文筆家・岡田育が選ぶ“働くとは何か”を考える映画・ドラマ
常識にとらわれない自由な働き方を知り、仕事の裏側に隠れた問題と向き合う。働くこと、仕事のことを考えるきっかけとなる映画とドラマを、文筆家の岡田育さんに聞きました。
挑戦と信念を忘れないように
『パッドマン5億人の女性を救った男』
R・バールキ監督作(インド/2018年)
「働く」映画と聞くと仕事に打ち込むヒロイン像が多く思い浮かぶが、こちらは月経が不浄のものとされてきたインドで、衛生的な生理用品を開発して女性たちを救った男性の物語。独学で世界の常識を塗り替える、愛と信念と情熱をもってタブーに挑み続ける……どれも普遍的なテーマ。最近フェムテック起業がもてはやされているが、お仕事で「女性のため」を謳うプロジェクトに関わっている方は、老若男女問わず必見。
男社会に切り込む女性たち
『ワーキング・ガール』
マイク・ニコルズ監督作(アメリカ/1988年)
低学歴のため出世できずに悩む証券会社勤務の30歳女子が、エリート女上司の留守中、彼女に盗まれたアイデアを取り返して商談を成立させ、ついでに恋人まで奪ってしまう。同じニューヨークが舞台の『プラダを着た悪魔』より20年近く前の古~いお仕事映画で、いま観るとセクハラなどマズい描写も多いが、私が最初にあこがれた「男社会で正当な評価を求めて戦う女性」の原型です。自由の女神の空撮にカーリー・サイモンの歌声が流れる冒頭の出勤シーンが、最高にアガります!
好きなことで稼ぐとは?
『クィーンズギャンビット』
スコット・フランク監督作(アメリカ/2020年)
親を喪い孤児となった少女がチェスの才能を見出されて、一気に世界レベルまで駆け上がるドラマシリーズ。それまで大人の男しかいなかった世界で、女の子がどんどん障壁をブチ破っていくさまは実に痛快、賞金で着道楽になっていく姿も最高! 少年漫画と少女漫画を足して2乗した感じ。しかしチェス以外に何もない彼女は、酒やドラッグに溺れて心身のバランスを崩したりもする。「好きなことで稼ぐ」勝負師の高揚とともに、孤独や苦悩も描かれた作品。
正義を貫く強さと勇気を
『モリーズ・ゲーム』
アーロン・ソーキン監督作(カナダ/2017年)
息をもつかせぬ会話劇で知られるアーロン・ソーキンの脚本&監督作品。ケガをした元スキー選手のモリーは非合法ポーカークラブに「転職」して、のちに独立。違法賭博でFBIに追われる身となるが……という実話ベースの伝記映画。賢くてタフで、向上心も経営の才もある美しい女性が、自分で決めたルールに従い、自分の城を築き、自分の正義を貫いて裁判に臨む。嫌なことがあった日に見返して、ラストのセリフ「私はしぶとい」を何度でも一緒に唱えたい。
PROFILE
岡田育 おかだ・いく
文筆家。著書に『女の節目は両A面』(TAC出版)、『40歳までにコレをやめる』(サンマーク出版)など。
●情報は、FRaU SDGsMOOK WORK発売時点のものです(2021年4月)。
Illustration:Naomi Nose Text:Tokyofumi Makino , Mick Nomura , Satetsu Takeda , Iku Okada Edit:Asuka Ochi
Composition:林愛子