はじめ、店舗づくりに定評がある「無印良品」の「良品計画」、パッケージづくりも大得意の印刷会社「TOPPAN」らプロと一緒に、企画段階からレトルトカレーづくりに挑戦! いったいどんなカレーができ、どのような学びを得たのでしょうか。東京の豊島区立豊成(ほうせい)小学校でおこなわれた、「1月22日はカレーの日! みんなで考えたカレーを食べよう会」を取材しました【前編】。

東日本大震災の被災体験談に、熱心に耳を傾けた小学生たち

にしき食品は1939年、宮城県仙台市で創業した(現在の本社は岩沼市)。当初は小さな佃煮店だったが、1975年からはレトルト食品の製造に乗り出し、同社のブランド「ニシキヤキッチン」は東北でその名を知らぬ者はいないとまでいわれる存在となった。いまや、仙台空港など宮城県内に4店舗、東京・自由が丘に1店舗を構え、120種類ものレトルト食品を製造する専門メーカーとなっている。

同社は2011年3月11日の東日本大震災で、工場が浸水するなどの被害を受けた。が、45日後には工場の稼働を再開。そんなとき、同社の在庫商品を買い取って被災地に寄付したのが良品計画だったのだ。

東北のレトルト食品メーカーと東京の小学校が、なぜつながったのか。きっかけは、豊成小学校の山本知範校長が、にしき食品が震災から復興したストーリーを伝えたテレビ番組を見たこと。山本校長はさっそく、2022年9月の5、6年生のSDGs特別授業として、にしき食品の菊池洋会長兼社長に講演を依頼した。菊地さんは講演のなかで、レトルト食品の製造方法やその歴史、東日本大震災当時の状況などを伝えた。児童らは菊池さんの言葉に聞き入り、菊池さんは、熱心に耳を傾ける児童たちの姿に感銘を受けたという。

「この子たちなら、きっとレトルトカレーのいいメニューを考えてくれるはずだと直感して、『カレーの案を送ってくれたら、実際にニシキヤキッチンの商品にするよ』と、つい約束してしまったのです」(菊池さん)

第1回の特別授業のようす。みんな前のめりで授業を楽しんでいる

その年の12月、にしき食品に届いたのは、100を超えるイラスト入りのカレーのアイデア。菊池さんのみならず、ニシキヤキッチンのスタッフたちは、それを見て胸を打たれた。「これは絶対に商品化したい」「児童らが提案してくれた、このカレーをつくりたい」。そんな想いが高まり、同社が豊成小学校に打診してプロジェクトがスタートしたというわけだ。

翌2023年6月から、同校6年生を対象にした食育の特別授業も始まった。ニシキヤキッチンとレトルトのパッケージ製造を手がけるTOPPANのスタッフたちが「先生」として教壇に立ち、全6回の授業がおこなわれた。

そして2024年初頭に誕生したのが「学校のカレー」と「アーモンドミルクバナナカレー」(下写真)。前者は、豊島区立豊成小学校の給食で出されているカレーの味わいを再現したもの。後者は、バナナをレトルトカレーに入れるという斬新なアイデアで、プロ中のプロであるニシキヤキッチンの商品開発担当者たちを驚かせた。この2種のレトルトカレーは数量限定で2024年2月にニシキヤキッチンと豊島区内の無印良品店舗で販売され、わずか3ヵ月間で8400食を売ったのだ。

2024年に商品化され、限定販売された「学校のカレー」と「アーモンドミルクバナナカレー」。パッケージにも工夫がこらされている

そして新学期がはじまった昨年4月。ニシキヤキッチン商品開発部に、新6年生たちから約70のレトルトカレーのアイデアが届いた。

「これまでのレトルトカレーにはない、素晴らしいアイデアばかり。子どもたちが本当に真剣に考えてくれたということが、ひしひしと伝わってきました」(ニシキヤキッチン 齋藤聡子さん)

新6年生の想いにも応えたい。ニシキヤキッチンのスタッフは再び立ち上がった。

「一生ものの体験になってほしい」

「パイナップル豚肉カレー」や「おもちーずカレー」など、ユニークかつおいしそうなアイデアがズラリ

2024年、豊成小学校度では、計7回の特別授業がおこなわれた。

第1回(6月7日) レトルト食品って何?/商品案を決めよう、無印良品ってどんなお店?

第2回(6月27日) 味の評価をしてみよう①

第3回(7月18日) 味の評価をしてみよう②

第4・5回(9月4日)  味の評価をしてみよう③/パッケージを考えよう

第6回(10月3日) パッケージと価格を考えよう

第7回(11月20日) 商品の売り方を考えよう

第8回(12月4日) パッケージについて学ぼう

第1回は「商品の決定」を目標に、ニシキヤキッチン商品企画部と良品計画のスタッフが共同で先生役となった。スタッフたちは、小学生らしい発想のユニークさを大切にしながら、「どうしたら実際に販売までこぎつけられるだろう」「これは自分が本当に食べたいものだろうか」「このカレーはいったい誰に食べてほしいのか」などと児童に問いかけ、アイデアを絞らせていった。第2〜4回はニシキヤキッチンが単独で授業を担当。第7回は良品計画の本社で実施された。最後の第8回は、TOPPANがパッケージについて授業をおこなったという。

子どもたちは「誰に食べてほしいか」を考えながら、真剣に投票に臨んだ

どのアイデアを商品化するか。児童たちの意見は大いに割れた。結局、6年1組は「バターりんごカレー」、2組は「親子カレー」をつくることに決まった。

「特別授業では、レトルト食品について学ぶとともに、レトルトカレーの企画から味の決定、パッケージデザインやポップの作成など、商品づくりの一連の流れに携わることで、子どもたちの創造性を育むだけでなく、ものづくりの楽しさや喜びを知ってもらうことも狙いです。一生ものの体験になってほしいという想いで、授業に臨みました」(ニシキヤキッチン 齋藤さん)

「子どもから大人まで食べてほしいと思ったので、(候補のなかから)バターりんごカレーに投票しました」(6年1組の児童)

「具材の量やルーのトロトロ感をどの程度にするか、甘みや出汁感、スパイスの香り具合など、少しでも違ってくるとバランスが変わってしまうので、それを決めるのが大変でした」(6年2組の児童)

こんな授業なら、私たち大人も受けてみたいものだ。

──【後編】は、できあがった商品を試食した「カレーを食べよう会」の模様をお届けします──

Photo:にしき食品 Text:市村幸妙

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