在宅ワークの集中力アップ!オン・オフを分けるインテリアのプロの技
リモートワークのために快適な環境をつくっている方を訪ねました。今回、ご紹介するのは、暮らしと仕事はきっちりと分かれているほうがメリハリのある生活が送れる、という小針さん。通勤がなくなって生まれた時間がいい区切りに。試行錯誤をしながら辿り着いた理想的な職住一体とは?
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時間を区切ることで、一日にリズムを
2020年4月の緊急事態宣言を機にリモートワークが始まった小針千紘さん。インテリアコーディネーターとして、所属している会社に出勤していた日々が一変。嬉しい反面、困惑したのが、“通勤”がなくなったことだった。
「リモートワークを始めた頃は、朝の通勤から解放されたことを喜んでいたんです。でも、しばらくして気づいたのは、あの時間が仕事を始めるための“切り替えタイム”になっていた、ということ。家だとイマイチ集中できない理由が見えてきて、一日の時間の使い方を見直すことにしました」
押し入れをデスクにするメリットは奥行きが十分にあること。デスクトップのパソコンを置いてもまだまだ余裕があり、その奥にファイルケースや卓上引き出しを並べている
リモートワーク中も、通勤していた頃と同じ時間に起きていた小針さん。朝食後は始業時間までのんびりと過ごすことが多かったが、“切り替えタイム”を設けるために、家を出ていた時間になるとテレビを消すことに。
「そこから始業までの約1時間は、ソファでインテリア関係の本を読んだり、携帯電話で仕事にまつわる調べごとをしたり。パソコンを開くまではしないけれど、緩やかに仕事モードになれる工夫をしました」
昼の休憩をきっちり1時間とるのも小針さんのルール。自炊することもあれば、豆を挽いてコーヒーを淹れることもあるが、今は昼休みだと意識するだけでしっかり休め、午後もスムーズに集中できるという。
必要なのはメリハリ。なので、押し入れを活用したワークデスク用に、2脚の椅子を用意している。
「オフィスチェアは仕事が終わると別室にしまって、以前から愛用しているスポークチェアに置き換えます。キーボードなどのパソコン機器も出来る限りしまって、出したままにしません。些細なことですが、目から入ってくる情報に影響されてしまうので」
生活と仕事に“線を引く”。それが自分にとっての心地よさだと気づいた小針さん。一日が漫然と過ぎてしまいがちなリモートワークでは、自分で自分の時間割りをつくることが重要なのかもしれない。言い換えるとそれは、ひとつひとつの時間に向き合う姿勢だ。
「20代でデンマークにワーキングホリデーに行ったのですが、特に印象的だったのが“ヒュッゲ”という時間の使い方。ヒュッゲとは、ホッとできる時間やそこから得られる幸福感を示す言葉で、例えば家族での食卓も、“ヒュッゲだね”と意識すると、より心が温まる。不思議な感覚でした」
確かに、コーヒーを片手に過ごす休憩も「コーヒーブレイク」と名付けるだけで、なんだか有意義に。その前後の時間とのすみ分けも明確になる。
「私にとっては、昼休憩や終業後の夜がヒュッゲ。それがあるから、翌日も同じ部屋で仕事が頑張れる。空間の移動がなくなったからこそ、時間を区切ることが大切なんだと思います」
PROFILE
小針千紘
インテリアコーディネートショップ〈STYLICS〉のインテリアコーディネーターとして活躍。空間づくりのアイデアをまとめた個人のインスタグラムでは、等身大のインテリアの工夫を紹介している。
●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。
Photo:Eto Kiyoko Edit & Text:Yuka Uchida
Composition:林愛子
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