中古スマホは環境負荷が9割減。フランスのZ世代が、あえて「中古家電」を選ぶ理由
リデュース(ゴミの削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)を基本とする循環型社会。その達成に貢献する「中古品」が欧州では広く浸透しています。特に浸透が進むフランスの普及率は古着が35%、中古スマホが約33%と高い数字に。そして、中古家電の普及率を押し上げているのが、品質が安定した「リファービッシュ(整備済)製品」だといいます。リファービッシュ製品を利用するフランスのZ世代に、選んだ理由や使用感を聞きました。
動作が確認された「リファービッシュ製品」とは
refurbish(リファービッシュ)は、英語で「改修する」「磨き直す」といった意味を持ち、リファービッシュ製品は中古品や初期不良品を修理、調整して、正常に動作することが確認された状態で販売されている製品を指す。
フランスでは2014年に創業した「Back Market」が、リファービッシュ製品のマーケットプレイスとして急成長。ユニコーン企業(評価額10億ドル以上・設立10年以内の未上場ベンチャー企業)となり、2024年現在は日本を含む世界18ヵ国で事業を展開している。
さらに、1年間の動作保証と30日間の返金保証を付与するなど、中古品購入への不安に配慮していることから多くの支持を獲得。もっとも売れているのがスマホで、全売上の約70%を占めているという。
Back Marketの広報担当者によれば、フランスにおける中古、及びリファービッシュ製品のスマホの普及率は32.7%(Foxintelligence調べ、2023年8月時点)とのこと。約3人に1人が中古スマホを保持していることになる。
フランスではスマホ以外にも中古品の普及率が高く、電化製品全般が20%、洋服が35%となっている(いずれも2023年時点)。
フランスのZ世代がリファービッシュ製品を選ぶ理由
欧州の消費者を対象に実施されたCross-Border Commerce Europeの「中古品の買い物」にまつわる調査では、以下のような結果が出ている。
・買い物客の85%が、過去1年間に中古品を買ったり売ったりした経験がある
・買い物客の76%は中古品の買い物への偏見が減ったと考えており、41%は中古品の購入がステータスシンボルになっている
また、Back Marketの広報担当者は、「2014年の創業当時はエコロジーを考慮した顧客は3%だったが、現在は25%以上の顧客がエコロジーを第一に考え、リファービッシュ製品を購入している」と話した。
そこで、リファービッシュ製品を利用しているフランスのZ世代に、選んだ理由や使い心地を聞いてみた。
名前:Victoria Guez
年齢:20代
職業:会社員
「2021年以降、リファービッシュスマホをつかっています。当時は学生だったので予算を抑えたかったし、電子機器廃棄物の削減と持続可能性の促進にも貢献でき、責任ある消費をしたい私の価値観にも一致しているためです。使い心地は新品とほぼ変わらず、快適です。私の家族もリファービッシュスマホをつかっていますね。洋服、パソコン、カメラ、家電製品でも中古品を購入したことがあります」
名前:Pierre Le Bars
年齢:20代
職業:インターン
「1年前からリファービッシュのMacbook Proを使っています。学生の私にとっては価格と品質のバランスが重要で、初めてリファービッシュ製品を選びましたが、使用した形跡もなく、バッテリー状態もよかったです。購入の決め手は価格で、エコフレンドリーは付加価値でした。私と同世代の人は、新品より中古やリファービッシュ製品を選ぶ傾向があると思います」
中古スマホが環境に与えるインパクトは?
Back Marketがフランス環境エネルギー管理庁(ADEME)と実施した調査によれば、リファービッシュ製品は、必要となる資源や二酸化酸素の排出量・電子ゴミが新品よりも9割ほど少ないという。
環境へのインパクトは非常に大きく、Back Marketでは創業以来、100万トン以上のCO2排出減に貢献しているそうだ。
EUでは、製品仕様における持続可能性要件の枠組みを設定するエコデザイン規則案の一環として、「デジタル製品パスポート(DPP)」の導入が決まっている。これは、デジタル製品の原材料調達、生産、流通、修理、リサイクルにいたるまで、一連の環境負荷情報や資源循環性の電子記録で、消費者や事業者がアクセスできる。
購買時の意思決定に役立つほか、中古品販売業者や修理業者が、必要な情報を得られることで資源の循環性が高まることが期待されている。リファービッシュ製品も、ますます普及していくだろう。
取材・文/小林香織