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文筆家・木村綾子「多様な働き方、生き方を考えさせてくれる本」
文筆家・木村綾子「多様な働き方、生き方を考えさせてくれる本」
LIFE STYLE

文筆家・木村綾子「多様な働き方、生き方を考えさせてくれる本」

常識にとらわれない自由な働き方を知り、仕事の裏側に隠れた問題と向き合う。働くこと、仕事のことを考えるきっかけになる本を、文筆家の木村綾子さんに伺いました。

心地よい働き方のお手本に

『小さな泊まれる出版社』真鶴出版/著(真鶴出版)

神奈川県の西の端にある小さな港町・真鶴町に移住し、出版業と宿泊業を営むご夫婦が歩んできた約5年間の記録。2人の考え方はいたってシンプル。それは自分たちが気持ちよく暮らしていける方法を見つけて実践すること。

予想外の展開や失敗例も綴られているけれど、それを乗り越えて進む前向きなパワーが頼もしい。予算と実績の表をはじめ、お金のやりとりをつぶさに公表するところも勉強になる。起業やコロナ以降の新しい生活様式への具体的なヒントが詰まった一冊。

天才といわれる人たちに学ぶ

『天才たちの日課』メイソン・カリー/著(フィルムアート社)

ピカソやモーツァルトなど幅広い分野のクリエイター161人が、日々どのようなルーティーンで暮らし創作に向き合ってきたかを記す本書。ココ・シャネルや草間彌生といった143人が登場する女性に特化した続編を併せて読めば、より立体的に天才の生活がわかる。

仕事と生活にうまく折り合いをつけるバランスのよい人もいれば、極端に偏った人もいて境遇は千差万別。とくに続編は女性という括りのなかで発生する問題に向き合わざるを得ず、参考になる。

まずは常識を疑うことから

『編集ども集まれ!』藤野千夜/著(双葉社)

芥川賞作家による自伝的小説。幼い頃から自分の性に違和感を持っていた一夫は、1980年代にJ保町にある出版社の漫画編集部で働くことになり、漫画家や編集者といったクセの強い人間と時代をともにする。

個性を魅力に変えて生きる周囲の人たちをまぶしく感じた主人公は、ある日思い切ってスカートをはいて出社するが、その行動は解雇という結果を招く。性別や普通や常識といった枠組みに抗う人を知り、カテゴリー分けがいかに不要かを実感させられる。

働く女性たちと出会う

『ふむふむ』三浦しをん/著(新潮社)

スポーツ選手をはじめ、染織家や活版技師といった専門職、伝統芸能に従事する人や建設会社の現場監督まで、さまざまな職業に就く女性16人へのインタビュー集。三浦さんの人柄ありきというのはもちろん、実際に仕事場へ足を運んだうえで人となりや作業を掘り下げているため、打ち解けた空気感の軽妙なやりとりが楽しめる。

好きなものを語るときに前のめりになる姿勢は全員に共通するところ。プロフェッショナルに至る道のりや心構えを知れる一冊。

PROFILE

木村綾子 きむら・あやこ
文筆業。コラムの連載のほか、イベントプランナーとしても活躍。蔦屋書店の企画と制作に携わる。主な著書に『いまさら入門 太宰治』(講談社)など。

●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。
Illustration:Naomi Nose Text:Tokyofumi Makino , Mick Nomura , Satetsu Takeda , Iku Okada Edit:Asuka Ochi
Composition:林愛子

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