謹賀新年「仕事も家事も、ない混ぜに楽しむ」クリエイター夫妻の在宅ワーク術を学ぼう
新年あけましておめでとうございます。本年も当サイト、Do well by doing goodとFRaUをよろしくお願いいたします。さて、今日ご紹介するのは、働くことと生活することをあえて分けず、伸びやかに暮らす堀出さん夫妻。「家族はクラスメイト」という言葉の真意とは? 試行錯誤の末、理想的な職住一体にたどりついた“在宅ワークの達人”の暮らしぶりは?
パソコンに向かう時間を減らして「手書き」を重視
クリエイティブディレクターの堀出隼さんと料理家の堀出美沙さん。“食とデザイン”を軸としたクリエイティブユニット「ホリデー」として活動する2人は、子ども2人を育てる親でもある。仕事と家事、子育ての両立はさぞかし大変だろうと思いきや、「両立?」と笑いながら首をかしげる隼さん。
「わが家では家事も仕事もごちゃ混ぜなんですよ。2人で活動しているけど、あらたまって打ち合わせの時間を設けることはないし、子どもの送り迎えや洗濯の話と並行して、次のイベントのアイデアが飛び出す。仕事と生活に境界線がないのだと思います」
その言葉を象徴しているのが、リビング・ダイニングとキッチンを仕切るラワン材の壁。壁なのに、真ん中にはぽっかりと穴が空いていて、ダイニングテーブルに座るとキッチンで作業をする美沙さんの姿がよく見える。
「僕は子どもの前でも仕事をするし、彼女もよく台所で試作しています。2人ともパソコンに向かう時間はできるだけ少なくするようにしていて、僕の場合はノート3冊で仕事を管理して、アウトプットの一瞬だけパソコンとにらめっこ。基本はこのテーブルで働いているんです。家族はクラスメイトのようなもの。空間を共有して互いの状況を把握していれば、忙しそうなときはさっと手伝える。仕事と生活をムリに分けようとするから大変なわけで、一緒くたにすると豊かになることがたくさんあります」
たしかに、海外のオンラインミーティングでは、話している人の後ろを子どもが走ったり、飼い猫が画面を通り過ぎるハプニングを目にする。そして、それをミーティングメンバーが寛容に受け止めている印象もある。家では家らしく働けばいい。そんな大らかさが、これからの時代は求められるのかもしれない。
「私も会社員だったころがあるんですよ」と美沙さん。20代で勤めたファッション業界の仕事は就労時間も不規則な超ハードワーク。働き詰めで体調を崩し、飲食業界に転職した。
「印象的だったのは見習いとして入ったフランス料理店。休憩時間にスタッフが持ち回りで、興味があることを調べて発表する習慣があったんです。そこで自ら学ぶ面白さを知りました」
ファッション業界と同じく多忙だった見習い時代。それでも続けられたのは、働くことに主体的だったから。
「仕事も家事も自分の人生。当たり前のことですが、そう考えるようになったら、私はすごく楽になったんです。すべてが生きることの一部。そうした意識が、これからの時代はもっともっと強くなるんじゃないでしょうか」
PROFILE
堀出隼さん、美沙さん
隼さんはクリエイティブディレクター、美沙さんは料理家という肩書で、“食とデザイン”を軸としたクリエイティブユニット「holiday」として活動する。拠点は神奈川県の葉山。ケータリングなどのほかに、子ども向けのアートイベントを企画することも。
●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。
Photo:Eto Kiyoko Edit & Text:Yuka Uchida Composition:林愛子