端材の卓球台に小澤征悦の“赤パンツ”。これがサステナブルの最前線、「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2025」
10月22日から3日間、東京・虎ノ門ヒルズで開催された「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2025」。利便性や効率だけでなく、人や社会、環境、未来にやさしい空間づくりを目指す、さまざまな試みが展示された参加型イベントです。メイン会場のひとつ「オーバル広場」では、卓球のラケットをつくる過程でどうしても出てくる余材を使用した卓球台を展示。これを企画・製作した中学生たちが、訪れた人々とともに卓球を楽しんでいました。俳優の小澤征悦さんも、サステナブルな“赤パン”とともに登場! 虎ノ門で、東京の最先端エシカルデザインを体感してきました。
ラケット端材でできた卓球台は、とってもカラフル!
ついに6回目の開催となった「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO」。内装のエシカルデザインを追求する企業・船場と、イベントでの資源循環に取り組む会社・博展によるサステナブルなイベントだ。今年のテーマは「TOKYO ETHICAL CITY」。都市部でウェルビーイングに暮らすためのさまざまな提案がされているという。虎ノ門ヒルズの「オーバル広場」に向かうと、ビルに囲まれた芝生の上でピラティスを楽しむ参加者たちを発見! とっても気持ちがよさそうだ。その傍らでは、スーツ姿のビジネスパーソンが、カラフルな卓球台でピンポンに興じている。
この卓球台は、中野区にある新渡戸文化学園の中学生たち、博展と卓球ブランド・バタフライによる「Ping-Pong Block Project」がつくった。ラケットの製造工程で生じる余材をムダなものではなく、ピンポンブロックという新しい素材として見直し、再生させたプロジェクトだ。

バタフライ製の卓球ラケットは、カラフルなデザインが特徴。その余材を組み合わせたのだから、それはオシャレな卓球台ができるってもの! この台には、ところどころに凹凸があり、それがゲームを盛り上げる!
新渡戸文化学園の中学生ラボでは、「身近にある環境問題をどのように解決するか」をテーマに探究学習をおこなっている。今回の卓球台プロジェクトはその一環で、余材をパズルのように組み合わせて、卓球台やキーホルダーをつくったのだという。生徒たちは、イベントに訪れた人々と卓球を楽しんだり、キーホルダーが当たるカプセルトイの案内をしたりと大忙し!
オーバル広場にはあわせて19団体の出店があり、どこも参加者で賑わっていた。卓球台の横には海藻を使用した有機肥料のカウンターがあり、「家庭の観葉植物やプランターに加えれば、植物が元気になりますよ」と、サンプルを手渡してくれた。

広場に展示されていた、海と暮らし製作所の海藻肥料。茨城県日立市の砂浜に打ちあがった海藻を天日干しして粉砕、栄養たっぷりの有機肥料に加工している
来場者が入れ替わり立ち替わり腰を下ろしていたのが、端材をつかったウッドベンチだ。船場の木工クリエイティブディレクターの大西功起さんによる木の曲線表現と、職人たちが一つひとつを丁寧にヤスリがけした端材が、下写真のような寄せ木細工のオシャレなベンチを生んだ。ベニアの端材など価値が低いとされるものでも、デザインや加工技術によっては、新たな価値を生むという好例だ。加工の際に出る木くずを活用したあしらいもあり、ここに座るだけで、「ああ、ごみって資源なんだ」と気づかされる。

家具などには使用されないベニヤ板などの端材を組み合わせたオシャレなストリートファニチャー(ベンチ)
広場の一角にある「CITY RESOURCE HUB」は、ごみを資源として活用する画期的なステーション。イベントまわりで出た不要物を回収、分別、分析し、都市型の資源循環のあり方を提案していた。期間中にどれだけのごみが出て、そのうちどれだけを資源として循環できたかを数値などで“見える化”。ミズアブの幼虫たちが生ごみをせっせと分解中の「ミズアブコンポスト」も展示されており、うっかりフタを開けてしまって激しく後悔するハメになった(フタの下には無数の幼虫がグネグネと!)。

