一生つかえる“野菜とのつき合い方”とは!? ヴェルヌ華子のプラントフルなイベント@代官山
プラントベースとは、植物由来の食材を基本とした食生活のこと。本サイトでプラントベースのレシピを紹介しているヴェルヌ華子さんは、パリのレストランで植物性のみの料理に出合い衝撃を受けたそう。当時感じていたさまざまな不調が解消され、その素晴らしさに目覚めたといいます。現在は家族と暮らすミラノを拠点に、プラントベースの魅力を伝えているヴェルヌさん。11月に一時帰国し、プラントベースの魅力を伝えるイベントを開催しました。“プラントベースのある暮らしを感じて、学んで、味わう一日”を、詰めかけた人々に提供していました。
いろんな野菜&果物を食べることは、気候変動対策にもなる!
プラントベースとは、plant(植物)+base(土台)、つまり植物由来の食材を基本とした食生活のこと。ミラノ在住のヴェルヌ華子さんは、パリのホテルダイニング「HOY」で出合った植物性食材のみの料理に衝撃を受けて、プラントベースと栄養学を学んだ。さらにアメリカのホリスティックヘルスコーチングの資格を取り、「Plantful Journey Program」を立ち上げ、プラントベースの実践プログラムやレシピを提供している。
昨年に引き続き、東京・代官山で開催された彼女のイベントのテーマは、「Plantful Inspirations 2025 – Nourish 〈満たすことで、満ちていく世界へ〉」。これまでより規模を拡大し、来場者も増え(2700人!)、多くのブランドやショップが参加した。年々、プラントベースへの注目度が高まっていることがうかがえる。

会場は代官山駅前の「フォレストゲート代官山 TENOHA棟」内のカフェ。トークイベントやワークショップの席は、あっという間に予約で埋まったという
トークセッション「食べることからはじまる─―坂ノ途中と考えるやさしい食卓」では、坂ノ途中代表の小野邦彦さんとヴェルヌ さんが登壇。京都に拠点をおく坂ノ途中は、サステナブルな有機野菜と食品を小売店や飲食店に卸すほか、ネット通販も展開している専門店だ。最初のお題は、「はじめての野菜に出会ったら?」。
小野:私たちは数百種類の野菜を扱っています。いろいろな野菜が育つ“植物多様性”のある畑のほうが、環境にも野菜にもいいんですよ。各地方に移住して農業を始める方々の支援もしていますが、みなさん『こんな野菜をつくってみよう』など挑戦意欲がとても旺盛。私も見たことがないような野菜を育てていらっしゃったりします。初めて見る野菜を十分楽しむためには、まず怖がらないことが大事。ちゃんと育てられた野菜は、生のまま、焼くだけ、蒸すだけなど、“名もなき料理”にしても十分おいしいんです。
ヴェルヌ:いろんなものを食べることは、地球環境にもいいんですよね。私たちが日々食べている食材は、わずか13品目に偏っているといわれています。さまざまな野菜にチャレンジすることは、生物多様性にもつながります。

野菜愛が止まらない、ヴェルヌさん(左)と小野さん(右)のトークセッション
続いてのテーマは「捨てない、ごちそう」。坂の途中では、契約ユーザーに、間引かれた成長過程の野菜も加えた季節の野菜セットを届けている。その狙いとは?
小野:植物をまるごと楽しんでいただきたいんです。たとえばホウレンソウの根っこはメッチャ甘いですし、ネギの根っこは揚げると旨い。トマトのヘタからはおいしい出汁(だし)がとれるし、ズッキーニの茎は炒めると最高。タマネギって、最初からあんな丸い形やないんです。初めはふつうのネギみたいに細長くて、成長するにつれて下部分が肥大して新タマネギができる。だから、葉つきタマネギの緑の葉っぱ部分は、青ネギみたいにつかって楽しめます。木に成ったミカンは、ぜんぶ収穫されるわけやないんです。いくつかを十分成長させるために、間引きされてしまう“摘果ミカン”というもんがある。これは、ユズやスダチみたいにつかえます。野菜とか果物の成長過程を知ると、「よくぞ、ここまで育ってくれた!」とか愛着がわくし、季節の変化も感じられるでしょう。
華子:坂ノ途中の試みは、フードロス対策にもなりますね。フードロスって、『ほとんどは飲食店や食品メーカーから出ている』というイメージがありますよね? でも、じつは家庭から出るごみがフードロス全体の約60%を占めているんです。そして、フードロスによる温室効果ガスの排出量は、世界全体で出る同ガスの8〜10%を占めている。フードロスを減らすことは、気候変動対策において、トップ3に入るインパクトがあるんです。
小野:坂ノ途中のモットーは、「私自身も農家もムリをしない、させない」。これまでは、たとえば高級レストランから、「親指の太さくらいのニンジンを、たくさん持ってきて!」なんていうオーダーが入るのが、野菜卸売業者にとっては当たり前でしたが、私たちは“いま、ここにあるモノ”を大事にしていきたい。つまり、農作物はそれぞれ形や大きさがバラバラなのが自然で、効率化や“規格内”を求めることは不自然なんです。みなさんにも、野菜を味わうときには、季節ごとの味覚や穫れた地域の違いを楽しんでほしいですね。
華子:食べることは、毎日できるおいしい選択。これまで買ったことのない野菜に挑戦することで、カラダも心も地球も満たされていくんですよね。

