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富良野岳に広がる北海道「天空の花畑」で、身体デトックス!
富良野岳に広がる北海道「天空の花畑」で、身体デトックス!
NATURE

富良野岳に広がる北海道「天空の花畑」で、身体デトックス!

北海道の真ん中に広がる大屋根と称される、大雪山系。標高1912mの富良野岳は、その南部にそびえる名峰です。「花の百名山」のひとつとしても知られる富良野岳は、夏になると高山植物の花々が咲き乱れます。「山頂はまさに天空のお花畑」と耳にしたトラベルライターの鈴木博美さんが、絶景と癒しを求めて富良野岳を訪ねました。

美しい花々と変化に富んだ雄大な景色が望める、大雪山の最南峰「富良野岳」

荒涼とした場所に咲く孤高の花コマクサ。「高山植物の女王」と称される

北海道の中央に位置し、道内最高峰の旭岳を主峰とする大雪山系。大雪山国立公園は、トムラウシ山、十勝岳と南西に続く十勝連峰の山々をも含み、約23万haの日本最大の国立公園だ。この一帯は、古くからアイヌ民族がカムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)と呼ぶ高山植物の宝庫。とりわけ十勝連峰の南端に位置する富良野岳は花の百名山に選ばれており、夏は美しい花畑を目当てに大勢の観光客が訪れる。山頂からの展望も見事で、登山の魅力がぎゅっと凝縮されていることから、初心者から上級者まで、毎年多くの登山者が訪れる。ただし、夏はヒグマに注意! 私もアウトドアショップで熊撃退スプレーを手に入れ、さっそく富良野岳に向かった。

朝9時。平日でも朝9時の時点で登山口の十勝岳温泉駐車場は満車。道路脇にも車がびっしり並んでいた。

登山口からしばらくは森林帯が続く。20分ほど進むと、突如として、すり鉢状の荒涼としたヌッカクシ火口(安政火口:あんせいかこう)が現れた。一帯はいまも噴気活動が盛んなため、火山活動の監視対象となっている。このヌッカクシ火口の熱活動により、十勝岳温泉地域の温泉が生み出されたそうだ。

活火山ならではのダイナミックな景観に興奮しつつ、チョロチョロ流れるヌッカクシ富良野川を渡って対岸へ。振り向くと、左手斜面の中腹に夫婦岩と呼ばれる大小の2本の柱状岩、夫婦岩の上にある三段山の正面には火口壁の上に盛り上がる上ホロカメットク山が見えた。右手斜め上方には、手のような形の八手岩を望む。

エゾヒメクワガタ(写真左)、エゾコザクラ(同右)。日本では北海道でしか見られない小型で美しい花々だ

岩場を登りハイマツをくぐりながら、尾根からほぼまっすぐに高度を上げていく登山道を登ると、さっそく高山植物がお出迎え。オオバミゾホオヅキ、アズマギク、ミヤマキンバイ、キバナシャグナゲなど、可憐な花々たちがちょうど見ごろを迎えていた。

流水のない沢を登り、尾根を回り込むと、富良野岳が前方に見えてくる。「見なければよかった!」と思うくらい、まだまだ遠い道のりを実感。すると突然景色が開け、遠くにスタート地点と富良野の街並みが見渡せた。さらに黙々とひたすら登り、わずかに雪渓が残る沢を渡る。疲れを感じたがなるべく考えないようにし、足を一歩一歩前に出して、富良野岳に向かって歩く。

少し雲が上がって視界が悪くなってきた。ちょうどそのころ、下山するグループとすれ違い「山頂は何にも見えないよ。ガスに覆われて真っ白だし強風で寒くていられないよ」とアドバイスをもらう。ただし、現時点で天候が悪化する気配もないので、気を取り直してそのまま進むことにした。

富良野岳稜線分岐から望む上ホロカメットク山方面へ向かう縦走路、奥は十勝岳

いつの間にか霧は晴れ、標高が高いとはいえ強い陽射しが照りつけて暑い。吹き渡る風は心地よく、汗を吹き飛ばしてくれる。岩場を巻いて、400mほどの急な登りの木階段を息を切らしつつ登り切ると、山頂手前の「富良野岳稜線分岐」に到達した。

山すその奥には上ホロカメットク山や十勝岳の雄大な景色が広がる。登山口から約2時間半、短い休憩を挟んでひたすら歩いて来たが、想像以上に体力を消耗した。事前情報の通り、急登や難所もなく初心者でも安心して挑戦できる山ではあるが、途中の道は狭く滑落したら止める方法がないような急傾斜があった。

富良野岳は標高2000m近い。周辺には十勝連峰の山々が連なっており、急な天候の変化に対応できる準備が必須だ。

いよいよ、山頂へ続く最後の階段に到達!

途中に出会ったグループには申し訳ないが、青空が広がり周囲の山々や景色がくっきり見えた。本当に「山の天気は運次第」だ。澄みわたる青空と、その周囲に広がる緑の絨毯。点在する色とりどりの花々が、まるで一枚の絵画のように目に飛び込んでくる。稜線分岐1750mから山頂1912mにかけて、高山植物のお花畑を愛でながら、木の階段をゆっくりと歩く。「天空のお花畑」とは、まさにぴったりの表現だ。

富良野岳山頂付近にチングルマやイワカガミ、エゾルリソウなど可憐な高山植物が群生する

山頂手前、木階段の両端には、右にも左にも小さく可憐な花たちが咲き誇っている。風に吹かれて揺れる姿は「こっちを見て!」と言っているようで、その愛らしさに心を奪われる。花々の美しさは、富良野岳の登山の大きな魅力のひとつで、花の種類も数も多い。日常生活ではあまり花を愛でる機会がないが、山でじっくり観察してみると、心が癒されていくのを感じる。旭川空港でもらった大雪山花ガイドを広げ、花の名前を調べるのも楽しい。

富良野岳山頂から望む十勝岳

急な木階段の最後の部分を登りきると、そこは山頂。四方には雄大な山々が広がる。眼下には広大な原始ヶ原湿原、遠くには大雪山系や噴煙を上げる十勝岳連峰が堂々そびえ立つ。写真やガイドブックでは伝わらない自然の圧倒的なスケールと美しさに、ただただ感動するばかり。富良野岳は、咲き誇る豊かな高山植物、絶景のパノラマビュー、多様なランドスケープ、そして自然との一体感を楽める、魅力あふれる山だ。

下山後は十勝岳の恵み、良質の温泉に浸かりながら、登山の疲れを癒す(実はこの瞬間が一番の楽しみ)。富良野岳の日帰り登山は、十勝岳ジオパークの自然を存分に楽しめる素晴らしい体験だった。豊かな高山植物、美しい景色、充実感や達成感……。体と心を存分にリセットできた。

photo&text:鈴木博美

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