出たごみやリサイクルする資源を量って可視化する、最先端のごみステーション
小澤征悦さん、“サステナブルな赤パン”って何ですか?
森タワーのアトリウムでは、イベントの目玉のひとつ、最先端のエシカルデザインが展示されていた。参加企業は素材開発、製造、流通、情報設計、そして教育など、さまざまな分野の30社が参加。アクリル板を製造している緑川化成工業は、回収したアクリル製品をリサイクルする仕組みを提示していた。説明にあたっていたスタッフが、「アクリルは異物が入っているとリサイクルが大変なんです。印刷のインクも異物になるため、リサイクルできるインクをつかった専用マシンを導入。弊社のアクリル板は、コロナ禍の期間中に大変多くの方々につかっていただきました。リサイクルへの取り組みはその恩返しでもあるんです」と教えてくれた。
たしかに、コロナ禍の際に、あちこちの飲食店やオフィスなどに設置されていたアクリル製の仕切り(パーティション)は、最近はほとんど見かけなくなった。そうして“余った”アクリル板は、技術革新が進んだいま、あと5〜6回プラスチックに再生できるそうだ。かつてはリサイクル品は新品より3割ほど高くなるのがネックだったが、原材料の高騰により、新たなプラスチックをつくるのとほぼ同じ予算でリサイクルプラスチックをつくれるという。

森タワーのアトリウムに設営された展示会場。これらの展示もサステナブルな素材でできている
ETHICAL DESIGN WEEK TOKYOを共催している博展は「イベントにおけるサーキュラーデザイン」について展示。イベントは期間限定のものが多く、廃棄物も多くなってしまう傾向がある。主催者やデザイナーのこだわりも強く、いきおい廃棄物も特殊なデザインや素材となりがちで、循環させるのはなかなか難しいそうだ。そこで博展は、イベントでよくつかわれる資材を、環境にやさしい、再生可能なものに替えるべく新素材を開発したのだという。

サーキュラーデザインの最前線がわかると評判だった博展の展示
アトリウム内を見て回っていると、ひときわ目立つ赤い一角を発見! 俳優の小澤征悦さんがディレクターを務める、ファッションブランド「AKAPAN(アカパン)」のブースだ。小澤さんは、イベントのトークセッションにも登場。ブースでは自ら真っ赤なパンツ「AKAPAN BOXER BRIEFS(アカパン・ボクサー・ブリーフス)」を紹介していた。
「ボク自身、10年以上赤いパンツを愛用しているんです。きっかけは、親父(世界的指揮者だった故・小澤征爾さん)がボストンに住んでいたころからの生粋の『ボストン・レッドソックス』ファンで、靴下やジャンパー、キャップなど赤いものを身につけていたこと。それを見ているうちに赤が好きになって、赤パンをはくようになったんです。神社の赤い鳥居に象徴されるように、赤は魔除けの効果もある神聖な色。身につければ、体温が上がって元気になるといもわれています」(小澤さん)

ブースで赤パンを紹介する小澤さん。トークセッションでは、身近なエシカルについて語っていた
小澤さんによると、ひとくちに「赤」といっても、いろんな赤があるそうだ。
「それなら自分の好きな赤色で、パンツをつくろう!と思いまして。3年かかって、ヨーロッパで見かけるようなスカーレットのパンツができました。98%オーガニックコットンなので着心地は抜群、地球にもやさしいんですよ」(小澤さん)
売り上げの一部はインドのオーガニックコットン農家などを支援する「ピースバイピース・コットンプロジェクト」と、海洋動物や海浜環境を保全する「Blue Ocean Project」に寄付されるという。
東京のビジネス街で開催された、エシカル&ウェルビーイングに暮らすヒントがいっぱいのこのイベント。ごみのリサイクルや端材のベンチ、あと6回もプラスチックに再生できるアクリル板などなど、未来につながるサステナブルなアイテムやアイデアが満載だった。小澤さんの赤いパンツは、クリスマスギフトにぴったりかも!?
Photo & Text:萩原はるな




