なぜいま、タイ・バンコクに世界中から美食家が集まるのか!? 屋台からファインダイニングまで、旨安すぎる極上グルメ
2025年には海外からの旅客が約3030万人となり、いまや世界で一番外国人が訪れる都市となったタイの首都、バンコク※。王宮や寺院などの遺産と超近代的な高層ビルや大型ショッピングモールがミックスされた独特の景観が、世界の人びとを魅了しているのです。 さらに、屋台のB級グルメから世界が認めるファインダイニングまで、予算や目的に合わせて選び放題なグルメ天国でもあるバンコク。手ごろな値段で世界最高峰の味を体験できる、「アフォーダブル・ラグジュアリー(手が届く高級感)」の最前線を紹介します。【前編】
※Euromonitor Internationalによる観光統計レポートより
バンコクの最先端、双子のドイツ人シェフによるファインダイニング
世界で「もっとも予約された旅行都市」「もっとも検索された旅行先」のバンコク。成田空港から約7時間、スワンナプーム空港に到着するや、誰もがその混雑ぶりにびっくりするだろう。2006年開港した、この世界最大級のハブ空港には、世界中からの旅行者を乗せた飛行機がひっきりなしに到着している。入国審査の大行列は、さながらテーマパークのよう。小一時間かかってやっとこさ入国し、預けた荷物を取りに向かうと、バゲージクレーム(荷物受け取り所)はまるでスタジアムのような広さ! ターンテーブルがズラリと並ぶさまに圧倒される。
タイがこんなにも人気を集める理由は、「微笑みの国」と呼ばれる、この国の人びとのおおらかな(いい意味でいい加減とな)気質と豊かな文化、そしてリーズナブルな物価などが理由だ。食べ物も大きな魅力で、トムヤンクン(エビ入りの辛酸っぱいスープ)にガパオライス(挽肉とバジル炒め載せライス)、グリーンカレーなどなど、この地にしかないものが味わえる。近年は、超一流シェフたちが高級食材を駆使した、五感で味わうファインダイニングも花盛りとなっている。「ミシュランガイド・タイ2026」では2軒の3つ星店が誕生、さらなる盛り上がりを見せているのだ。
今回3つ星店に仲間入りしたのは、双子のドイツ人シェフが腕を振るうモダンジャーマンレストラン「Sühring(ズーリング)」。深い緑に囲まれた邸宅レストランは、バンコク市内の閑静な高級住宅地にある。

いずれも受賞歴を誇る超一流シェフ、トーマス(右)とマティアス(左)のズーリング兄弟。メニュー構成から事務仕事まで、店の運営を共同でおこなっている
ズーリングが重視しているのは、「洗練されながらも親しみやすいダイニング体験を提供する」こと。ドイツ料理の豊かな伝統と、現代的なイノベーションを融合させているという。ドイツワインを中心にした料理とのペアリングも評価が高いので、さっそくオーダーしてみた。ソムリエのマテューさんが、まずはスッキリとしたスパークリングワインを注ぎながら語ってくれる。
「僕がデンマークからタイにやってきた18年前は、バンコクにファインダイニングはほとんどなかった。せいぜい、高級ホテルのレストランで欧米料理を出しているぐらいだったんだよ。ズーリングのインスピレーションの源は、大切に受け継がれてきた家族のレシピや幼少期の思い出。ズーリング兄弟は毎年夏に、おばあちゃんの家に遊びに行っていたそうで、そこで味わったドイツの伝統料理が彼らのルーツなんだ」

全40席、シンプルながら洗練されたインテリア。大きな窓から、亜熱帯植物 が生い茂る庭が見える
メニューは「テイスティングコース」なるおまかせのみで、アラカルトはなし。ディナーは10〜12皿の料理が提供されると聞いて、身体の小さい私は戦々恐々とするが、タルトなどひと口で食べられる皿が多く、「これ、もっと食べたい!」と思うほど。
カニ、ホタテ、和牛、トリュフ、フォアグラ、キャビアなど世界の高級食材に、地元で採れるエディブルフラワー、ハーブなどをあしらった料理の数々は、とってもエレガントかつユニーク。見た目どおりの味がするものもあれば、食べてびっくりのメニューもあり、すべての皿にワクワクが仕込んである。ドイツ料理といえば、ソーセージにザワークラフト、塊肉の煮込みなど、ワイルドな印象が強かったが、遠くアジアの国で、こんなにも洗練されたドイツ料理のコースが花開いているとは……!

ドイツ名物、プレッツェルの形をしたアペタイザー。そば粉でつくった生地に、コクのある熟成チーズのペーストが入って激ウマ。小さなビールジョッキに入っているのは、さわやかな自家製レモネード

グリーンピース&エルダーフラワーのタルト。プチプチはじける地元産グリーンピースの甘みとチェンマイの燻製ハムの塩みがベストマッチ

ポテトのマッシュを和牛のローストビーフで包み、サーブ時に最高級のキャビアをどっさり載せて提供されるひと皿。とろける和牛とプチッと口中ではじけるキャビアの豊かな塩みで夢心地に

帆立貝にバターミルク、ビーチナッツ(ブナの実)を合わせ、クリスタルキャビアをたっぷり盛ったメインのひと皿。昆布の旨みとナッツ、ドライフルーツでさまざまな味わいと食感をプラス

ドイツ南部の伝統的な卵入りパスタ、シュペッツレ。ローズマリーとタイムがきいたコンソメ風味で、冬のアルバ産トリュフをたっぷり削ってトッピングしてくれる
どの皿にも旬の最高品質食材のみが使用され、見た目も味わいも、サービスも空間もすべてパーフェクト。シェフたちの動きが見られるカウンター席とゆったりくつろげるテーブル席があり、客のほとんどが(いかにも舌の肥えていそうな)欧米からの旅行客だった。美食の旅のシメは、“おばあちゃん直伝”のエッグリキュールと小菓子。なんだかほっこりした気分で、店を後にした。
タイ東北イサーン地方の料理に日本の食材と技術が融合!
せっかくバンコクに来たのだから、本場のタイ料理も味わいたい! というわけで、タイの東北、イサーン地方の料理を食べに、バンコク中心部の「イサーン バンコク」に向かう。バンコクや世界の美食シーンではいま、タイ料理の特徴である辛み、酸味に加えて、発酵を活かした野生的なイサーン料理が再注目されているらしい。
イサーン バンコクは、近代的なオフィスビルの2階にあった。近隣のビジネスパーソンを中心に、ローカルでほぼ満席。天井が高いオシャレな店では、日本料理の“旨み”を活かした炭火焼きなどの調理法や、繊細な盛りつけを取り入れた最先端のモダン・イサーン料理が提供される。店の壁には、擬音やフキダシつきのマンガ調アートが飾られていた。

コラートふう焼きうどん。イサーン地方の代表的な都市、コラートの伝統的な焼きそば「パッミー」を、日本のうどんで再構築。鰹節や豚の脂身のカリカリが添えられ、柑橘と塩漬けした卵黄で味変が楽しめる
イサーン料理の代表格ガイヤーン(焼き鳥)やコームーヤーン(豚トロ焼き)は、外はカリッと香ばしく、中はしっとりジューシー。聞けば、日本の備長炭で焼き上げているとか。もちろん、ソムタムや川魚のグリルなどローカルメニューも、スパイスとハーブがいっぱいで大満足の味わいだ。タイの生ビール、ハイボールやナチュラル&オーガニックワインなども揃っており、モダンに昇華したイサーン料理をシェアしながら、居酒屋気分で楽しめた。
――アジアNo.1レストラン、ガガン編に続く――
Photo&Text:萩原はるな




