「再生可能エネルギー」日本にポテンシャルはあるのか?
気候危機を緩和するためには、人類起因の温室効果ガスを減らすしかありません。必要なのはエネルギー転換。CO2を排出しない再生可能エネルギーの普及が急務です。日本の再エネ導入率を上げるために、正しい知識や世界の状況を学びます。今回は、日本の再エネ資源について、ご紹介します。
現状は火力発電が76%
再エネは20%にとどまる
日本の総発電電力量
2020年度 1001 TWh
日本の総発電電力量は2010年以降、僅かながら減少傾向にある。電源構成は火力発電が76%を占め、再エネは20%にとどまっている。 ※1TWh=10億kWh
太陽光発電 3221TWh
導入可能量 47TWh~504TWh
日本の太陽光発電導入量は2020年末時点で世界3位。近年では農業と共存したソーラーシェアリングも注目されている。廃棄パネルのリサイクルも進む。
中小水力発電 54TWh
導入可能量 18TWh~23TWh
水力発電はエネルギー変換効率が80%と高い。日本ではこれ以上の大規模水力の開発は困難だが、河川や用水路を活用し、地域と共生する中小水力に期待。
地熱発電 100TWh
導入可能量 63TWh~80TWh
日本の熱資源は世界3位。課題は調査・開発費用の高さや適地が温泉地や自然公園内に多いこと。環境に配慮しつつ地域と共生した開発が必要。
陸上風力発電 686TWh
導入可能量 351TWh~454TWh
世界全体では太陽光発電の2倍近い発電電力量を誇るが、日本では導入ポテンシャルは決して低くないものの、制度的要因で導入の伸びが低い。
洋上風力発電 3461TWh
導入可能量 617TWh~1558TWh
海上や湖に設置する風力発電。着床式と浮体式がある。現在はコストが比較的安い着床式の開発が進むが、将来的には浮体式にも期待。
導入ポテンシャルとは?
現在の技術水準を基準にしながら、法規制や土地利用などさまざまな制約によってできないことを考慮したうえで導き出したエネルギー資源量のこと。たとえば、国立・国定公園や自然環境保全地域、鳥獣保護区の特別保護地区は適地に含めていない。環境省が発表しており、同省ではこの「導入ポテンシャル」に事業性を考慮した「導入可能量」も提示。再エネごとに建設単価等を設定し、事業収支をシミュレーション、その上で事業として具現化が見込まれるエネルギー資源量を「導入可能量」としている。
地域で適地を決める「ゾーニング」
再エネ開発における課題のひとつが、環境や地域住民への影響を軽減すること。注目されているのは「ゾーニング」の取り組み。再エネ事業者ではなく、地域自治体が主体となり、地域の多様な関係者と合意形成を図りながら、再エネを適地に誘導する方法だ。環境への配慮はもちろん、土砂災害の危険性や住居地域への影響も考慮しながら、市町村が「再エネ促進区域」を設定することで、地域に貢献する再エネ導入が可能になる。2022年4月に施行された改正地球温暖化対策推進法にも記され、状況が前進しつつある。
「柔軟性」を高める具体策は?
「柔軟性」とは、再エネや需要の変動に対応しながら、需給バランスを維持するための能力のこと。日本では再エネの調整に火力発電が不可欠だと語られがちだが、選択肢は他にもある。水力発電やバイオマスコジェネ(バイオマスによる電気と熱の併給システム)は、調整能力に優れた再エネ。エネルギー貯蔵も蓄電池だけではなく、温水貯蔵や揚水発電など安価な手段がある。デマンドレスポンスも柔軟性のひとつ。火力発電に頼らずに柔軟性を高める議論が世界中で進んでいる。
消費者参加型のデマンドレスポンス
デマンドレスポンス(需要応答)とは、電力会社だけが担っていた需給バランスの調整を、消費者が生活様式を変えることによって助ける仕組み。時間帯別に電気料金設定を変えることで、価格が高い時間帯は消費を控え、価格が安い時間帯にスマホや電気自動車を充電するといった行動変容を促す。電気料金を抑えられる、節電に応じた対価が受け取れるなどのメリットがあり、節電を善意の協力で終わらせないための仕組みでもある。欧米では導入が進み、日本の普及も期待される。
●情報は、『FRaU SDGs MOOK 話そう、気候危機のこと。』発売時点のものです(2022年10月)。
出典:環境省『令和4年版環境白書』、資源エネルギー庁『エネルギー白書2022』、安田陽監修『再生可能エネルギーをもっと知ろう』シリーズ(岩崎書店)、IEA:Electricity Information, web subscribe version〔2022〕、BloombergNEF:Cost of New Renewables Temporarily Rises as Inflation Starts to Bite, June30, 2022、2030年度におけるエネルギー需給の見通し(関連資料)〈資源エネルギー庁〉、IEA:Net Zero by 2050-A Roadmap for Global Energy Sector〔2021〕,p.198. Table A.3
Illustration:Sara Kakizaki Photo:Koichi Fujisawa Text:Asuka Ochi Text & Edit:Yuka Uchida
Composition:林愛子