ワークショップやマルシェ、トークセッションで一日じゅうプラントベースライフを満喫! 昨年に引き続き来場した、リピーターも多くいたそう
メイン料理はなんと、「カリフラワーのステーキ」
その後おこなわれたワークショップ「Plantful Journey ヴェルヌ華子と作る 秋の彩りプラントベースランチ」では、カリフラワーをメインにしたレシピが披露された。
「メインは『カリフラワーのステーキ』、サイドにはオータムサラダと無水ミネストローネ、デザートにリンゴのスクラブルを用意しました。ミネストローネはホーロー鍋をつかって無水で仕上げるので、野菜の旨みが存分に味わえますよ! リンゴのスクラブルは、オリーブオイルとナッツバターでつくります。オーツやアーモンドを入れてコクを出した、食感も楽しいスイーツです」(ヴェルヌさん、以下同)

ミネストローネは密閉性の高いバーミキュラのオーブンポット2で調理。野菜の水分のみでスープが完成!

分厚くスライスしたカリフラワーをオリーブオイルでグリル。竹串がスッと通るまでやわらかくなったら完成だ
今回はヴェルヌさんによるデモンストレーションの後、調理の一部を参加者たちが実践する方式。カリフラワーのステーキに合わせる、カリフラワーのクリームとアルゼンチン発祥のハーブソース「チミチュリソース」も手づくりだ。
「まずフライパンには何も入れずに火にかけ、油を入れてフライパン全体から煙が出るまで熱したあとに食材を入れると、くっつきにくくなりますよ」
「ハーブは葉をくるくる丸めて包丁で切ると、効率よく刻めます」
「ケイパーは、料理にパンチを効かせたいときにぴったり。発酵食品だから旨みが強いし、適度に塩気もある。同様にオリーブやドライトマトもパンチアップにおすすめ!」
「レモンの皮を削ってレモンゼストをつくる際には、白い部分まで削ってしまうと苦みが出るので、色のついた皮部分だけ薄く剥くよう注意しましょう」
ヴェルヌさんは、こんなアドバイスを参加者に与えつつ、着々と調理を進めていく。

カリフラワーは濃厚クリームとさわやかなハーブソースのダブルづかいで、堂々のメイン料理に
フルーツをつかったサラダとカリフラワーのステーキ、ミネストローネとSHUKAのカシューナッツジェラートアイスを添えたりんごのスクラブルができあがったところで、プラントベースランチの試食タイム! 正直、「カリフラワーのステーキがメインでは、少し物足りないかも」と思いつつ食べ始めたが、しっかり満腹になって大満足。しかもなんだか、食後に感じがちな気だるさがなく、心身ともにさわやかなのだ。
「私も以前、プラントベースの食事をした後の満足感と体の軽やかさに衝撃を受けたんです。ちゃんと知識を得て実践すれば、プラントベースはいいことづくめ。来年も実施して、そのよさをさらに多くの方々にお伝えしたいです!」
◆ヴェルヌ華子

株式会社 Plantful CEO, Plantful Journeyファウンダー、プラントベースを軸としたウェルネスの習慣化を叶える12週間のウェルネス・プログラム「Plantful Journey Program」主宰(https://www.plantful-journey.com/)。現在、フランス人の夫と2人の子どもとともにイタリア・ミラノ在住。十数年間、ラグジュアリーブランドのパリ本社ファッション本部でマーチャンダイジングに携わったのち、プラントベースの食生活を築くサポートをするプログラムを立ち上げる。また、パリやミラノでケータリングやポップアップディナーなどを開催。2023年夏、パリ・コルドンブルー調理学校のPlant-based Culinary Artsディプロマコースで、日本人として初めて学ぶ(Instagramはコチラ)。
Photo:西﨑進也 text:萩原はるな




