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大型ワシやハヤブサが舞い、奇岩がそびえ立つ! ドイツきってのパワースポット「トイトブルクの森」を歩く
大型ワシやハヤブサが舞い、奇岩がそびえ立つ! ドイツきってのパワースポット「トイトブルクの森」を歩く
NATURE

大型ワシやハヤブサが舞い、奇岩がそびえ立つ! ドイツきってのパワースポット「トイトブルクの森」を歩く

ドイツ北西部に広がるトイトブルクの森は、伝説と歴史、そして大自然が織りなす“物語の森”。ローマ帝国に勝利したゲルマンの英雄をたたえる勇壮なヘルマン記念像や、猛禽(もうきん)類の保護施設で空を舞うワシやタカの姿がその象徴です。森の奥へ分け入れば、古代から聖地として崇められてきた奇岩が天を突く神秘の風景に出合えます。豊かな自然と文化遺産が共存するハイキングコースを進んで、伝説と絶景を巡る旅へ出かけましょう。

入口に英雄がそびえ立つ、ヨーロッパの歴史を変えた森

「カール大帝の戴冠式」のきっかけをつくったドイツ西部のまちパーダーボルンから、車で北へ約30分。ノルトライン=ヴェストファーレン州とニーダーザクセン州にまたがるトイトブルクの森は、標高300〜400m級の緩やかな山地に沿って広がる、全長約100kmの巨大な森。かつてゲルマン連合軍とローマ帝国軍が激しく戦った歴史の舞台として知られる。紀元9年、ゲルマン名ヘルマンこと、アルミニウス率いるゲルマン軍がローマ軍を打ち破った「トイトブルクの戦い」は、ゲルマン世界がローマ化を免れたことから“ヨーロッパ史の転換点”とも呼ばれている。

ドイツはどのまちも、少し足を延ばせば森にたどり着く。都市と自然が寄り添い、日常の延長に豊かな森が横たわっている

いまトイトブルクの森を歩くと、往時の激戦の面影はまったく感じられない。奇岩群や静かな湖、豊かな緑が織りなす優しい風景が広がり、訪れる人々に安らぎを与えているのだ。この森は現在、ドイツ国内でも有数のハイキングコースとして大人気。歴史を感じるモニュメントや自然保護の取り組みとともに、ハイカーたちを迎え入れている。そんなトイトブルクの森の歴史や文化をより深く知るため、ガイドつきのツアーに参加した。

ヘルマン記念碑。肉眼で見るとその大きさに圧倒される

森の一角にあるグローテンブルクの丘へ歩いて行くと、巨大なヘルマン記念碑が現れた。緑の小径を進むにつれ、高台にそびえる勇壮な姿が間近に迫ってくる。高さ26.57m、台座を含めると全高53.46mのブロンズ像で、銅の重量は推定11.8tという迫力のサイズ。台座は、近くの丘で切り出された砂岩でつくられている。右手で高々と長剣を掲げ、左手には盾、左足はローマ軍の象徴である鷲の旗印を踏みつけている。翼のある兜(かぶと)を被り、勝利の雄叫びをあげながら遠くをにらむ姿は、「ここは俺たちの土地だ!」と宣言しているかのようだ。

建設は1838年に始まり、除幕式がおこなわれたのは1875年。当時は、ナポレオンとの解放戦争(1813年〜1814年)を経てドイツの民族意識が高まっていた時期だ。像は西向きに設置され、剣先はおおよそパリの方向を指している。ヘルマンがローマ軍を破った伝説を、フランスへの勝利の雄叫びと重ね合わせたのだろう。

ヘルマン記念碑展望台からの景色。トイトブルクの森の緑が圧巻だ

記念碑の内部にはらせん階段があり、4ユーロで台座部分の展望台まで登れる。周囲には展望台や遊歩道が整備され、訪れる人々の憩いの場となっている。筆者が訪れた日には、像のふもとにある広場でヨガクラスが開かれていた。

「この森は、観光資源であると同時に自然保護区でもあります。訪れる人々のマナーと理解に支えられて、地域住民は森とともに生き続けられる。市民と観光客の協力によって、森は守られているんです」(ガイドのギュンターさん)

