神々とイルカが棲むパワースポット「壱岐島」でワーケーションをしてみたら【前編】
長崎空港から飛行機で約30分、福岡県の博多港から高速船で約1時間とアクセスのいい壱岐島。島内には神社や小さな祠(ほこら)が1000以上もあり、島全体に神秘的ですがすがしい空気が満ちている。太古の昔から人々が畏れ敬ってきた自然と神々のパワーをもらいに、いざ壱岐島でアウトドア・ワーケーション!
焚き火と海風、満天の星。
イルカと一緒に眠るキャンプ
初めて旅する壱岐島。インターネットで下調べをしていたとき、目を疑う文言を見つけた。「イルカと一緒に眠れるキャンプ」。……え!?
壱岐イルカパーク&リゾートはイルカを間近で観察したり、一緒に遊んだりできるプログラムを開催しているリゾート施設。宿泊用のゲストハウスもあるが、イルカたちが泳ぐ入り江のすぐ脇にテントを張って眠れるプランもあるという。さらにキャンプサイトはフリーWi-Fiはもちろん、テーブルや椅子、ポータブル電源といったワーク環境も整備されていて、青空オフィスにもなるという。
海や空があるだけでも心地いいのに、イルカくんまで寄り添ってくれるなんて。こんな癒やしの洪水みたいなワーケーション、全国を探しても壱岐島にしかない!
パークがあるのは島北端の勝本町。天然の入り江を整備して作られた海浜公園で、園内中央に海へと続くイルカたちのプールがある。海面を覗き込んでみると「やあ!」という感じでイルカたちがぴょこぴょこと顔を出してくれる。
「これからトレーニングなんですけど、みんな早く遊びたくて仕方がないんですよ」とパークの高田佳岳さん。この人こそ、イルカキャンプ&ワーケーションを発案したアイデアマンだ。もともと大のキャンプ好き。キャンプ未経験の人でも気軽に体験してほしいと、手ぶらで泊まってBBQも楽しめるプランを始めた。
太陽が西に傾き始めるころ焚き火が始まる。BBQ用の炭火が安定したところで今夜の夕食が登場。本州ではめったにお目にかかれない壱岐牛に大きなサザエ、地の野菜やきのこもたっぷりある。「途中、産直で買った生牡蠣があるんですけど……」と言ったら、「それもどんどん焼いちゃいましょう!」と高田さん。
パークのすぐ側の堤防からでも巨大なアジ(ジャイアントアジというらしい)がポンポン釣れるそうで、お客さんのなかには自分で釣り上げた魚を焼いて食べる人もいるのだとか。肉も魚介類も野菜も、余計な調味料なんていらない。ぱらりと塩をふるだけで力強く、濃い味がする。島を丸ごと食べている。大げさでなく、そう思った。
夜、寝袋に入って目を閉じる。さっきまで見上げていた星の残像がまぶたに浮かぶほど美しい空だった。心地いい眠りに沈みそうになったとき、風に混じってプシュー……という音が響いた。続いて、パシャン、という波音。それがイルカたちが夜の遊びをしている音だと気がついたとき、なんともいえない気持ちが込み上げてきた。それは自分がいま、自然のただなかに身を置いているということ。テントの布一枚隔てたところに別の生命が躍動しているということ。
「生きている実感」なんて陳腐すぎるけれども、そんな言葉しか思い浮かばないくらい興奮して、ずいぶん長い時間、イルカたちの声と気配に耳を澄ましていた。それはまるで、自分が海の中を漂っているような不思議な感覚で、いつの間にか気持ちよく眠ってしまった。
朝、今度はイルカたちの豪快なジャンプ音で目が覚めた。日の出前というのに遊びの時間が待ちきれないようす。眠っている相方を起こさないようにテントから抜け出してプールを覗くと、1頭、2頭とイルカたちが寄ってきて、手(ヒレ)を振り振り「早く遊ぼう」と誘う。
「これじゃあ仕事する気になれないよ……」なんて早くもワーケーション終了宣言(‼)。経費精算も企画書づくりも大事だけれど、自然や動物から何かを得ることだって立派な学びだ。その土地でしか体験できないことをする。それこそがワーケーションの醍醐味なんだ。
▼後編につづく
壱岐イルカパーク&リゾート
入り江を自由に回遊するイルカを観察したり、トレーニングツアー、餌やりなどの触れ合いを楽しめる体験型パーク。壱岐牛などのBBQも楽しめる「手ぶらでBBQ withドルフィン」や、1日1組限定のキャンプ泊も。併設カフェとキャンプスペースはWi-Fi完備でコワーキングスペースとして利用可能。長崎県壱岐市勝本町東触2668-3 https://ikiparks.com/
●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。
Photo:Kei Taniguchi Edit & Text:Yuriko Kobayashi
Composition:林愛子
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