“日本のマチュピチュ”徳島の秘境「祖谷の落合集落」で、茅葺き古民家宿に泊まる至福!
アメリカから来た東洋文化研究家が、美しさに惚れ込んで
アメリカ人の東洋文化研究家、アレックス・カー氏さんが初めて祖谷を訪れたのは1971年夏。「ここでは俗世から離れて雲の上の世界に入ったような気持ちになれます」(カーさん)と、神秘的で美しい自然が残る環境に惚れ込み、2年後の1973年に祖谷に一軒家を購入した。
「この美しい建物を後世に残していきたい」というカー氏の思いから、3度の修復を経て、宿泊施設篪庵となった。300年近く囲炉裏の煙に燻(いぶ)されて黒光りする太い桁(けた)と梁(はり)。その趣は残しつつ、床暖房や、最新の水回り、檜(ひのき)風呂などを設置し、宿泊施設としての快適さにもこだわった。
“日本のマチュピチュ”とも呼ぶべき幻想的な景観を持つ祖谷・落合集落。その山の斜面にへばりつくように点在する、8棟の茅葺き古民家宿からなる「桃源郷祖谷の山里」も、カーさんがプロデュースした。リノベーションされ、現代的な設備を備えた各棟からは、季節によっては雲海も望める。各棟のキッチンには冷蔵庫やレンジ、食器などがフル装備されていて、存分に料理の腕も振るえる。近隣の飲食店に郷土料理のケータリングもオーダーできるので、ぜひ活用したい。
300年の歴史を経た茅葺き古民家が快適な宿に
築300年の建物の縁側からは山々を一望できる。読書を楽しむもよし、ごろりと横になって昼寝するもよし。
木の香りで満たされたバスルーム。
水屋箪笥(みずやだんす)を改造したアイランドカウンターのあるキッチン。IHクッキングヒーターが導入されており、つかい勝手がよい。
三好市東祖谷釣井209 ☎0883-88-5290
8棟の古民家宿からなる「桃源郷 祖谷の山里」で絶景を愛でる
家具や食器にこだわったダイニング。美しい景色を眺めながらいただく料理は格別だ。
8棟のなかでも集落の上のほうにある「天一方」。祖谷渓の雄大な景観が眼前に広がる。
雨天時は、雲の中にいるのかと錯覚するほど。
三好市東祖谷落合403 ※受付事務所 ☎0883-88-2540
森の恵みを感じるサウナで温まったら、裏手の川へザブン!
「大自然の中で、心も体もデトックス」がテーマの、廃校を利用した複合施設「シモノロ・パーマネント」。ぜひ体験したいのは、北欧のサウナの考えを軸にした「谷のサウナ」だ。
セージ、ミント、ニッキといった季節のハーブを煮出したスチームを浴びる方式のサウナに入ると、たちまち清涼感のある香りに包まれ、深い森のなかにいるような感覚に。ときを忘れて自然の恵みを全身で感じながら、心身を癒やそう。
サウナにつかわれる薪は、「森の恵みに目を向けてもらえるよう、間伐してつくっている」と語るのはオーナーの植本さん。
今後は、アロマトリートメントや薬膳なども採り入れていく。
三好市池田町西山中塚1093 旧下野呂内小学校 ☎0883-70-0255
元・呉服店で暮らすように滞在する「4S STAY 阿波池田本町通り」
歴史ある阿波池田の町にたたずむ、築120年以上の呉服屋を改装した宿。部屋は独立したメゾネットタイプで、1階はリビング、ミニキッチン、2階が寝室となっており、高いプライベート性が保たれている。
地元のジビエ「阿波地美栄」と祖谷地域で昔から作られる固い豆腐「岩豆腐」の両方を味わえるコースも人気だ。近隣には、町の歴史を伝える資料館やソムリエが選んだジビエと相性のいいワインを揃える店もあるので、町歩きも楽しんで。
三好市池田町マチ2467-1 ☎0883-70-0166
築120年の農家民宿で昔ながらの生活を体験!「古民家やど 紺屋」
一日ひと組限定の農家民宿。国の登録有形文化財に指定されている築120年の元たばこ農家の主家を利用した茅葺き屋根の民宿は、天井や柱、梁などが囲炉裏で燻されて黒光りしている。
薪割り、火起こし、ごはん炊きなど、食のありがたみを感じられる体験や、お茶摘み、栗拾いなどといった農家らしい経験もできる。
余計なものがないからこそ感じられる、満天の星や囲炉裏の暖かさを味わって。
三好市東祖谷久保311 ☎080-6378-8984
平家落人伝説のある祖谷とは、どんな集落?
源平合戦に敗れた平家の落人が隠れ住んだとも伝えられる祖谷。多くの人びとを魅了してきた日本の原風景がここにある。
1000m級の山々の間を流れる吉野川支流の祖谷川、雨の多い気候のため緑濃く生い茂る原始林。四国のほぼ中央に位置する三好市の祖谷は、自然と人びとの暮らしが織りなす、日本の原風景に出合えるエリア。岐阜県飛驒の白川郷、宮崎県日向の椎葉村と並んで、日本三大秘境のひとつにも数えられている。
徳島阿波おどり空港から車でおよそ2時間と、ちょっと躊躇する距離だが、足を運ぶ価値は十分ある。重要有形民俗文化財の「祖谷のかずら橋」や、断崖絶壁に建つ「小便小僧の像」、急斜面に茅葺き屋根の民家や田畑が点在する奥祖谷の「落合集落」など、ユニークなスポットが点在しているので、くまなくめぐって満喫してほしい。せっかくなら宿泊して、ゆっくり非日常感を味わおう。
祖谷の旅で絶対したい3つのこと
太麺の素朴な「祖谷そば」を食す
昼と夜の寒暖差が激しい祖谷地方は、そばの栽培に適した地。祖谷そばは、平安時代に合戦に敗れて逃げてきた平家の一族が常食にしていたともいわれる歴史ある郷土料理だ。麺は小麦などのつなぎを使用せずにつくるため、太く短いのが特徴。祝いごとの席でも振る舞われるが、切れやすい麺は「縁が切れる」に通じると、婚礼では御法度なのだとか。
大歩危(おおぼけ)小歩危(こぼけ)でアクティビティ
四国山地の結晶片岩などが吉野川に削られ、2億年かけてできたという渓谷・大歩危、小歩危。彫刻のような巨岩や奇岩を船から堪能する「大歩危峡舟くだり」や、スリル満点のラフティングやキャニオニング、SUPなど、さまざまなアクティビティが用意されており、全身で大自然を感じられる。桜、新緑、紅葉、雪景色と、四季折々の景色も見どころ。
秘湯に浸かって至福のときを過ごす
逃れてきた平氏が入浴したとの伝説が残る「祖谷温泉」。日本が誇る秘湯のひとつとして、温泉ファンの間ではよく知られている。皮膚病や糖尿病に効果があるといわれ、肌をスベスベにしてくれる。点在する宿のほとんどで日帰り入浴を楽しむことができ、とくにケーブルカーを利用して行く温泉宿が人気。静寂のなかで、ゆっくり湯に浸かってリラックスしてみては。
写真:和の宿 ホテル祖谷温泉
▼徳島県美馬市のおすすめ宿につづく
●情報は、FRaU S-TRIP 2021年12月号発売時点のものです。
Photo:Eizaburo Sogo Text:Misako Tateoka
Composition:林愛子
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