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ミュージシャン坂口修一郎が選ぶ「気候危機を学べる本&映像」
ミュージシャン坂口修一郎が選ぶ「気候危機を学べる本&映像」
LIFE STYLE

ミュージシャン坂口修一郎が選ぶ「気候危機を学べる本&映像」

難しい専門書でなくても、気候や環境の問題を多角的に学べる手段はたくさんあります。ミュージシャンでプロデューサーの坂口修一郎さんがオススメする本と映画を見てみましょう。

目の前の川や海から世界につながる
地球規模まで広がる想像力を持つ

気候危機の要因は、複雑に絡み合っています。方程式のように簡単に答えが出る問題ではない。だから何かひとつの事柄だけにアクセスするのではなく、いろいろなジャンルの本や映像から知識を得るようにしています。

鹿児島の屋久島に住んでいた詩人・山尾三省と、ビート・ジェネレーションを代表する詩人のゲーリー・スナイダーの対談を収めた『聖なる地球のつどいかな』は、もともと1998年に出版された本ですが、いまでも読むべき内容がたくさん詰まっています。たとえば、自然災害は市や県や国などの境界と関係なく起こる。だから、そういう区分ではなく、人間の生態や感覚、川の流域のようなまとまりで物事を捉えたほうが、理にかなっているのではないかというのを「バイオリージョナリズム」という言葉で説明している。世界は川や海によってつながっている、ここの水を汚すと必ずどこか別の場所にも影響があるという想像力を持つことは本当に大事だと思います。それによって、気候の問題にもいい影響力があるのは確かです。本が出た当時すでに、インターネットをつかって田舎で芸術活動をする人たちや、都市に一極集中するのではなく、分散して暮らしていくことについても書かれているのが興味深いです。

2008年には人類の半数以上が都市部に暮らすようになったといわれています。しかし、都市への一極集中にはさまざまな問題があり、過疎化した地域では教育格差が生まれ、行き届かない教育はさらに、貧困や自然破壊にもつながります。インドの教育学者スガタ・ミトラの取り組みを描いたドキュメンタリー『The School in the Cloud』では、そういった地域のスラム街の壁に、インターネットにつながったパソコンを埋め込んで、子どもたちがどうつかうかを社会実験している。すると彼らは、そこで興味を持ったことを自発的に学んでいくんですね。それまで情報に接する機会のなかった子どもたちが、ネット上につくられた学校でどんどん知識を得ていく。こうした学びのスタイルがあちこちにできれば、いま起きているいろいろな問題を、次の世代が解決していくためのヒントにもなると思います。

『聖なる地球のつどいかな』
ゲーリー・スナイダー、山尾三省/著

北アメリカと屋久島に住む詩人が、地球の生態系に沿う未来にあるべき生き方やコミュニティを考え、1997年に語り合った対談集。それぞれの詩も収録している。新泉社。

『The School in the Cloud 』

教育学者のスガタ・ミトラが提唱する新しい教育プログラムで、貧困地域の子どもたちが生き生きと学ぶようすが描かれる。監督/ジェリー・ロスウェル。

PROFILE

坂口修一郎 SHUICHIRO SAKAGUCHI
ミュージシャン、プロデューサー。1971年生まれ。ミュージシャンとして活躍する一方、イベントや場のプロデュースを手掛ける。

●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです(2022年10月)。
Illustration:Toru Ogasawara Text:Emi Fukushima Text & Edit:Asuka Ochi
Composition:林愛子

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