Do well by doing good. いいことをして世界と社会をよくしていこう

Z世代が「自殺」「誹謗中傷」「男女差別」を洋服にしたら、こうなった!
Z世代が「自殺」「誹謗中傷」「男女差別」を洋服にしたら、こうなった!
SOCIAL

Z世代が「自殺」「誹謗中傷」「男女差別」を洋服にしたら、こうなった!

Z世代が社会課題に対する考えを、古着をつかったアップサイクルファッションで表現する——。そんな風変わりな“コンテスト”が1月24日、東京・渋谷の文化服装学院で開かれました。同校は日本で初めてのファッション専門学校として1923年に創立、昨年6月には創立100周年を迎えた伝統校です。そのファッション流通過程1年生320人が52のチームに分かれて選んだテーマ=社会課題は、きらびやかな同校のイメージからは想像できない、シリアスなものばかりでした。

文化服装学院の1年生が52作品で競い合った

文化服装学院と「SHIBUYA109エンタテインメント」がコラボレーションして実施したこのイベント。同校の1年生たちが古着屋「西海岸」から提供された古着550着をつかって、それぞれのテーマに沿った洋服(アップサイクルファッション)52作品に仕上げるというものだったのだが……。「Z世代がいま身近に感じる社会課題」として52チームが選んだ社会課題は、ザッと挙げただけでも以下のとおりで、ファッションで表現するのはかなり難しそうなものばかりだった。

・戦争による子どもたちへの被害

・若年層のドラッグの使用と社会復帰

・動物の殺処分(ペット産業やアパレル産業)

・ひきこもりの現状とサポート

・世界の貧困国に関する教育格差

・アパレル産業による水質汚染

いずれも重いテーマだが、Z世代はこれをどう洋服で表現したのか。

子どものスマホ依存を憂う学生チームによるプレゼン。堂に入った説明だった

1月24日には、“予選”を勝ち抜いた14チームが審査員の前で公開プレゼンテーションをおこなった。たとえば上写真は「子どもの携帯使用率増加によるコミュニケーションの減少と能力の低下」をテーマにした「3組Aチーム」によるプレゼン。小学生の携帯所持率のグラフやイメージ動画などを紹介しながら、このカラフルな作品で、何を表現したかったのかを説明していく。

ぬいぐるみやオーガンジーで装飾された本作のコンセプトは「おもちゃ箱」。ときどきはスマートフォンや電子機器から離れ、おもちゃで遊んだり、体を動かしたりして、親子のコミュニケーションをとってほしいという願いを込めたものだそうだ。ヒザ下を覆うレッグウォーマーは、古着のティアードスカートを2つに切り分けてつくったものだという。たしかに、楽しげな作品だ。

第1位に輝いた1年4組Bチームのメンバーとその作品

優勝は「Z世代の自殺」を表現した“ハギレのドレス”

そしてこの日、審査員から第1位に選ばれたのが、「若者の自殺について」をテーマにロングドレスをつくった「4組Bチーム」だ(上写真)。

「Z世代の自殺の主な原因は、人間関係がうまくいかず、『自分は孤独だ』と感じてしまうことにある。でも、身近な人たち、家族や先生や友だちなど、自分を愛し、守ってくれる存在があること、あなたは決してひとりじゃないことに気づければ、自殺を減らせるのではないか。そこからテーマを『LOVE & PEACE』としました」

プレゼンでは、こう説明した同チーム。提供された古着を、すべて切り刻んでハギレにしてから、一着のドレスを組み上げたのだという。ベースのロングドレスは暗い色のハギレを組み合わせて「負の感情」を表現、肩口と脇のあたりには赤など明るい色をベースに、背後から抱きしめてくれる人、つまりバックハグする人の「愛」をイメージしたものを載せた。背中は大胆に開いており、腰部分には、中古スニーカーのハトメと靴ヒモ部分を切り取って使用している。

優勝チームのリーダーを務めた肥後空我さんが語る。

「古着を20着ほど切り刻んでは縫い合わせての繰り返しで生地をつくりました。時間がかかって大変でしたけど、チーム全員が協力し、なんとかつくりあげました。自殺の原因は、ちょっとした、小さなイヤな感情が積み重なって、大きな負の感情となることにある。それを伝えたかったのです」

準優勝は「芸能人への誹謗中傷」を考察、アップサイクルファッションで表現した1年4組のチーム

続く第2位は、4組Aチーム。テーマは「誹謗中傷」だ(上写真)。リーダーの落合瑚々さんは言う。

「Z世代が一番関心を持っていて、毎日目にするのがSNS。そこで繰り広げられる誹謗中傷について考えました。今回(古着屋の)西海岸さんからレザーの古着をいただいたので、傷がついたら元には戻らないというレザーの特性が、誹謗中傷で傷ついた心を表現できると思うに至り、(レザーをつかった)二面性を強調する衣装をつくりました」

とくに芸能界への誹謗中傷をテーマにしたというドレスは、表面はキラキラ輝いて見えても、裏は悪口などによってボロボロに傷ついている芸能人の姿を表現。前面はベロアワンピースの古着からつくったバラの花やラインストーンで華やかに、背中側は、トップスのベロア部分に穴を開けたり引き裂いたりして傷ついた心を、ボトムスのレザースカートには世界各国の言語で悪口を書き、SNS上での誹謗中傷を表した。かなり、考え抜かれたデザインではないだろうか。

「ラインストーンの一つひとつを手で貼ったり、前面のバラをつくるのに苦労しました。背面の悪口は、最初スプレーで描いたのですが、どうもイメージに合わず、チーム全員で知恵を絞ったすえ、ラメ入りのペンで描き上げました」(落合さん)

3位に選ばれた1年6組のチームは「差別」がテーマ

そして第3位は「男女差別」をテーマにした「6組Bチーム」(上写真)。チームリーダーは、春元結衣さんだ。

「私たちのなかで、何が一番大きな社会課題かといったら差別。そのなかでも、日常的に感じるのが男女差別です。男女差別の原因は固定観念や偏見。ですので、『当たり前になっていることが、実は当たり前じゃないと考えるきっかけになってほしい』との思いを込めた作品にしました。『男性はズボン、女性はスカート』という固定観念を織り交ぜたデザインのパンツをつくったり、靴を解体し、ビスチェという着るものに変えて固定観念を覆したりの工夫をしています」(春元さん)

上位3作品に限らず、少なくとも“最終選考”に残った14の作品(上写真)は、いずれも「なるほど、そうきたか!」と唸らせる素晴らしいものだった。これらは2月27日〜3月11日、東京・SHIBUYA109渋谷店のエレベーターホールなどで一般公開される。そこでは、各作品の解説動画も流されているので、お近くの方はぜひ!

Text:FRaU

Official SNS

芸能人のインタビューや、
サステナブルなトレンド、プレゼント告知など、
世界と社会をよくするきっかけになる
最新情報を発信中!