ゴルフをしない人も楽しいゴルフ場って!? 埼玉・秩父の名門「ミッションヒルズカントリークラブ」の素敵な余剰地活用法
2020年に他界したゴルフコース設計の名匠ピート・ダイ氏は、世界中で自然の地形を活かしつつ、攻略が非常に難しいコースをつくってきました。そんな彼が日本で手がけたコースのひとつに埼玉県・秩父の「ミッションヒルズカントリークラブ」があります。戦略性が高く“ゴルファー泣かせ”の超タフなコースですが、広大な敷地には自然があふれ、ゴルフをするだけではもったいないほどの贅沢なシチュエーション。その余剰地に、「ゴルフをしない人にもこの環境を体験してほしい」と、サウナつきコテージ「Kieto 秩父」がオープン、さっそくライター仁田ときこさんが訪れました。
秩父名物をまるごと体感できるコテージ
ゴルフ場を初めて訪れた人はたいてい、その開放感とコースの美しさに驚く。が、その広いゴルフ場を営むには、じつは多額の維持費と人件費がかかるのだ。いま何度目かのゴルフブームとはいえ、かつてのゴルフ黄金期を支えた団塊世代は後期高齢者となってプレーをやめてしまう人も多く、同時にコース管理に携わる人たちも高齢化し、減り続けている。いかにゴルフ場を維持するかは、全国で課題になっているのだ。

そこで秩父のミッションヒルズカントリークラブが打ち出したのは、「ゴルフ未経験の女性やファミリー層にも訪れてもらう」プロジェクト。地域再生のプロ「UDS」社とタッグを組み、コースの余剰地に自然と地元の食を楽しめる宿泊施設を建設した。
全6棟のうち2棟は愛犬と宿泊できるドックフレンドリーコテージだ。他の客に気兼ねすることなく犬と宿泊できるのは、愛犬家にとってはうれしい限り。敷地内にはドッグランもあるから、人も犬ものびのび過ごせる。

眺望のいい窓がついたバレルサウナ
敷地内には、秩父のシンボル、標高1304mの武甲山(ぶこうざん)を一望できるバレルサウナを設置。朝8時から夜10時まで、好きなタイミングで入れるので、他のゲストとの交流を楽しむのも一興だ。

サウナの隣には外気浴が楽しめる屋外プールも
さて、コテージの中でもっとも特徴的なのが冷蔵庫の中身。夕食、朝食の“材料”が、鍋や紙製のボウルに小分けされ積まれている。これらは発酵研究家で料理家でもある真藤麻衣子さんがメニュー監修をしたものだ。

各コテージの冷蔵庫には夕食、朝食がセットされている
秩父には古くから独自の発酵文化が根づき、味噌や醤油が名産品になっている。そこに着目した真藤さんは、夕食で2種類の火鍋が楽しめるセットを考案したという。

材料はあらかじめ下処理され、小分けになっているのでゲストは鍋に入れて火にかけるだけ。好きなタイミングで熱々の火鍋や、おにぎりなどの夕食が食べられる。使用した食器類は部屋に備えられたコンテナに返却するシステム。これらはチェックアウト後にミッションヒルズのスタッフが回収する。
このシステムは、客にとってはグランピングのようにちょっとした自炊感覚が楽しめるし、施設側にとっては、ゴルフコースがクローズした後の時間にレストランで調理や配膳、接客をしたり、ゲストの夕食が終わるのを待って片づけたりしなくてもいいというメリットがある。ゴルフ場の人手不足に対応した仕組みなのだ。

発酵研究・料理家の真藤麻衣子さん。日本国内のさまざまな郷土料理を研究し、宿や飲食店のレシピ監修をしている

地元の武甲酒造がつくる「森のサイダー」もコテージに置かれている
そのほかコテージには、「秩父ならではのおもてなし」として、地域の名産品がたっぷり。秩父にたくさん自生しているみかん科の樹木「キハダ」の木皮エキスの苦みを活かした「森のサイダー きはだのにがみ」をフリードリンクに採用。リビングのテーブルには、近くの長瀞川(ながとろがわ)の鮎を風味として取り入れた「長瀞クラフトポテトチップス 鮎の燻製風味」や、秩父駅前に焙煎所を構える「ちちぶコーヒー」が置いてある。

本来は破棄される秩父黄金かぼすの皮をフリーズドライにしたものも置かれていて、これでかぼす湯を楽しめる
プラスチックごみ削減の取り組みとして、竹製の歯ブラシや、チューブではなくシート状歯磨き粉を採用、飲料もペットボトルでの提供ではなく、持ち帰り可能なボトルとウォーターサーバーをキッチンに設置している。
「ゴルフをしない人も秩父の魅力に浸れる場所として、ぜひコテージを利用してほしい。周囲には山や川を楽しめるアクティビティにあふれ、酒蔵やワイナリーをめぐるのも楽しい。地域とつながる拠点として、ここを活用してほしいです」(Keito秩父企画担当者)
ゴルフ場の新たな活用法は、これから全国に広がっていくのかもしれない。
Kieto 秩父 https://ki-e-to.jp
Photo & Text:仁田ときこ Photo:山本恵太(施設の内外観)