入り口にあるミュージアム「ヘルマンネウム」は入場無料。最先端のデジタルアプリケーションが駆使された、ヘルマン記念碑の背景や物語が学べる体験型の施設なので、ぜひ立ち寄りたい。

森の道は平坦で整備が行き届いており、いたるところに道標が設置されている

トイトブルクの森は、ノルウェーからイタリアまで伸びる長距離ウォーキングコースと、ロンドンからモスクワまでを結ぶサイクリングルートが交差する地に位置する “森の十字路”。今回歩くのは、トイトブルク森の尾根に沿って続く全長156キロのハイキングコースの一部だ。

トレイル一帯を覆い尽くすセイタカアワダチソウ

あたりの風景は、まさにおとぎ話の世界。生い茂る木々の間を縫うように流れる清らかな川のほとりから、グリム童話の赤ずきんとオオカミの会話が聞こえてきそうだ。森の奥ではセイタカアワダチソウが群生し、鮮やかな黄色の花を咲かせている。ただしこれは、北アメリカ北部が原産の“侵略的な外来種”。いったん繁殖すると、多様性豊かな草原に戻すには長い時間がかかるそうで、その影響が懸念されている。

森を抜けたところに立つかわいらしいホテル&レストラン「Landhaus Hirschsprung」

スタートから1時間ほどで、カントリーハウス調のホテル兼レストランに到着。赤瓦の三角屋根が森の緑に映え、ハイカーを温かく迎えてくれる。レストランのメニューには、旬のキノコや野菜、ジビエなど、この土地ならではの恵みを活かしたメニューが並ぶ。ホームメイドのレモネードは疲れた体に染(し)みわたった。森の先に、こんな素敵なレストランが待っていたなんて! これもハイキングの楽しみのひとつだ。

スパイシーな鹿肉の煮込み料理。きのこ入りの濃厚なソースに洋梨の詰め物、自家製の卵入り手打ち麺バターシュペッツレが添えられていた 

ワシやタカのショーを見て自然保護に貢献

さらに森を進んで、ヨーロッパ最大級の猛禽類保護施設「アドラー・ヴァルテ・ベルレベック」を目指す。ここにはワシやタカ、フクロウなど46種200羽以上の猛禽類を保護しており、傷ついた個体に治療とリハビリを施して野生に還している。ヨーロッパでこれほど多くの猛禽類を観察できる場所は珍しく、年間来場者数は10万人以上にのぼるそうだ。

羽を広げると3m近くにもなる「ヒゲワシ」。まるでボスキャラのような貫禄だ

最大の見どころは、フリーフライトのデモンストレーション。一日2回、鷹匠(たかじょう)たちに操られたワシ、ハヤブサ、ハゲワシたちが、驚愕の飛行能力と、意外にキュートな表情を披露してくれる。鷹匠の合図で翼を大きく広げたワシが空高く舞い上がり、かと思えば、急降下してわれわれの頭上すれすれを滑空していく。観客たちは大歓声だ。

実は、こうした有料のショーは絶滅危惧種を守る取り組みのひとつ。収益は保護活動に還元され、訪れる人々は無邪気に楽しみつつ、自然保護の一端を担えるというわけだ。

「見せることは、守ることにつながっています」と施設のスタッフ

アドラー・ヴァルテ・ベルレベックから森を5㎞ほど進むと、突如現れるのが「エクスターンシュタイネ」の奇岩群だ。高さ40mほどの砂岩が天を突き破らんばかりに林立している。その岩肌には、古代の祭祀(さいし)につかわれたらしき跡や、中世時代に刻まれたと思われるキリスト像の浮彫が。ここは、古からの特別な“聖地”なのだろう。

奇岩上の展望台からの眺望は圧巻。岩肌には植物が根を張り、厳しい環境に適応する小さな命の営みが観察できる

ヘルマン記念碑からアドラー・ヴァルテ・ベルレベック、そしてエクスターンシュタイネまでをめぐる1日ハイキングツアーは、単なる森林浴でもなく、単純な歴史・文化体験でもない。地球の未来を考える、貴重な経験となった。

協力:ドイツ観光局、Photo & Text:鈴木博美

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